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スタッフがマンガ界のニュースとおすすめマンガを紹介します!

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植芝理一、ネオ寄生獣収録短編〜新連載へ!




『ネオ寄生獣』

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講談社/2016/アンソロジー

この本も昨年ちょっと盛り上がっていましたし読んだ方も多いとは思いますが、今回語りたいのはここに収録されている、植芝理一/『ミギーの旅』という短編についてです。
植芝理一という人は、『ディスコミュニケーション』や『謎の彼女X』等、自分にとってベストオブ心の秘密の押入れで読み返したい漫画・を描き続けている作家なのですが、最新作『謎の彼女X』が終わって早くも2年半が経っていました。
この記事を書いている現在、久しぶりの植芝理一氏新作がこの寄生獣トリビュート漫画の『ミギーの旅』だったんです。


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あまり本を再読しない自分にとっては珍しく何度も読めるのが植芝理一作品なんですが、この『ミギーの旅』も、もう何度も読み返しました。
ストーリーはシンプルで希薄。寄生獣最終話のあと、シンイチの中で眠りについているミギーがどこか心象のような風景の中を彷徨う漫画。
男の子と女の子が出会って、それでどうなるの?そこにはどんな不思議なことが隠されているの?というような、植芝漫画に潜在的に満ちている問いも垣間見えます。


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スマホをもってるミギー

植芝作品の大きな要素として、コマの隅までモチーフの描き込まれた緻密で幻想的な描画というのがあるんですが、謎の彼女Xの中盤あたりからその要素がうすれてしまい、勿論大好きは大好きなもののちょっと残念な気持ちもありました。ひょっとして、もう、そう(細かい何かで埋め尽くすような、空白恐怖症じみた感覚)ではなくなってしまったのかな?という不安にも似た気持ちです。
ですがこの『ミギーの旅』には、思う存分そういう世界が描かれていて最高でした。漫画としても好きだし、画面の端ばしまで画集であるかのように眺めていられます。
感覚として説明は難しいのですが、びっしりと埋め尽くされたコマを見ていると、却ってトイレや浴室の真っ白い壁面をジッと眺めている時のような気分になります。自分だけでしょうか?

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このころ植芝氏の中では前下がりボブヘアーがアツかったらしい

…先ほど植芝氏最新作が『ミギーの旅』になると書きましたが、どうやら更新されるようです。
なんと5/25発売のアフタヌーンで、植芝理一氏新連載とのこと!!!!
やったぜ。



最近植芝分が足りてないアナタにも、もちろん寄生獣好きのアナタも、未読の人はマストバイです。
ネオ寄生獣のお求めはこちらからどうぞ!
(中野店 朝日)
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  1. 2017/05/26(金) 11:00:24|
  2. 中野店山田

全女体化スキーが泣いた!『ボクガール』




突然ですが考えたことはないですか?
「もし自分が別の性別で生まれていたらどんな風になっただろうか」って。
どんな性格だったかな?また別の友達とつきあったんだろうか。好み変わったかな?部活は何をやっただろう。悲しい思い出も楽しい思い出もまた全然違うものを持つことになったのかなあー。それともあんまり、大して変わんないか?

皆さんはどうして男性(もしくは女性)やっていますか?なにか切欠があったんでしょうか。
いつからやっていますか?…そしてその後どうでしょう。
しんみりしないよ。重くもないです。気になった人はどうぞ楽しくて優しくてちょっとエッチな快作を紹介するので、読んでね

!!!ネタバレ有・要注意!!!

『ボクガール』


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集英社/杉戸アキラ/2013〜2016/全11巻(完結済)
TS(トランスセクシャル=性転換)漫画、2010年代の真打ちとも言うべきいい作品です。

華奢で可憐なこの子は鈴白瑞樹くん(主人公)


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こんなナリをしていても立派な高校男子です。
女と間違われて告白されまくるも、本人は誰よりも男らしくありたい悩めるティーン。
優しくてボインボインな憧れの藤原夢子ちゃんや男気に溢れた気のいい友人・一文字猛と日々楽しく過ごしている


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のだが、ある日神の悪戯で…


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女の子になっちゃいましたー!



