岩井の本棚、SAHRAの本棚

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「公約数景色」の対極にあるもの




お久しぶりですこんにちは。
自宅のベランダにあるトマトの苗がアプリの育成ゲームかよって速度で成長するのでもはや半信半疑の中野店白石です。
今日は、すこし前に完結巻が出たこちらをご紹介。
講談社/芦奈野ひとし/コトノバドライブ(全4巻)


白石5月24日(1-a)

白石5月24日(1-b)


代表作『ヨコハマ買い出し紀行』よりさらに登場人物、関係性、世界観の説明を削ぎ落とし、主人公の迷い込む「少し不思議な5分間」をひたすら丁寧に描きます。舞台は現代の日本そのままですが、海沿いの岬あたりでせわしくなく、静かで穏やか。ほんの少しだけ異なる世界線のようにも感じます。
主人公はスパゲティー屋・ランプでアルバイトをする「すーちゃん」。トトトと走るバイクが相棒のこの人は、ふとした瞬間に日々の隙間に迷い込みやすいというか、「呼ばれる」人なんですね。個性があるようでない柳みたいな存在なのと、目にしたものを疑わない性格だから…かも知れません。
もっとも魅力的なのは、その寡黙かつ雄弁な描線。画面の大部分を占めるのは、ただただ細かい横線や縦線の群れなのです。それだけで雨に煙る霧、逃げ場のない強い日差し、鬱蒼とした雑木林、冬のキンとした寒さまでとにかくなんでも表現してしまいます。空気のにおいや温度をスッと描き出すのは氏の得意とするところですが、さらに言葉少なに軽やかになっています。


白石5月24日(2)


この表現力。
ではここから、作品の中で好きなシーンをいくつか。

「雨と信号のこと」(1巻)
どしゃ降りの雨の夜、車の中で留守番をしていた時。


白石5月24日(3)

白石5月24日(4)

白石5月24日(5)


のちに語られるのはそこが活断層であること、軽い地震があった瞬間だったということ。この回収の仕方も良いです。

「あの坂のこと」(4巻)


白石5月24日(6)

白石5月24日(7)


空気ががらっと変わるこの感じ。こんなふうに若干オカルトめいた話もあります。ですが迷い込む彼女はただおもしろがるばかりではなく、しまった…!と感じて身を引くこともしばしば。やはり「5分間」は人間のためのものではないのですね。

最後にこちら。
「夏の線のこと」(3巻)
とてつもなく厳しい残暑の夕方、飯屋に逃げ込んだあとの「5分」。


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季節の境目を見た…ということなのでしょう。
よく分からない不思議体験として終わるときもあれば、何かしらの原因や理由付けが最後にふわっと置かれたりもします。彼女は主に場所や物事が内包する「過去の記憶」やミクロorマクロの世界に触れていることが多く、この主人公はいわば“話し相手”なわけです。4巻のあとがきに“みんなが同じように見る「公約数景色」”という一節があり、作品そのものの立ち位置がぴたっと明確になった気がしました。ここに描かれているのは公約数景色の対極にある、「その人だけの景色」なのかーと。

そしてもうひとつ、芦奈野作品に登場する雄弁な表現がこちら↓


白石5月24日(12)


この人物の右上にある 
 。
/

という記号、どの作品にも出てきます。小さな物音、ふと吐いた息、何かの仕草、感情の機微など、あらゆる揺らぎの表現として登場します。その示すところの意味は多種多様。ちなみにニュアンスの違うもので「~」「~゜」も。 これが効果音&台詞両方の代わりとして頻出するため、コマの中がすっきりしていてかつ豊かなんです。とよ田みのるの効果音「ガー」と芦名野ひとしのこの記号は、漫画家が発明した最高の表現の一つだと思う…。
こうして綴られるひそひそ話のような全35話の小話は、誰かの夢を辿るようでとても心地いいもの。またスルスルと非現実に迷い込んでは戻っていく主人公は、ファンタジー脳の人間からすれば「羨ましい…」の一言に尽きます。

『ヨコハマ買い出し紀行』はロボットの語った終末の凪、
『カブのイサキ』は圧縮された浮遊感、
そして今作で、一人の若者が佇むなだらかなヴォイド地帯へ。

やはり芦奈野ひとしの描く漫画は安定してすばらしい………。





この空気感に色が付くと⇒芦奈野ひとし画集 ※名作!! 
もっと民俗的に⇒蟲師 
これも「その人だけの景色」⇒よつばと! 


