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手塚キャラ最強決定戦!? 否、最不遇決定戦!島本和彦の手塚キャラ大決戦「マグマ大使 地上最大のロケット人間の巻




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島本和彦といえば、いわずと知れた熱血漫画の大御所。その独特の何が根拠なのがわからんがパワーだけは感じさせる台詞回しが最大の特徴です。
熱血漫画、といっても実際にはパロディやギャグが多く混ぜられた単純に熱血とはいえない王道から少し外れた作風なのも特徴でしょう。
他にも、北海道で配信されていたラジオ番組やTwitterでの熱い暑い作品語りや、実質エッセイ漫画としての側面を持ち、ドラマ化でも話題になった「アオイホノオ」、Gガンダム等のアニメ作品やゲーム作品のキャラクターデザイン等で先生の名前を目にした人も多いと思います。

さて今回の「炎の筆魂 参之拳」は島本先生の短編集、その中でも最も目玉な作品が「マグマ大使 地上最大のロケット人間の巻」そう、手塚治虫先生のマグマ大使を題材に島本先生が描いた作品なのです。
むろんそのタイトルのパロディっぷり(元ネタはあの「PLUTO」の原作になっている「鉄腕アトム 地上最大のロボット」)からもわかるように、島本先生の手塚愛と遊び心いっぱいの作品、というかこれいつもの「同人」のノリだッ!となること受けあいの愉快作です。


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まず、マグマ大使ときけば誰もが金色の巨人の姿のことを思い出してくれると思いますが、その内容を知っている人は少ないと思います。
少なくとも、漫画版のマグマ大使はどこかとぼけた感じのあるお父さん(妻と息子も揃って登場します)といったキャラで、敵に正面からぶつかってはあっさりボコボコにされるヘッポコさ。

マグマ大使はロケット人間というロケットに変身できるヒーローといった趣なのですが、特に必殺技もなく敵を真正面から倒すことが殆どないキャラクターでした。
とはいえ手塚キャラはアトムにしろ、ビッグXにしろ強力な能力で敵を一方的に打ち倒したり、決まった必殺技で敵を倒す、といった展開はあまり見られないので当然といえば当然でしょうか。
そういった人間臭さやヒーロー然といた作劇の否定と特撮ヒーローが科学反応を起した結果が「サンダーマスク」という怪作なのでしょう。
それはさておき「マグマ大使」はライバルのゴアもロリショタコンの両刀という変なキャラで、あんまり優遇されているとも、パッとしてるとも言い難いマグマ大使なわけですがそんな立ち居地だからこそ島本先生が調理すると非常に愉快なことになるわけです。


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こんな感じにマグマ大使も完全に島本キャラになっております…

ストーリーはタイトルどおり、自分で不遇に不満足なマグマ大使が様々な手塚キャラに戦いを挑むという聞いただけでワクワクがとまらないパロディもの。
マグマ大使本編終盤にも登場した因縁の相手、魔神ガロン(そもそも魔神ガロンとの対決は明らかに手塚先生の筆ではないストーリーで、その後に続いたストーリーも未収録という不遇っぷり)だけでなくビッグXやサンダーマスクといった同じ特撮系巨人キャラ(そしてマグマ大使と同じく不遇…)はもちろん、まさかまさかの「火の鳥」からロビタが登場したりとそのマニアックでツボを押さえたストーリーは手塚ファンなら感涙もの。


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小ネタも非常に面白いので元ネタの作品をもう一度読み直したくなるという愉快な作品なのです。
待遇に不満のマグマ大使、ということなのかファンならおなじみの「手塚治虫漫画全集」の後書きネタが多く、改めて様々な作品の後書きに注目したくなること請け合いです。


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これがうわさの全集版後書きだ!燦然と輝く「サンダーマスク」の4行(ほぼ3行)文に啼け!


この漫画は島本先生が、そんなファンなら誰でも創造するような夢の対決を最高のギャグに乗せてお送りするという最高の手塚ファンへの贈り物ともいえるでしょう。

いまでこそ「ヤングブラックジャック」を筆頭に様々な作家が手塚作品をリメイクした作品が多くなりましたが、この「マグマ大使 地上最大のロケット人間の巻」はその先駆けともなるタイトルといえるでしょう。
ここまで「手塚作品」で遊んで良い!、ここまで「手塚作品」を深く語って、読み取って良い!のだと世間に知らしめた意味で大いなる先達の作品といえるでしょう。
これからも数多くの手塚作品がこれからもリメイク、リスペクトされていくことでしょうが、この作品が切り開いた手塚パロディの輝きは今でも美しい宝石のようにきらめいているのです!
マグマよ・・・
永久に地球を守りぬけ・・・・・・


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そんな手塚ファンならぜひ読んでもらいたい「マグマ大使 地上最大のロケット人間の巻」が収録された「炎の筆魂 参之拳」貴方の本棚に手塚作品と一緒に並べてみてはいかがでしょうか?