突然の変化に戸惑いまくる瑞樹くん。「お前は本当に瑞樹なのか?」当然猛も目の前で起きた事が信じられない。
それでも「朝起きたらこうなっていたけど、自分は自分だ」という瑞樹くん必死の訴えで猛はとりあえず信じることにします。雑だけど。
のちのち、どんなことがあってもとりあえず信じてくれる友人・猛というのがすごく重要な位置を占めてくるんです。


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そして女の子になったまま学校生活が始まりますが、本当に男か…?と疑うクラスメート達や、可愛ければ性別問わぬ変態筋肉ゴリマッチョ(井出)がひたすら貞操を狙ってきたりと気の休まらぬ日々。


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この漫画は本当に変態が多い。

猛のフォローもあり、なんとか女体化バレせずに日々乗り越えていくんですが、その描写がもう、トランスものにおける萌えのツボを余す事なく突いてきて奇声なしじゃ読めぬ。
例えば、乳首がふっくらしてしまって下着をつけた方がいいのか悩んだ挙句にこんな破廉恥な絵面が出来上がったり


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寮の共同風呂だと上記の変態に襲われてしまう→離れた銭湯に行こう!→しかし客観的に見て女にしか見えん→そうだ、もう女装して女として女湯に入れば八方丸くおさまるんじゃね?という超展開でこんなことになってしまったり!


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トランクスが風に飛ばされてしまって、仕方なくこんなことになってしまったり!!


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女の子のおしっこの仕方がわからずこんなことになってしまったり!!!
そうだよね!急に女の子になったらやり方わかんないよね!しょうがない!


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なぜか学園祭で演劇・ヒロインをやらされ!ヒーロー役は憧れの女の子藤原さん!


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もう性転換スキーなら悶え苦しみちょっと死ぬくらい萌え要素マシマシな作品なので、これを書くため読み返してても瑞樹ちゃんが可愛すぎて苦しかったです。
特に「演劇でヒロイン役に抜擢されてしまう男の子」というのは、ある種の人間の心に抉りこむ角度で刺さってくるような滅茶苦茶ヤバい要素なんです。わかってもらえますかね…へへ。わからなくても続けますね。こういう性転換ヒロインに半ば自己投影しながら、本当は男の子なのに女の子扱いされてまさか劇のヒロインにまでされちゃってきゃーどうしよう的なドキドキサイエンスを妄飲しながら1日を終えるのが我々性転換好きの青春のさだめだといっても過言ではないので、作者は神。

はじめは瑞樹くんも、さも男らしくありたいように振る舞うんですが、そんなの全然嘘で可愛いもの大好きな可愛い僕っ娘なのがバレバレです。


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↑kawaii↓


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これもかなり大事な要素です。TSものの醍醐味の一つに、それが本人が心の奥底に持つ願望の現れだという事があります。
だって本当に嫌がっている子に無理矢理女装させても、それがどんなに可愛くてもそれ以上得るものがないので必然萎えます。
逆に初っ端からオープンな女装子的キャラクターでも(それはそれで以前紹介したおカマ白書的な可笑しさはあるんですが)あまり面白くない。やはり、内面と外観のギャップの見せ方なのかなとも思う訳ですが、とにかく
じわりじわりと実はこの瑞樹くんが全然嫌がっていないぞ…でも恥じらっているぞ…ということが露呈してゆきます。




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ただの美少女ならその辺にいくらでもいるんです。ただ可愛い子の痴態が見たければ春輝とか宮崎摩耶とか読んでればいいじゃないですか!かわいいよ!
でもね、それだけじゃ物足りない夜ってのもあるんです。性的な混乱やギャップこそが萌えの最低条件ということです。


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男として育ってきたがゆえの無防備さや、振る舞いの雑さが性的な魅力を産むこと。これはボクっ娘とか俺女とかともまた違う案件なんですね。本人の自覚していない振る舞いによって見えてはいけないものが見えていることに本人が気がついていない時、周りにいる我々はどうすればいいのでしょうか。●REC