担当:白石
  1. 2017/05/24(水) 13:26:02|
  2. 中野店白石

命懸けの「僕っ娘」!POPで硬派な時代劇




お久しぶりです、お花見は会社の休憩中に無理矢理行ったのでなんら後悔していない中野店白石です。
今日は、街の書店にこの本が置いてあると私のその本屋への評価が急上昇し、「アイツはいいヤツだ」みたいに口走りそうになるこちらの作品をご紹介。

嘘つきは殿様のはじまり/福井あしび/小学館/全5巻 
小学館公式 
まんだらけ通販 

a白石4月12日(1)

ゲッサンに連載されていた作品で、つい先日4月12日に最終巻が出たばかり!このブログの締切も同日だったのですがギリギリまで待ってもらいました…。

まず、表紙にある通りのかわいい人懐っこい絵柄で


a白石4月12日(2)

生首。
そして、一昔前のコロコロとかスクエニっぽさのある雰囲気かと思いきや


a白石4月12日(3)

a白石4月12日(4)

この気迫。
それから、「まんがで学べる~」的な児童向け学習図書のような健全さで


a白石4月12日(5)

たまーにエロい。

それではあらすじ。
下町の長屋に暮らす幼馴染みの二人、チビで臆病者だけど優しい小太郎と、病の母のため懸命に働くおしんが主人公。子供ながらに「将来は夫婦に」なんて約束を交わします。


a白石4月12日(6-a)

a白石4月12日(6-b)


それが第一・二話で青天の霹靂、おしんが地元の大名・高条家の隠し子であったことから、突然跡取りとしてしょっぴかれます。おしんを連れて逃げようとした小太郎は一瞬気概を見せるもあっさり切りさばかれる始末。この高条家、正嗣断絶(せいしだんぜつ・跡取りがおらず潰れてしまう事)の瀬戸際で、女の子のおしんを無理矢理「高条氏直(たかじょう・うじなお)」という男の子の大名にし、殿様の座に据えようとするわけです。
まさに「大人の事情」に巻き込まれた二人。母の薬代のために性別を偽って当主を名乗ろうと決めたおしんは、小太郎だけでも逃がすために屋敷へ火を放ちます。
そして序盤の見せ場であるこのシーン。


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a白石4月12日(8)


ここでもう、作品としての掴みは完璧。
その後逃げたはずの小太郎が、おしん改め「高条氏直」を護るために小姓として城に舞い戻るところで第二話は終わり。ストーリーは主にこの氏直の嘘を守る小太郎の目線から、取り潰し寸前の大名家が政治戦略や陰謀、そして戦に翻弄されていく様を描きます。
でこの二人、特に小太郎がまーあよく泣くんですよ。


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怒ってても弱ってても嬉しくても涙。すぐ泣く。号泣。飄々とした屋敷の人々の中で、序盤のこの「弱さ」は一種の人間性のようにも感じられます。
そんな中で暗殺、裏切り、人斬り、殴る蹴るとヘビーな展開の続くこと続くこと。
なのにすごいなーと思ったのが、人死にも血しぶきもインフレしがちな舞台において、人物たちが振る刀、負う怪我、討ち取られる者それぞれに意味があるってことです。そしてそれは物理的にも精神的にも不可逆の傷になって、人の性格をも変えうるものとして描かれます。
特に印象的だったのは、小太郎が剣術指南を受けた神後師範が謀反人と分かり、その首を切る場面。


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a白石4月12日(12)

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これ以降、小太郎の物腰や言葉遣いはがらっと武士らしくなっていくのです。
生首を見てパニックを起こす、斬り合いの恐怖に腰を抜かすという「普通の人としては当然」の領域から、少しずつ武士の世界に適応していきます。
刀の軌道、影、飛沫やなんかにすごく力が入っているのは、作者が以前ボクシング漫画(「マコトの王者」)を描いていた影響かもしれません。

あとはこの人、九島綱成(くしま・つななり)。


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高条家に仕える腕の立つ小姓頭で、小太郎の先輩的な立ち位置からだんだんと肩を並べていく人物。とにかく厳しくてべらぼうに強い。中盤の大怪我で隻腕になるも、その後の戦い方はより鬼気じみてきます。武士Lv.1から始まる小太郎との対比もあるんでしょう、最初から最後までめちゃくちゃ強くて全くぶれない人物。


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a白石4月12日(17)


ここはダントツでかっこいい。
そして個人的には、隻腕の描写を「腕を切り飛ばして失わせる」安直さを選ばず「動かない片腕を吊っている」姿にしたというのが、なんだか好印象だったんです。身体的な変化をアイコンにせず、あくまで人を描く漫画なんだなあと。一番の見せ場は最終戦の奇襲で、これまたすごくカッコイイので載せませーん!もったいないから!つか見開きで派手に立ち回る数でいえば、小太郎より圧倒的に多いんですよねこの人。一人ドリフターズ(平野耕太)みたいなシーンがしばしば登場します。そんな人とだんだん対等に渡り合えるようになり、背中を預ける小太郎もまたかっこいい。
…とまぁエンタメ的な演出は随所にあるものの、この作品における江戸時代は決してファンタジーではなくて、今と同じように人と人が作り営んでいたものという事実がじんわり伝わります。
物語は大阪冬の陣を中心にして構成されており、その前後に高条家にまつわる騒動や戦が描かれます。時間の経過はあまりハッキリとは描かれないんですが、当の小太郎とおしんは少ーしずつ成長していくんですよ。最初の1巻と5巻の表紙を見比べれば一目瞭然。


a白石4月12日(18)