「マグマ大使 地上最大のロケット人間の巻」が載っている「炎の筆魂 参之拳」の通販はこちら
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(中野店/黒田)
  1. 2017/04/04(火) 11:00:20|
  2. 中野店黒田

80年代の咆哮! Arガス・レーザーブレードとはなにか?「ショッカー」の正体は日本政府だったのか? 「コマンダー0」のお話




つい先日、30歳になりました。特に自分では感慨はないのですが、他人からは三十路三十路言われるとなんとなく「ヤカマシ~ッ!」と頭から湯気が出てきそうになる今日この頃です。
自分は86年生まれなのですが、80年代生まれの人もおっさんといわれてもおかしくない人がほとんどになってきたことと思います。
86年ぐらいの生まれの人だと80年代というのはあまり物心がつく前に過ぎてしまった時代だったのでどこか夢のような懐かしさを抱いている人も多いと思います。
ということで今回は燃える80年代の申し子「コマンダー0」です。


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こちらの記事、実は6年前の記事を手直ししたものでそういった意味でも過去からの申し子というかなんというか(笑)


今回紹介するのは知る人ぞ知る快作、富沢順先生の「コマンダー0」です富沢順先生といえば、スーパージャンプにて1992から1999年まで連載された「企業戦士YAMAZAKI」で有名な漫画家です。その後も今は亡きコミックバンチにて「殺し屋 麺吉」等を手がけていました。
「企業戦士YAMZAKI」に代表される作品群は、 職場で生まれる悩みや苦しみ、軋轢といったものを登場人物が克服するための人間ドラマが数ページに
わたって繰り広げられた後、よくわからん敵が登場、文字どうり戦闘サイボーグ…企業戦士である山崎が 名刺スラッシュ等の必殺技で敵を1コマぐらいで処刑(しかもなんか良い事言いながら)というのが毎回の流れでした。
そんな富沢順先生の最初期に描かれた作品がこの「コマンダー0」というわけです。

富沢先生はもともと車田正美先生のアシスタントで、車田先生の身内パロディ作品「実録!神輪会」にも登場してます。
他の大御所漫画家を残虐手段でぶっ殺したり、「リングにかけろ」風に死んでたので印象深い人も多いことでしょう。
たしかむっつりスケベ扱いされてました。

そんな「コマンダー0」ですが、
肝心の中身は、近未来版「聖闘士星矢」といった趣で2巻完結でありながらかなり面白い作品となっています。
富沢先生の絵は、どことなくポップでありながらもバトルシーンもいい感じの昔の絵柄。古きよき80年代の漫画の雰囲気が存分に楽しめます。

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                  ジーニアス5!

主人公は所謂熱血な昭和風味。敵いわく、こんないいかげんな時代に炎を撒き散らしながら生きる男がいるとは、とのこと。いい感じに分かり易い!

また、星矢では必殺技に当たるインチキ化学武器もケレン味たっぷりで最高です。
とくにKr(クリンプトン)ガスレーザーブレードは名前のインパクトもさることながら、1ランク上にAr(アルゴン)ガスレーザーブレードがでてきて、クリンプトン<アルゴンという謎の化学方程式を当時の少年は心に刻み付けられた事でしょう


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個人的にはバオー、スパイラルナイフに匹敵するジャンプインチキ兵器の至宝です!


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最後はクレイジーズ80S!狂った時代に俺らは生まれた!とのことですが、これを書いてる担当も八十年代生まれで感慨深い台詞ですね。


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また、たまに話題になる、漫画版「仮面ライダー」の最終回でショッカーの正体は日本政府そのものである、といったネタが話題になりますが、
実際には漫画版では微妙に意味合いが違う話しになっています。


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このビッグマシン、ライダーの映画でラスボスになったりしたこともある方です。別にショッカーの首領とかではない・・・模様。


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このようにショッカーは日本政府が進めていた政策を悪用していたのは事実なものの、ショッカー自身が日本政府ではないという展開でした。

これはこれで衝撃的な展開ではありますが、では「正体が日本政府」であるという話はどこから来たのか、というと実はこの「コマンダー0」なのではないでしょうか?
「コマンダー0」は主人公が改造バイクに乗ったりと「仮面ライダー」の影響も大きく、最終回の展開もよく似ているものとなっています。
そして「コマンダー0」の最終回こそが、敵の正体が日本政府であることを仄めかす展開だったのです。
恐らくはよく似た展開を混同した、というのが真相だったのではないでしょうか?
見比べてみるのも一興かと思います。

そんな80年代の油ギトギトのコッテリ漫画、コマンダー0をあなたの本棚に加えて見てはいかがでしょうか?