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ワーッショイ!ワーッショイ!
さまざまなエロハプニングの連続に、猛もやがて瑞樹の事を男友達と認識することができなくなってゆきます。
これについては変態キャラの代表格でもある井出パイセン(先輩)の言葉が真理ですね。「大丈夫!KAWAIIに性別は関係ないっすよ!」


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体育倉庫に2人閉じ込められたり雨に降られて暖めあったりと順調にアクシデントを乗り越えて、瑞樹くんと猛はお互いを意識していきます。


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瑞樹くんの抑圧の理由も語られます。父親の教えである、男子たるもの〜な懐古的男子像を内面化してしまったがゆえ、本来の自分との間に生じるギャップに苦しみ違和感を覚えているのがこの瑞樹くんなんですが、こうして体が女の子になってしまったことでなし崩しで本性を露わにして行くのです。

その厳しい父親がこちらなのですが…

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御多分に洩れずただの変態です。

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瑞樹くんが愛しい母親にそっくりで可愛すぎてヤバイから必要以上に厳しくしていただけのど変態父親の教えに縛られていただけの瑞樹くんがもうらしい。
そんな瑞樹くんの万感の一言がこちら。

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エロコメディでありながら、ちゃんと中身がある漫画!

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周りのみんなが瑞樹くんの姿形や性別に惑わされて瑞樹くんそのものを見れていない中、(その鈍感さも手伝って)変わらぬ扱いをしてくれる猛や藤原さんの尊さ。
猛は初めからしてそうなんです。性別が変わってしまっても真っ先に受け入れて、混乱しつつも瑞樹くんそのものを見ようとして、あんまり動じずに相対する感じ。そりゃ惚れますわな。



物語中盤でようやく憧れの藤原さんにも女体化カミングアウトをします。

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二人してぼんやりしてしまう感じがなんともリアルですな。

でも藤原さんは決して瑞樹くんを否定しません。あるがままを受け止めようとしてくれるのです。
そう、この漫画、基本的に悪人が一切でてこないのもおおきな特徴です。瑞樹を性転換させた神でさえやんちゃではあれど憎めない造形で。変態ばかり出るけどもそいつらがみんな瑞樹くんのこと大好きで、自らの変態性のおもむくままにのびのびとやれている感じ。否定してやろうとか虐めてやろうだとか、嫌な奴がどこにもいない。変態が変態のまま跳梁跋扈できている幸福な時空間における可愛い瑞樹くんの漫画なんです。

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公的にもカミングアウト。学校バレという萌え通過儀礼のひとつでもあります。
周囲の認識も変わり、女になった以上は制服も女子のものを着出し、髪も伸びてだんだん瑞樹くんは女の子でしか無くなっていきます。

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瑞樹くんはもともと藤原さんのことが好きだったけど猛のことが気になっていて、
猛は瑞樹くんのことが気になってきていて、
藤原さんは瑞樹くんのことが気になりつつも猛に恋している。
というのが『ボクガール』の屋台骨になる三角関係なんですが、物語終盤にさしかかり瑞樹くんの女子力が上がるにつれ、猛が瑞樹くん方面に傾くにつれ藤原さんは平静じゃいられなくなります。好きな人と大切な友達が距離を縮めていくのを、間近で見せられるわけですから。

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何かを得るということは、いつでも選ばれなかった何かがそこにあるという切なさも含んでのことなんですね。いまちょっと良いことを言いました。



そして瑞樹くんは選択を迫られます。
男として生きていき、藤原さんへの気持ちを選ぶのか、
女になり、猛への気持ちに向き合うのかを。

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結末を前にして登場人物たちはみな立ち止まって考えます。

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みな、自分が真に抱いている気持ちとは何なのかをしっかりと表明します。

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僕はギャグ漫画が基本的に苦手なんですが、その理由というのが毎回毎回「あったこと」が「なかったことになる」のがたまらなく苦痛ゆえなんですね。で、けっこう既存のTSものは作中で色々展開してても最終的に変化の少ない曖昧な地点に着地してしまう作品が多かったように感じて不満を感じていました。
だって性転換してしまったら、たとえ一過性のものでもその人物の人生において決して消えない痕跡を残すでしょう?性転換は"はしか"のようなものじゃなく、決定的で不可逆な変化なんですよ。であるべきなんですよ。なのだから、それは決してなかったことになっちゃいけないんだ。ラッキースケベだけじゃなくて、とっととヤれよ!ヤったら孕めよ!孕んだら産めよ!それぞれの心境と関係性の変化を述べよ!っていつも心の中で吠えてました。ToLOVEる読んで。(向いていない)