2話。

a白石4月12日(19)

最終話。

最初の頃と比べるとホラ、顔つきが全然違う。途中からほんのり身長差が出てくるところもいい。読んでいて「あれっ」と気付く程度の穏やかさで変化していて、描写ほんと丁寧だなと思います。ちなみに中盤で「15歳」らしき会話があるので、13~16歳くらいの間のお話なのかなと思われます。

ここまで書いてサムライばっかでそりゃさぞかし男社会でしょうねと思いきや、実は女子も強い。


a白石4月12日(20)


冒頭で屋敷に連行される際、斬られた小太郎を抱えて自害を覚悟で啖呵を切るおしん。
そんな男装の大名になった彼女は勿論、弱虫だった小太郎に刀を選ばせたり沈黙を守るために腹を決める小太郎のオカンも強い。


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母、氏直(おしん)、そして後に高条氏直の嫁(!)として一族に加わる清姫(きよひめ)の3人が骨の髄まで武士の嫁・武家の女を貫いていて、とことん胆の据わったおなごであるがゆえ、話が立体的になるんですね。
清姫かわいいよ清姫。猫目おてんば娘まじ最高。


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ちなみに徳川幕府の傘下にある高条家、その敵役になるのは真田側の軍勢です。
なかでも首謀者の真田大助、ショタのくせにこいつが超ムカつく。


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人騙すわ毒盛るわ銃使うわ爆弾投げるわ何でもアリ。気弱な小太郎や刀一筋の綱成とのコントラストもあり、敵対勢力の勝利への執着を体現している感じ。手段を選ばずとにかく卑怯かつ冷徹な姿勢は、幕府側が手を焼いた類稀なる強さになっています。しっかしコイツは最後までムカついた(褒めてる)。
そんなこんなで続く戦乱の最後、最終巻で小太郎がつく大きな嘘は、なんとも大胆で格好良いもの。一話から着々と描かれてきた「ほんとは女の子の氏直」をこう使ってくるか、と思ってうるっときます。
作者は日本の江戸初期の歴史、政治、勢力図、あらゆる戦乱、それからまず何より「人」やその逸話が好きなんだろうなーと思います。幕間に差し挟まれる教科書的な知識やオタクっぽさも含めて、漫画の舞台そのものへの真摯な愛情みたいなものが作品全体に滲んでいます。
そうやって考えると、主人公の二人がよく泣くのは、単純な弱さの描写ではなく「逃げずに真正面から戦う」姿なのかもなーなんて。思ったり。

ビジュアル面でもかなりキャラが立ってて愛着が湧いたし、設定も話も丁寧だったもんでなー、これで全5巻は惜しいなー。一応しっくりまとまっているので打ち切り感はないんですが、本音を言えばもっとのんびり読んでいたかったなーー。
知識を基にした屋敷での生活描写とか、綱成の弟の弁千代(※かわいい)の話とか、構図的には百合(※大事)になりかねん清姫とおしんの交流とか、作中でもなんだかんだイチャイチャしてる小太郎とおしんのこととか、各キャラの掘り下げでいろいろ気になるエピソードはもっとあったんですよ。商業じゃなくて番外編の同人誌でもいいから読みたいわ……。
史実の端々にのっとってifを作り上げた筋書きで、そこへ妄想やエンタメ性を盛り盛り。
その割に予想以上にしっかり地に足が着いていて、なかなか硬派な時代劇漫画でした。


a白石4月12日(26)

九島弁千代(※かわいい)


***

似た雰囲気の作品といえば
サムライうさぎ/福島鉄平(集英社) 

背すじをピン!と~鹿高競技ダンス部へようこそ~/横田卓馬(集英社) 


まあどちらもまるっこいベース顔のちっこい仲良し男女二人が荒波に揉まれまくりながら真剣に頑張るって点に、問答無用で「がんばれー!!」と応援したくなるやつですね。
ついでに泣きながら戦うといえば

きみのカケラ/高橋しん(小学館) 

「笑えなくて泣くことしかできない」主人公イコロもちょうどこんな感じ、常に涙目で生き抜くキャラでした。


ちなみにこの作品の大元のモデルになったと思しき実在の当主・井伊直虎(いいなおとら)は、いま柴咲コウ主演で大河ドラマやってるアレですね。
みんなみんな、こっちの漫画の殿様女子(?)もカワイイよ!!