※「コマンダー0」はこちらから。

中野店/黒田
  1. 2016/12/24(土) 11:00:14|
  2. 中野店黒田

「ゴルゴが敵の彼女を強姦、それを録音再生して敵を射殺する回」と僕の友人の話。




ゴルゴ13、一度は皆様も読んだことがあると思います。
大体は床屋とか飲食店とかの漫画置場だったりおじさんの本棚にひょっこり置いてあったりして、不意に開けたらまんまる乳首と白ブリーフのゴルゴが載っていて恥ずかしい思いをする、なんて経験をしたことがある方も多いと思います。


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丸い乳首参考画像


で、大体の人は何となく暇つぶしのお供としてゴルゴを読む方がほとんどなわけですが、まぁそうじゃない人もいるわけで。
僕の友人のK君もそんな一人でした。
彼もゴルゴを読みふけっては、ゴルゴのライバルして最強至高は「鬼畜の宴」のスパルタクスだの、「バイオニックソルジャー」のライリーは遺伝子操作だし最後がみみっちいのでノーカンだの、まぁ大体がゴルゴのぶっとい副読本の受け売りだと今になっては知っているのですが当時の僕にとってはなんとなく面白がって聞いていたわけです。


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ゴルゴ最強の敵と語られることも多いライリー君。まつ毛がチャーミング。


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彼も最強の敵として語られるスパルタカス。FCゲームのボスとして出てきました。


その友人は結局ゴルゴ愛を抑える事ができずに、なぜか当時(二人の中で流行っていた)RPGツクールでゴルゴの敵キャラを主人公にしたゲームを製作しだして僕にやらせる始末。
実はシステム、ストーリーは他人の作ったものを改造したものだと気付いていたのですが、そこを突っ込まないのが僕たちの美しい友情でした。
なぜか数居るゴルゴの敵の中で主人公に抜擢されていたのは「チャイナ・タウン」の ハ ン ク ・ 趙 だったのは意味不明すぎたのですが。
碌にwikiにも載ってないのでご紹介しますが、このハンク・趙、太極拳の達人でゴルゴも組織に潜り込む為一緒に太極拳をしたりするのですが、最後は拳法勝負を挑むも拒否され射殺という理不尽死という極めて残念…というかこいつはゴルゴのライバルとしてはカウントされないだろ!といった小人物でした。


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この話、キャラクター以外もとても味があります。餃子の王将的レストランに惨劇が!



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左がハンク・趙、太極拳に付き合ってあげてるゴルゴの優しさ。左眉毛のキズは変装のようです。オイ。


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哀れ、本気のゴルゴには即死なのでした。


そんな感じで僕とK君のボンクラコンビ内で、ゴルゴが聖典と化し、事あるごとに「アサシン暗殺教団」の名台詞(?)「ハッシシの匂いだ…」だの
「マシン・カウボーイ」の馬のペニスを切り取るシーンをコピーしてノートに貼ったりとボンクラ中学生を満喫してわけです。


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アサシン教団なのに暗殺連続失敗に弱気になっちゃうおじさんたち。それならゴルゴさんに聞いちゃおう☆(お前らに客観視はないのか)という超論理の結果は↓


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ハッシシ(麻薬)の匂いのためだ・・・って命を賭した答えが腋臭レベルのしょーもなさ!目にフォーク刺さっちゃってるけど分かって良かったね☆(死ぬけど)



そんな中でもとりわけ二人の狂男児の琴線触れたエピソードがありました。


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タイトルでお分かりになった方も多いかと思いますが、それがかの悪名高き「氷結海峡」なわけです。
この「氷結海峡」、ゴルゴ13の中でも特に悪い意味有名なお話しで、簡単に言ってしまえばタイトルの通りなわけです。