そんな僕がこの作品で本当に素晴らしいと思うのは、ちゃんと変化を選び取り、TSしたままの未来を選び取ったことなんです。
瑞樹くんは女として生きていくことに決めます。猛を愛して猛と一緒に生きていこうと決めます。
性転換という非日常を自分のものとし、新たな日常を作り上げてしまうところまでをここまで逞しく描き切っている漫画は読んだことがなかった。

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11巻の表紙を見てください。

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こういう作品だったんですね。

きっと藤原さんに抱いていたのは瑞樹くん自身がこうありたいという願望の投影で、願望越しに望むナルシズムだったのかもしれません。
最終盤、瑞樹くんは髪を伸ばし、藤原さんはばっさりと切り落とし、両者の立ち位置が入れ替わります。
性転換によって解放されて瑞樹くんは幸せになれたんですが、たとえTSしていなくともきっと、願望と恋とを混同することなく、本当に愛するものを選びとっていたんじゃないのかなぁなんて思うのです。
性別はいくらでもかわるけれど、変わらないものもあるようです。

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まあ愛する対象と自分の性別はあんまり関係ないですしね。性別のギャップがどうとかさんざ語っておいてなんですが。

僕からは以上です!


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(中野店/山田)
  1. 2016/12/01(木) 11:00:26|
  2. 中野店山田

折り合いをつけよ『カナシカナシカ』




ご無沙汰してました、中野店スタッフ朝日です。

皆さんは幼い頃、何か悲しいことがあった時、「自分は本当はこの家の子供じゃないのではないだろうか?」「自分は生まれてくるべきだったんだろうか?」「なんで自分はこうなんだろう?」と自問したことはお有りでしょうか。
少しずつ自分の世界が自分のものじゃなかったと疑い始めるような、つらい気分でいたことはあったでしょうか。
そういった感情は感傷として、大抵いつしか忘れ去られるものですが、何となくでも忘れなかった人にものすごく刺さるだろうお話を紹介します。
静かにパーソナルな領域に触れてくるような、秋の夜長に読むにぴったりの漫画です。


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カナシカナシカ/紺野キタ
2011年/新書館


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主人公・藍はどこかぼんやりして鈍臭い中学生男子。周囲となんとなく折り合いが悪く「鬼っ子」扱いをされている。


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そんな主人公の持つ謎の不思議能力は2つあり、まずアンブレイカブル(どんな物理的なダメージも届かない)


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そして他人には見えないものが見えたりする。細い路地の向こうにある異世界へ通行できる。
この作品は藍少年の「異世界体験」を通して「身の置き所のなさ」が「少し腑に落ちる」様が絶妙に描かれます。


〜ここから異世界〜


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異世界に生きる自分そっくりの、「虫」と呼ばれる生き物たち。本来こうなるはずだった主人公の姿。


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実の親である「女王虫」と会う。


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異世界に縛られている、本来自分の場所にいるはずだった少女・すずろ。


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主人公はある理由でこの異世界から現世に飛ばされて、母親の胎内で死にゆくすずろに替わって産声を上げ、無理やりこの世に生まれてきた。
それゆえ周りや世界と何となく折り合いが悪い。折り合いは悪いけれど、「アンブレイカブル」として世界を超えて庇護されてきたというのが判明します。

やがて、主人公に呼び戻しがかかります。
実の親である女王虫は寿命を迎つつあり、主人公に次代の女王になれと迫ってくる。ヒトとして生まれ、ヒトをやってきた彼を、本来の場所に戻そうとする。


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女王虫によって届けられる「蜜玉」。これを食べ続けると女王に変貌するらしく、主人公はひとつ食べてしまう。