担当:白石
  1. 2017/04/17(月) 10:27:35|
  2. 中野店白石

「無音 バスもぐる」……ドラえもんのトラウマ回があってだな




「ジョーガンネ 玉落とし わずかなり 学刈」
ピンときた人いますでしょうか。
幼少の頃から何度も何度も繰り返し読んだドラえもん。今になって単行本をパラパラ眺めても、タイトルのみでどんな結末だったかなんとなく浮かびますし、ほぼ全ての絵・コマ・ストーリーに見覚えがあります。一番吸収率の高い時分にこれでもかと刷り込まれた漫画やアニメの記憶ってのは、個人的な知的財産なんじゃないかと思っております。
その中でただ一つ、ドラえもんの中で断トツに恐怖の記憶と共にインプットされている話があるんです。


白石1月6日(1)


「大予言・地球の滅びる日」
妙に緊迫感のある見開きの扉絵と、暗雲垂れこめる空。冒頭でドラえもんがミーちゃんと出掛けていき、のび太が一人になるところから始まります。部屋で見つけたのは一冊の本。中にある文章は支離滅裂で意味不明。


白石1月6日(2)


「ジョーガンネ 玉落とし わずかなり 学刈」
これを持ち出していつもの空き地で皆に訊いてみても分からずじまいで、またのび太は家に戻ってきます。


白石1月6日(3)


 ドンヨリとした天気のせいで、昼間から電気を付けているママのなんの気ない台詞からも、どういうわけか不安を掻き立てられます。薄暗い部屋で本の文面を反復するのび太。まもなく大慌てでやって来たスネ夫曰く、その本はノスト
 ラダムスの大予言だという。恐怖の大魔王が降りてくるとかこないとかの例のノストラダムス、1999年7月を越えるまではあちこちで騒がれてましたね。この時ののび太たちも半袖、かつ謎の本の最終ページである7月19日はまもなく迎
 える日らしいので、話中の季節は初夏~夏頃だと思われます。時期的にも大予言の不穏な感じと重なります。さて、ひょっとしたらヤバい本かもしれないと察したのび太とスネ夫の二人。意味不明な文章の一つ一つを新聞の切り抜きと照らし合わせて読みとくと、この謎の本に書かれた
 ものはあらゆる事件事故と一致していきます。


白石1月6日(4)


そして


白石1月6日(5)


本の最終ページに記された文章から、この○が地球を指すのだと結論した二人は大パニック。迫り来るXデーに慌てふためき、二人してと
 んでもない事態だと触れ回ります。いつも冷めてクール目のスネ夫が、のび太と一緒に大騒ぎするというのも珍しいところ。まぁオチとしては結局いつも通りの日常エンドに戻るんですが、とにかくこ
 の話は怖かったわけです。いつものドラえもんのはずなのに、冒頭の悪天候の描写は大長編に見られるようなリアルさ。この状況設定と、全体に漂っている薄
 暗く不安な空気感。それがストーリーと相まって徐々に増幅されていくイメージがかなり恐怖心を煽ります。縋れるはずのドラえもんはいなくて、のび太達の会話を通して自分も「恐ろしいことに気づいてしまった」当事者になってしまうんです。コロコロ何月何
 号とかではなくて単行本のコミックで読んだ身としては、うすら寒い怖さがその前後の話にも尾を引いてしまって、前に入っている「のぞきふしあな」のギャグオチすらもくらーい気分で眺めていました。しまいには単行本の表紙の絵にすら不吉さを感じてしまって、この話が収録されている36巻自体が少しタブー化していた時期まであった始末。自分がこれを読んだのはおそらく6歳頃、一人で留守番をしていた薄曇りの
 日だったのを覚えています。のび太がストーリー中で本を見つけた状況にかなり似ており、家中の明かりをつけてもイヤな気分が拭えないままでした。この話を友人にすると、そいつも同じくこの回は怖かったといいます。ちょうど地元の湖でバス事故があった頃だったそうで、話中に登場する謎の文面の一つ「ター 扉をひらく 無音 バスもぐる」が強烈に印象に残っているとのこと。
 記憶にある「怖いドラえもん」はこれっきり。あとはまぁジャイアンの親戚の寺に泊まりにいく怪談回が、途中で時系列が飛ぶっていう表現に少し怯えたくらいです。基本的にドラえもんは楽しさとワクワクに埋め尽くされているはずなのに、どうにもこの大予言の話だけは未だに慣れません。
……どうでしょう、みなさんはそういう「ドラえもん」、ありますか…?