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なぜか「脱ぐんだ」と和姦成立を謀るゴルゴ、卑劣なり


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まぁこのように氷河と言う極地の達人に対して、ゴルゴは「彼女をレイプして録音、それを流して動揺させたところをスナイプ」という究極外道コンボ技、「善悪の屑」に出てくる悪人レベルの悪行で目標を達成するのでした。
もちろんこの「氷結海峡」、ファンからの評判は最悪で、「残酷外道過ぎる」「なかったことにしたい」という意見も。
いくらハードボイルドの代名詞のゴルゴでもレイプ→録音は賛否が分かれるようです。
まぁでもこれが「レスボスの潜在的に恐れるRODだ!」なんて台詞からしてゴルゴさんもレイプしたいお年頃だったのかもしれません。
この性豪っぷりが災いとなって性病持ちの売春婦を嗾けられたこともあるので因果応報。まぁ売春婦はあっさり殺されてオジャン、なのでゴルゴの連載は現在も続いています。


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ちなみにこの敵役のジョーは、自信満々、余裕綽々でアザラシを殺してエンジョイしたり恋人を大事にしていたりと、その様子がなんとなく可愛げがあるのもこのエピソードが叩かれる一因な気がします。

そんなゴルゴの汚点とすらされるこのエピソード、もちろん僕たちボンクラコンビには最高のエピソードであり、事あるごとに「依頼の為ならなんでもするゴルゴの凄まじさ」「氷河の吹雪の中に響き渡るゴルゴのレイプ音声のシュールさ」を夜毎に語り合ったのです。
そのせいで二人の志望校ランクが一つ下がって僕の人生が大きく狂いだしたのもここで告白しておきます。


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本日のゴルゴ語。犬ぞりを操るときはエスキモー語でこなす粋なゴルゴ。


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スペルマではなくスパーム。ゴルゴ世界では常識です!「バイオニックソルジャー」より。


そんなゴルゴのレイプのおかげで人生を歪められつつも強い絆で繋がった二人も大学入学を機に僕は故郷を離れ、かたやK君は地元に残り離れ離れになっていきました。
最初は連絡をしていた二人も段々と連絡も絶えていき、いつしか会わずに10年の時が経つ事となりました。
もちろん連絡先ぐらいは知っているものの、長い時間がいつしか連絡するのにも勇気が必要になるような枷になってしまっているのを実感しています。
K君、俺は今二人で一緒に行った「まんだらけ」で働いているよ。今もボンクラ漫画ばっか読んでいるよ。
今でも元気かなK君、急に連絡しても、たまには遊びにいってもいいよな?
一緒にゴルゴの話とか、「押忍!空手部」とか「カラテ地獄変」の話でもしようぜ?

恥ずかしいけど、この会社に入ったの、お前のおかげでもあるんだぜ?


凍結海峡が載ってるゴルゴの通販はこちらこちらから…


(担当 黒田) [「ゴルゴが敵の彼女を強姦、それを録音再生して敵を射殺する回」と僕の友人の話。]の続きを読む
  1. 2016/11/16(水) 11:00:26|
  2. 中野店黒田

ドリームス33~35巻の話 ~甲子園に カツオの群れが突き刺さる~





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話題になっていたので読んだ方、知っている方も多いかと思いますが2016年10月号の「ドリームス」、凄い事になっています。
凄いというか、もうなんというか、20年以上も続いた漫画が打ち切り(多分)を宣告されるとこうなってしまうのかという恐怖、絶望が溢れた恐ろしい展開となっていました。
だって…明らかにいつのタイミングで宣告が来たのかがわかるページ構成になってるし…

というわけで話題のドリームスですが、本来的には意外とリアル寄りで最新のスポーツ学や物理学を取り入れた…取り入れすぎているぐらいの理系な漫画だった面もあります。特に前半では野球漫画お馴染の魔球が頻出しながらも、物理法則を無視したものではなく変化球に近いものも多くありました。
まぁそのせいで一回打席に入って終わるたびに科学的見地の説明から精神論まで一通り語ってくれるのでそれで一話一カ月潰れて甲子園のひと夏を語るのに20年以上掛かっているいるわけですが…

またコマ割り、ページ構成も独特で、頻出という言葉では生ぬるいほどの割合をしめる左向きの顔、くど過ぎる説明と木多康昭先生の「泣くようぐいす」でもネタにされていた口と耳が同じ位置になる顔、全員同じ顔をしているキャラ、「750ライダー」のマスターのたばこのように顔と同化したフーセンガムなど、その表現論はマンネリをもした神話的表現となっており、ドリームスワールドを他との類似性が皆無の異形野球世界へと毎話築きあげています。


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あまりにも同じデザインのモブがページ全体を埋め付くした上で、さらに小さなコマ割りを散りばめたまさに情報量の暴力とでもいうべき凶悪なページ割り!
世界よ、これがドリームスだ。