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女王化はしたくないけれど、自分の影の様にずっと異世界に縛られ続けているすずろを、生まれるはずだった現世へ返したいと願う主人公。
生も感情も喪ってただ在るだけの存在である「すずろ」に、自らの生を明け渡したいと願えども、結局すずろは現世への門をくぐることはできず、主人公が女王虫に変貌することもなく、「然らば」と、藍少年は現実世界に帰されます。


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〜ここまで異世界〜


折り合いも急に良くはならず、すべての配置は元あった通りに。
急激な変化もなく、昨日の続きの今日があるだけ。けれど物語が終わりに差し掛かるに連れ、「取り替え子」「鬼っ子」であってもそれなり受容されているーされてゆくことが分かり、何となく明るいものが見える結びへたどり着きます。


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藍少年はしかし、このとき垣間見た異世界に2度と行くことはないでしょうし、すずろと会うこともないでしょう。
成長とは根を張ることで、しかし根を張って安定してしまえば世界を渡るような揺らぎはなくなる。

これを読むと自分の揺らぎのことを思い出します。
初めて読んだX年前よりも、今の方が刺さり方が浅い様な気がする。もう、次に自分がここじゃないどこかへ行けるのは死ぬ時だけなんだろうか?


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…と、ここまでが本旨でして、コレヨリ述ベルノハ枝葉デスガ、
1.主人公が意志薄弱系三白眼ショタである
2.「蜜玉」により女王と化して異世界で暮らすという甘美なTS要素がある(婿候補の雄まで用意されている)
3.ますむらひろしばりの「立って歩く猫」が異世界への橋渡しをしてくれる
という担当の性癖にクリーンヒットする要素が三つも入っており、甘固くならざるを得ない。


あんまり声高には言いたくないけれど、実はこれが好きなんです。と言ったらこの作品でした。


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紺野キタ関連作品はこちら



(中野店 朝日)
  1. 2016/11/01(火) 11:01:33|
  2. 中野店山田

適当に癒されたいの。『地獄のリラックス温泉』




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『地獄のリラックス温泉』
恋煩シビト/新潮社/2014年

こんにちは。日々同じ場所で働いていると目に見えない澱のようなものがどこかに溜まってきて、遠くへ行きたくてどうしようもなくなるコミック担当スタッフの朝日です。
ひと雨ひと雨ごとに秋が近づいているって実感する近頃ですね。
真夏の陽光に灼かれながら入る露天風呂もいいですが、外気が裸に寒いくらいになってからが本番だとやっぱり思います。
ああ、出かけたい。ここではない☆どこかへ行きたい。

今回紹介したいタイトル『地獄のリラックス温泉』。
アラサーBL漫画家の「M」が仕事の合間合間に車を飛ばして、方々の温泉に入りまくるという内容。
同じ温泉マンガでも濃厚な『湯けむりスナイパー』とかに比べると、格段に人間に興味がなくてユルい感じです。


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半ばエッセイ入ってそうな食事や入浴描写、ご当地イケメンと出会ってドキドキ…とそんなマンガではあるんですが、正直言って私、そこまでもの凄くこの作品を名作だとは思ってないんです。主にBL方面で活躍されている方ですが、そっちの著作もそこまでピンときてはいません。じゃあなんでわざわざここで取り上げるんだ?っていうところですが…。

・おもしろみ1
入浴描写がすごいてきとう。


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だって、女の人描いて、岩描いて、あとトーン一枚でできている!


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女の人+岩+トーン2種


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手前にいる女の人と奥の背景植物の細かさの縮尺が実にてきとうだ!