…………で、さてその謎の本は結局なんだったのか、最後どうなったかというと……
この記事の中に答えを隠しておきました。探してみてね(ヒントは改行!)。

ところでなぜ新年早々こんな話をしたのかというと…


白石1月6日(6)

白石1月6日(7)



ドラえもんの第一話ってお正月なんですよね。のび太の部屋にやってきて、おもちのおいしさに感動して平らげて帰っていくという導入部。初登場のドラえもんはなんだか首が短くて(今もですけど)、突然現れて餅を食い漁ってのび太に不吉な話しかしないというワケわからん奴でした。
ドラえもんの大好物は言わずと知れたドラ焼きですが、のび太と共通する好物として、この時初めて食べた「お餅」があることはひょっとしてあんまり知られていないかもしれません(21世紀に餅は無くなってるのかな…)。実は二人が餅食べたさに未来の道具を出し、作れる数が奇数だったことで結局ケンカになるなんて話もあります。

っんだよ!また読みたくなっちまったじゃねーか!という方はコチラ。


ちなみに今回の「大予言・地球の滅びる日」が収録されている36巻には、かの有名な「きこりの泉」も入っていますよ。


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白石1月6日(9)


年末年始、実家に帰ってあらゆる漫画を読み返した人、いることでしょう。そんで面白くて持って帰ってきちゃった人もいるんじゃないでしょうか。さぁ今一度、寒い日に自宅でまったりこたつ+みかん+ドラえもんの最強コンボを味わってみてはいかが……。

遅ればせながら、明けましておめでとうございます。
amazonプライムのお急ぎ便でドラえもんの1巻を新刊で買う中野店・白石がお送りしました。

  1. 2017/01/10(火) 10:25:13|
  2. 中野店白石

死因:ポストの角にガンってやった




どうもこんにちは。寒くなると鼻の頭から冷えていく中野店白石です。
今日はこちらの漫画をご紹介。
吸血鬼すぐ死ぬ/盆ノ木至(秋田書店) 既刊4巻
まずは1巻表紙とともにキャラと内容を簡単に説明いたしましょう。


白石122 (1)


ロナルド(赤い服のやつ):吸血鬼退治人(バンパイヤハンター)
ドラルク(それっぽいやつ):吸血鬼
ジョン(左下にいるやつ):ペットのアルマジロ
で、この吸血鬼・ドラルクが


白石122 (2)

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すぐ死ぬ。〔原因:ドアでバーンて挟んだ〕
で、砂になったあとすぐ再生するんだけど


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すぐ死ぬ。〔原因:小学生にスネを蹴られた〕
豆腐メンタルなので何かにビビったりしても死ぬ。寝転んでて顔にスマホ落としたりしても死ぬ。


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日常生活のあらゆる場面で死ぬので、途中からもはやネタとしては使われず背景の一部になっていく仕様。
と同時に死亡時の砂になる擬音「スナァァァ」と時折使われる再生時の「ァァァナス」が次第に癖になってきます。
この吸血鬼・ドラルクと彼を退治しに行ったハンター・ロナルドが、紛れ込んだクソガキに翻弄されたすえドラルクの居城がぶっ壊れるというオチの第一話から始まります。まあ構成自体は王道なギャグ漫画ですね。そして第二話で、家を失ったドラルクがロナルドの経営するハンター事務所にやってくることで舞台が整います。基本的に一話完結で、このコンビがあらゆる面倒事だの吸血鬼退治だのに巻き込まれるドタバタ劇が中心です。
ちなみに二人のいる事務所の所在地は新横浜だそう。
……ん?新横浜?
さらにロナルドは副業としてハンターの経験を生かした自伝小説『ロナルドウォー戦記』を出版しており(そこそこ売れてる)、巨大な斧を引きずって続編原稿の進捗を聞きに来る担当編集者・フクマさんの影に怯える日々を送っています。
……??
かつハンター業というのは人気商売のため、近所の人たちに媚びへつらったりどうしょもない依頼を断れなったりと、なかなか世知辛い環境をサバイブする生活なのです。
………???
えーと、ハンターVS吸血鬼というファンタジー設定で日常系…といえば丸く収まるんでしょうかこれは…。とにかく、非現実的なアレコレと日常あるあるが絶妙にミックスされているわけです。
作中での吸血鬼とは空想の産物ではなく、主に「血を吸う」「吸血による感染で仲間を増やす」「特殊能力を持つ」といった性質をもつ生物群を指し、ドラルクのような人間型から動物・植物型までさまざま。人の場合は退治・捕縛、動植物だったら駆除という感覚で社会に認知されています。吸血鬼よけスプレーみたいなのがあるので、下等な種族は害虫のニュアンスもある模様。
全編通してやたら生活感が滲んでいるのが特徴で、かつ本来カッコイイ肩書きのはずのキャラ「ハンター」と「吸血鬼」がどちらも非常にみみっちい。そして情けない。
たとえば、第一話の冒頭で“真祖にして無敵”と民衆が恐れていた吸血鬼・ドラルクは


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ただ単に押しの弱い引きこもりのゲーマー。作者の嗜好が反映しているのかどうなのか、のちにどんなクソゲーもクリアしてしまう伝説のクソゲープレーヤーというのが明かされます(どうでもいい)。なのでもちろんゲームハードが故障したりセーブデータが消えたりするとショックで砂になって死にます。で、一方のロナルドは