「省略の美」とか「シンプル」でなく、確かなてきとうさなんですが、読んでいて全然悪い気がしないのがこのマンガの面白いところだなーと。新鮮な感覚です。
たぶん妥当感があるからなんです。あー、いざ湯船に来ちゃってめがね外して浸かったら、だいたいこんな感じよねと腑に落ちるてきとうさが、こころよい。
私もこの「M」ほど、そこら中巡ってはいませんが、それぞれ特色ある温泉を経験してます。泉質、温泉街、その歴史、特産グルメなどそれぞれたんまり蘊蓄を含有してるんですが、結局めがねを外して浸かってしまったらまあだいたいこんな感じよね。
タオルで鼻頭に浮いた汗を拭って、のぼせるまで入っていたい。

ここだけの話、いくつも温泉に入っていると、あれはいつのどこの事だったかなんてわからなくなりませんか?
することはどこでも一緒なんです。疲れる毎日から脱け出して、気力をふりしぼってたどり着いて、湯につかって、うまいもん喰って寝て帰る。
あたかも恋において行為のみを抽出すると途端に退屈になるように、ただの繰り返しなのでしょうか。
結局やる事は一緒?でもしている間はめちゃくちゃ気持ちいいんだよ。

・おもしろみ2
温泉イケメン群

この「M」、行く先々の温泉でイケメンと出会います。しかもただのイケメンではなく、温泉ご当地っぽさを擬人化したようなイケメン達ばかり。


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たとえば熱海で「M」と交流をもつこの御仁。
若い頃はさぞモテただろう事が窺えるナイスミドルで、まるで過去の賑わいを思わせる熱海そのもの。
本業はBL作家だけあって、女性キャラクターより何倍か魅力的。ファンタジー感すらあります。
女性キャラはホントずべーっとして土着的な体型なのに。


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他にも、北海道白金温泉にて、大地の滋味を感じるようなイケメンと…


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長野県白骨温泉にて、うそ寒いほど白い肌を持った妖しいイケメンと…。


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そして主人公「M」はこれらイケメンと触れそうで触れ合わないんです。
「M」には一度行った温泉地には二度と訪れないというマイルールがあり、それぞれのイケメンとの出会いも一度限りの儚いものとして描写されます。で、これってまるで「観光」そのものじゃないかと思えてきます。
その土地に住むものでしか描けない風景もあるでしょうが(作品としては、古い所では『まんだら屋の良太』とか、最近では『雪にツバサ』とかでしょうか。)観光で訪れたものにしか描けない、至極てきとうで恣意的で、色眼鏡越しにしか見えない景色というものがきっとあって、作中で主人公「M」がご当地イケメン達に一方的に向ける性的な眼差しも同様に、じつに「観光」的です。


・おもしろみ3

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Googleで試しに「混浴 ワニ」と検索してみて下さい。
けっこう怖い感じの結果が出てくるはずです。ご存知でしたか?
私も噂くらいしか聞いた事はないのですが、確かに有るらしいのです。女性を待ち構えて何時間も入浴している「ワニ族」たむろす混浴温泉が。
温泉と言えば、温泉芸者だコンパニオンだ、風俗的要素とは切っても切れない関係にあるものですが、ここまでダイレクトだとさすがにちょっと引きますね。

・結び
ともかく、我々は(というか、私は)温泉に行く事で解放されたいのか?本当に解放されているのか?
結局することは一緒なのに、家の風呂と圧倒的に違うのは何故なのか。


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よくわからないし、ずっと湯に入っているとぼんやりしてどうでもよく思えてくる。
温泉に行こう。地獄のような日々の塩梅を9だとすると、湯につかっている1は極楽だ。
極楽の為の地獄なのだと、そういうことにしておこうかな。

あと、杉浦日向子の『百物語』だと思うけれど、さすらう父子が野原で温泉を見つけ、滅茶苦茶熱湯なのに触れたら離れられなくなってしまいどんどん引きずり込まれ、しまいには子供だけ残されるーという恐ろしい話を思い出しました。
多分温泉に行きたいだけなんだと思います。

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いつだったかマイシャンプーの誘惑を捨てて、シリコン入り安シャンプーだろうが竹炭入りのちょっといいやつだろうがかまわず頭を洗えるようになったとき、自分のこと成長したなって思いました。











『地獄のリラックス温泉』はこちら
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そのほか恋煩シビト作品はこちら
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(中野店/朝日)
  1. 2016/09/02(金) 10:57:00|
  2. 中野店山田