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なんともダサい。二人して主人公とは思えぬザコさです。普通なら嫌悪感が勝ってしまいそうなんですが、ツッコミ(主にロナルド)のセリフの根底にどことなくお人好しっぽい雰囲気があり、通読しても別に好感度は下がらないから不思議。
では一通り説明が終わったところで、すごく好きなシーンをいくつか。


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この「蓋について怒ってんだよ!!」っていうツッコミがツボ。
あと何気にドラルクがスプラトゥーンみたいなゲームやってる。
次、これは吸血鬼≒害虫化した生野菜に家を占拠される回(この説明が既に若干意味不明)。


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「ウワッ セロリの威嚇行動」。このコマは週一くらいで仕事中に頭をよぎります。つーかどんだけセロリ嫌いなんだよ。
それから


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「絶対殺すセット」というネーミングが好きすぎる。スプレー+物理攻撃の装備って確かにそうだよな。
あと


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代本板…代本板って………!!!!!20年ぶり位に存在を思い出したし小学校の図書室以外でこの単語初めて見た!!
こう、細かい言葉のセンスだったり差し挟まれた小ネタのクリーンヒットが多い気がします。
“吸血鬼”と称されるキャラクター達も独特で、「吸血鬼・Y談おじさん」「吸血鬼・野球拳大好き」「吸血鬼・マナー違反」だの、それただの奇人・変人・変態もしくは困ったさんの群れじゃねーかという始末。
その中で唯一まともなのが実は、ドラルクのペット・アルマジロのジョン。「ヌーヌー」としか喋らないものの、持ち前の優しい性格とザコ二人に向ける純真無垢な健気さでみんなに愛される、隠れたヒロインキャラです。どの話もハイテンションでボケとツッコミのペースが速いなか、たまーにジョン回が挟まれるとほっこりするのもまたいい塩梅。


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…しかしなぜアルマジロ?
読み進めるうちになんだかしっくりきちゃうので、改めて説明すると違和感が際立つ…。


*** ここから先は 腐女子 の提供でお送りします ので どうぞ 読み飛ばしてください***


そんで…読んでる途中でふと気付いてしまったんですが……うっっっっっすらBLくさいんですよ……。
まぁ基本イケメン?だし少年誌で女子ウケしそうな絵柄だよなってのはあるとして、しかしなんでだろと思って状況を概観してみたら

・男が男の家(仕事場)に転がり込む
・とてつもない生活感
・基本的に仲が悪い設定

これらはすべて我々の餌であり糧となります。そんなつもりはなくても気づいてしまったらターンエンドです。
あとそもそもギャグ漫画なので、ネタを作る以上当然っちゃ当然なんですが

・お互いのみっともない、もしくはカッコ悪いところを惜しげもなく晒す

多分これが「それっぽさ」の決定打に。この根本的な関係性の気兼ねなさってのは脳内で巡り巡って謎の信頼関係に近いニュアンスに変化し、傍から見ててあーいいコンビだなって思い始めたところに


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健気なジョンですよ。上のシーンは留守番中に家事をやろうとして失敗したジョンを、全力で二人がフォローするコマ。なんなの?ジョンは子供ポジションなの??(心の叫び)ペットの域をとうに越えたこの大事な同居人のためなら、ロナルド・ドラルク両方とも本気で怒ったり心配したり、敵に反撃したりするんです。この「何か別の要因で二人のベクトルが同じ方向を指す」というのもなんつーか、ツンデレのツン:9デレ:1のデレ部分に似たスペシャル感というかなんというか…何言ってんだろなさっきから……ダメだこれやめときゃよかった………。
もういいやこの際なんで「そう思っちゃった」場面の画像貼りますね。


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なんか…わかるかな…この…同棲感……うん…。
あとこれ。

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 長命な高等吸血鬼がみな料理上手である設定が割とまともに説明されているコマなのですが、大事なのはそこじゃねぇ、腐女子センサー(通称フジョセンサー)に引っかかるのは“いけすかない同居人に認めざるを得ない特技がある”という一点のみだ!!ええ、私にはそう見えました。
かといってじゃあ作中でこういう絡みが増えればいいかってーと全くそうではなく、あくまで「今のまま」の行間や余白がとても大事なんです。これはどんな作品にも言えることで、少年誌系に関してはあくまで少年漫画を貫き通していて欲しいのです。本来意にも介さないはずの部分に沸き立つところは腐女子の敬遠される理由の一つではありますが、もうこれは本能の一部というか女子ヲタ独自の感性に因るところです。男性向けにおけるきゃわゆいおにゃのこ達が直接的な“形而下の萌え”であれば女性向けにおけるこれらは餌と糧を元にした“形而上の萌え”ともいえます。どちらも非常に美味しいもので甲乙つけがたく、まあどっちも同じ穴の貉ですけど男女で若干頭の構造が違う場合があんだなーくらい
の認識で十分だと思います。
えー…で、話を戻すと、こうして我々がいくら賑わっていようと決して迎合しない、作品そのものの持つギャラリーへの無関心さが、コンテンツとして強固であり続ける魅力の一つになっているわけです。またこのあたりの感覚が、趣味嗜好を前面に打ち出した商業BLと二次創作ジャンルの違いなのかも知れません。
要するに「このままこっそりニヤけながら眺めていたい」んですね。という訳で“こっちサイド”から見て今のところ一番にニヤけるのは、各キャラの人格が入れ替わる第40話なんで百戦錬磨の貴腐人の皆様そこんとこよろしく。
しかしあれだ、こないだ発売した4巻にとらのあな描き下ろしSD缶バッジ付限定版と特典クリアファイルが出た事実を加味すると、すでに鼻の利く女子ヲタの皆様とそれを察した編集ないし専門店が動きつつあります。知名度がじわじわ上がってゆく今が、ファンとしては一番楽しい時期なのかも知れません……という考察で締めても許される気がしますのでそうします。
あ、ちなみにクリアファイルの絵柄良かったんで貼りますね(チョロい)。


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ドラルクと一緒に悪だくみをしているのはロナルドの同級生・半田。手つきが無駄に丁寧。こいつも大概狂ってます。あとすべてを知っているらしいジョンがやっぱりかわいい。

***

まぁ、単純にギャグ漫画としてあまりダレずにちゃんと続いているっていうのと、秋田書店が少しずつ推し始めている作品ってのだけは覚えていただけると嬉しいです。
あとホモくせえとか言いましたが登場する女子だって可愛いですよ。パイスラと絶対領域コンボの制服でお菓子に釣られて床下から出てくる警察官のヒナイチ(左)とか、「吸血鬼・野球拳大好き」の術中にありながら真っ先に下着を脱いだ勇ましきハンター・実家はマタギのマリアさん(右)とか。あと個人的にはハンターのギルド兼たまり場であるバーのマスターの娘さん(下)が好きです。もっと登場増えてほしいです。


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それから、第一話で話を引っ掻き回したクソガキ。

白石122 (26)


どういうわけかレギュラー化し、2巻3巻4巻としばしば登場しては舐め腐った態度でフルバースト、気付いたら表紙の見返しにカラーで載り続けている事実なんかも実際のコミックで確認してほしいところ。クソムカつくけど多分コイツ、主人公二人の「天敵」にして狂言回しなんだろうな。


白石122 (27)


最後に、既刊すべての表紙絵を貼って逃げます。


白石122 (28)白石122(29)

では今回はここら辺で。


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(中野店/白石)
  1. 2016/12/07(水) 11:11:34|
  2. 中野店白石

ブラックジャックアンソロの種村有菜がヤバい件




お久しぶりですこんにちは。自宅のベランダにカメムシが来る中野店白石です。
今日はこちらの本をご紹介。
手塚治虫ブラックジャック40周年アニバーサリー・ピノコトリビュート『アッチョンブリケ!』(秋田書店)


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読んで字のごとく、手塚の往年の名作ブラックジャックに登場するピノコに焦点を当てたトリビュートコミックです。
表紙がキュート&スゥイートな星野リリィであることからお察しの通り、執筆作家のほとんどが少女or女性漫画家で構成されています。
そうすると自ずと中身は似通ってきまして、あらゆる絵によるかわいいピノコ…と見せかけてあらゆる絵でリメイクされた作者のブラックジャック先生への恋心が好き勝手爆発するという現象が多発しています。要するに、ダークでクールなBJの元でおくたんポジションを保持するピノコが羨ましすぎた女性読者による「ちょっとお前そこ替われ」なトリビュート本です。まっったく同じことを常々思っている自分としては「せやろな」の一言です。
その中で、突出したクオリティで異彩を放つ作品がいくつか。紗久楽さわと種村有菜です。

まずは紗久楽さわ。


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とにかく画面の密度が高い。誰もがイケメンBJとピノコの絡みを描く中で、「ケン一探偵長」のケン一と「リボンの騎士」のサファイアというなんともツボをつく組み合わせで展開します。勿論そこにピノコも加わる訳ですが、そもそも画面からほとばしる手塚治虫愛がハンパない。


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漫画に出てくる人物が、モブまで含めすべて手塚キャラなんです。人間昆虫記の男(十村十枝子の正体を掴もうとして結局埋められたヤツ)なんて名前すら出てこないけど、それらが一目で分かる画力に敬服。細かい演出や擬音をちゃんと手塚風に描いているところも熱い。