猫の命のはげしかれとは




漫画家というのもいろいろあって、デッサン的な意味でただ絵が上手ければいいという商売でもないようですし、対象物によって得手不得手が強く出たりするのも面白いところですね。
例えば男性は上手くても女性が壊滅的な作家、人を描くよりメカ描写のが上手い作家、右向きの顔が極端に少ない作家などなど。
今日紹介するのは恐らく人を描くよりも猫の方が神がかって上手い作家による、猫漫画の極北たる逸品。


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『私という猫~呼び声~』
イシデ電/2013/幻冬舎

〈注意!〉ネタバレあります。

当時じわりと話題になっていましたが、発売より数年経って知らない人も増えたかな?と、こういうタイミングで紹介するんですが、この作品は何がすごいって、一切の妥協なく残酷な所なんです。
どうも猫漫画というとだいたいペットエッセイだったり、だいたいカワイイ印象です。けれどこの作品はまったく異質でした。
まず導入部から幻想的で、


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実在の猫についての記録なのか、猫に投影した語りなのかは判然としないのだけれど、とりあえず語り手は、「私という猫」ということ。こうやって作品世界に導かれる。
表紙にもなっている白黒模様の猫が「私」。年嵩の雌猫で、何度も出産を経験しつつ、この春もまた子供を産みたいなと考えている、という「私」。
野良猫仲間たちはそれぞれのスタンスで人間との距離感を計りつつ生きてます。ヒトの物を拾ったり盗むことはあっても、媚びて強請ることはしない。そんな野良暮らしの、「私」とその周辺の猫たち。

◎思いもよらずヒトと接近してしまった例その1

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ヒトを恐れず自らヒトに近寄って行き食べたいものをGETするスタイルの(野良的には異端の)「ミーさん」。いつも上手くやっていたものの、猫を狙う変質者に襲われます。
すんでのところで「私」とその悪友「美しっぽ」たちの連携プレーにより難を逃れます。


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が、身重だった「美しっぽ」は、この時受けた怪我が元で、赤子を残してのちに死にます。


◎思いもよらずヒトと接近してしまった例その2


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あんなにヒトに近寄って、馬鹿だねえ、あたしゃこっちの奥にある餌をこっそり頂くよ→保健所に捕獲される。いくら叩いても引っ掻いても、鼻面から血が吹き出すほど体当たりをしても壁はびくともしない。


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そして「私」はそのまま無理矢理連れ去られ、避妊手術を施されます。

「私 何をしくじった?
わからない
アタマのなかが
冷たくて固くて 石みたいだ
体も 石
もう 私 死んでいるのか」
「奥へ… 奥へ… つかまる…
…だいじょうぶだ… 死んでない… こわくない…」


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決定的ななにかを失い、大きな空虚を抱えながら生きる「私」は、それでも「美しっぽ」の遺した赤子を育てる決意をします。


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紹介はここまで。
2013年の夏、買ってそのまま近くの公園でこれを読み、ラストに近づくにつれて涙が止まらなかった。
「私」が誰であれ、描き手が限りなく透明になり、猫たちの世界の中に潜って潜って見えたものを「ヒトとして」原稿に転写したような、魂のこもった描線世界があります。これほど鬼気迫る生き様と死に様を猫漫画で目にするとは。
ヒトの近くで生きることを宿命づけられて、野良と言っても野生ではない隙間隙間に生きる生き方。生も死も淡々とただ有るものとして生きていく姿がある。
ちなみにこの作品には前日譚である単行本『私という猫』が存在しています。そちらも併せて読むと、ちょっとアタマがぐらぐらしてしばらく動く気がなくなるかもしれない。

端的に、めちゃくちゃ面白いのでおすすめです。


(担当:朝日)

『私という猫~呼び声~』
https://order.mandarake.co.jp/order/detailPage/item?itemCode=1030340375&ref=list
『私という猫』(前日譚)
https://order.mandarake.co.jp/order/detailPage/item?itemCode=1028871557&ref=list
その他著者作品
https://order.mandarake.co.jp/order/listPage/serchKeyWord?categoryCode=1101&keyword=%E3%82%A4%E3%82%B7%E3%83%87%E9%9B%BB
  1. 2016/07/23(土) 10:59:00|
  2. 中野店山田

まんだらけ 通販

まんだらけ オークション

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