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見よこのプール際のショタロリエリア!!ちっちゃい一コマの中にピノコとアトムとメルモと写楽とリッキーですよ?もしここにブッキラがいたら卒倒もんですよ(個人的に)!ピノコとケン一の行く先々にこれでもかってくらいあらゆる作品のキャラが詰め込まれてて、読んでるこっちがニヤニヤしてきます。
紗久楽さわはエンターブレインで『かぶき伊左』を描いている新しめの作家でして、この画面作りへのこだわりを見るに、そっちのオリジナル作品にも手を出してみたくなるワクワク感があります。

で、本命の種村有菜。

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まずは知らないやって人のために少々。
種村有菜は90年代後半から活躍している少女漫画家で、昭和と平成のあわいに生まれたりぼんっ子が骨の髄まで洗礼を受けて“有菜っち世代”と化したほどの作家です。「イオン」「神風怪盗ジャンヌ」から始まり「満月をさがして」「紳士同盟クロス」「桜姫華伝」で少しずつ下の世代へ、…でそういや音沙汰ないなーと思っていたらここ数年の「猫と私の金曜日」であっという間に前線へ返り咲きました。
パッと目を引く華やかさはデビュー時から変わらず、そればかりか「アイドリッシュセブン」のキャラデザで昨今の二次元アイドルウェーブもがっつりおいしく料理していただきまして、もうこの作家と絵柄は世代問わずお年頃の女子の脳にクラクラきちゃうんだなという普遍的な概念にまでなりつつあります。
トレードマークはなんといっても、他の追随を許さぬキラキラの瞳。作画時間の半分はこの目なんじゃないかって位手が込んでます。自由帳に真似して描いてた子いるでしょ?でしょ??
という作家によるピノコトリビュートです。そりゃもう予想通り&期待通りですよ!


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………と思った矢先の大事件。


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………?……????

これにはホント驚きました。
女子のキラキラを敷き詰めたようないつもの有菜っちがどこにもいない、いわば作家性をギリギリまで削ぎ落とした画面。そしてブラックジャックの絵柄・演出を細部までトレスした上でのオリジナルストーリーです。絵だけでも十分ビビったのに、この話がまたすごくいいんですよ。トリビュートの名にふさわしく、BJと結婚式を挙げたいというピノコの訳アリのお願いが主軸になります。


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この背景とモブの雰囲気がまんま手塚。ピノコの髪の線も然り。


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右のコマのレトロSFめいたトーンとかどっから持ってきたんだという。

テンポのいい構成とシリアス&ギャグの割合、フキダシの形に至るまでかなり研究・模倣されています。ファンの一人が描いた別の漫画というより、この本のために拾われてきた未収録作品と言えば10人中7~8人は信じてくれそうな完成度。個性の強い作家からの完璧な剛速球、全く予想だにしない方向から期待を裏切られて「え…種村有菜って何者なんだ…?」という今までの作家イメージに瓦解が起きたのは言うまでもありません。
先の紗久楽さわ同様、この2本に関しては単なるアンソロへの寄稿ではなく、プロの手によるリスペクト作品なのだと感じます。

そして最後、「ふたつのスピカ」でおなじみの柳沼行による作品。


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あらゆるBJ愛と萌えピノコが飛び交う中、ストーリーは道に迷ったピノコとおばあさんのやりとりだけ。全体的にうっすらと夕焼け感というか、なんだか寂しいなぁと思いながら読み進めると、最終ページで種明かしが。


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この本が刊行されたのが2013年。そうか、被災地にかのブラック・ジャックが来ていたのか、凄まじい数の人々を救っていたから話に出てこなかったんだ…という祈りのような筋書きが炙り出され、思わず涙が滲みます。素朴な雰囲気で放たれた芯のある結末に、軽くボディブローを食らった気分。

まーー基本的にはピノコかわいい狭間黒男マジかっこいいで構成されるお祭り本です。版権が関わってる以上、このコミック以外に再録されることは稀かと思われます。ちなみにコラボイラストの寄稿者に市川春子、高橋葉介、水沢悦子など、けっこうなメンバーが揃っているのも特徴。ブラックジャック生誕40周年記念としてまとめられた本ですが、半世紀近く経った今なお、あらゆる世代のあらゆる作家にここまで羨ましがられる「奥たん」も他にはいないでしょう。
では最後に


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山本ルンルン。絵柄との親和性が最強。話も最強。


そして

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安定の田中圭一。アッチョンチョンておまえ。


***

手塚治虫ブラックジャック40周年アニバーサリー・ピノコトリビュート『アッチョンブリケ!』はこちら。

アンソロに出没した良作といえば
萩尾望都、植芝理一 → 『ネオ寄生獣』
福満しげゆき、逢坂みえこ → 『短篇集ヒミツキチ』
吉田基巳 → 『蟲師 外譚集』
鉄巻とーます → 『人間以外じゃダメですか?人外っ娘あそーと』
***

担当:白石
  1. 2016/10/18(火) 11:00:28|
  2. 中野店白石

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