そんなドリームスも段々と甲子園を舞台にしながらキャラクター達も人間離れしていき、まずその変貌が明確に露わになったのが33~35巻の海聖戦です。
試合としては甲子園二戦目、実は甲子園に入ってからの試合の中では一番少ないページ数なのですが、そんなことは関係ない問題エピソード。
まず主人公である問題児「久里武志」が前日に酒を飲んで寝込んだまま試合開始という衝撃の試合開始なのですが、まぁあの「久里」、野球そっちのけの喧嘩で数話使うようなキャラクターなのでこれでも規定路線なぐらいです。

問題は相手チームの高知代表の海聖学園。
そのエース、秋吉広大。
ご覧ください。


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高知=カツオ=一本釣り打法、とまぁ方程式的には間違っていないような気もするのですが、そのビジュアルインパクトの凄まじさはドリームス読者に大きなトラウマを植え付けました。


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この一本釣り打法、単にカツオ釣りで鍛えた足腰での打撃ということで実際あっさりとこの後破られてしまうわけなのでしたが、この神聖なる甲子園の大地にカツオが突き刺さる野球漫画的にも歴的的伝説的シーンを残してくれましたのです。
今でもドリームスの話題になると必ずカツオが出てくるほどのインパクトだったようで、そういった意味では出番が少ないながらも強く心に刻まれた「北斗の拳」のハート様、「ジョジョの奇妙な冒険」の血管針攻撃、「キン肉マン」のミキサー大帝といった猛者達と比類する存在なのかもしれません。


こんな短いながらもドリームスの魅力が最大に詰まったのが33~35巻となるのです。
これ以降、アフリカから超人をチームに引き入れた久里の親父が監督のチーム(しかも親父との因縁が終わったのが甲子園第3試合という謎の中途半端感)や女性ながら打率十割、投げる球も150kmをたやすく超える人類最強レベルのキャラが登場したりと急激に人間離れをしたインフレ状態になるのでした。


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ちなみにこの33~35巻、裏表紙にドリームシなる謎の漫画も載っているのですがその内容もなかなかにドリームス的なので全話載せておきます。


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虫だけでなく擬人化ならぬ擬魚化もあるんだよ、そうドリームスならね。



そして2016年現在、20年以上を費やしてようやっと準決勝に辿り着いたところで先日の衝撃的な展開だったわけです。
こんな記事を書いた後であれですが、ドリームスで一貫して、目に見えずとも努力と研鑽は報われるべきである、というきわめて健全なスポーツマン的思想がテーマとして描かれていました。


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そのようなテーマを描いた作品がこのようないわば捨て鉢的な展開を迎えてしまう、というのは重ねた年月以上の衝撃を自分は感じたのでした…
時の流れは残酷なものですが、まだドリームスは何話かある模様ですので、今のうちに読み返してこの先の「夢の先」に備えるべきなのです!


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(担当 黒田)
[ドリームス33~35巻の話 ~甲子園に カツオの群れが突き刺さる~]の続きを読む
  1. 2016/09/30(金) 10:59:50|
  2. 中野店黒田

2012年の格闘漫画事変、そしてたまには「Devils×Devil」のことでも語ろうじゃないか!




はい、ということで「Devils×Devil」のお話です。
「Devils×Devil」とはかの「高校鉄拳伝タフ」「TOUGH」のスピンオフ作品。
もちろん両作品と同じく猿渡哲也先生です。


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「Devils×Devil」は「高校鉄拳伝タフ」ではラスボスを務め、「TOUGH」でも強い印象を残した「宮沢鬼龍」が主人公。
「宮沢鬼龍」といえば一時期は(あくまで一時期は)「バキ」の「範馬勇次郎」とも比類する扱いで語られることもあった格闘漫画界での強者キャラでした。
鬼龍といえば、主人公キー坊の父の双子の兄という立ち位置や、残忍ながらも頭脳明晰(IQ200!)である点、イメージカラーの黒など、「範馬勇次郎」ともまた違った味わいの強キャラだったのです…「高校鉄拳伝タフ」までは。

続編となった「TOUGH」の中盤以降は、単行本に挿入される「Another side of鬼龍」では大阪おばちゃんに負けたり、カンガルーに格闘技を仕込んだりと以前の強者を完全に破壊するネタキャラ扱いにされ、本編でも車に轢かれるなどを筆頭に突然の瞬殺→奇行を繰り返して今までのキャライメージを粉砕しつくしたのは今でも偶に語られる悲劇です。
そしてキャライメージを完全に破壊した始末が、ろくに見せ場のないまま連載終了のお知らせでした。
そういった鬼龍の雄姿(?)はテンプレwikiに詳しいのでそちらで確認してみるとよく分かります(笑)

思えば2012年はライバルだった「刃牙」シリーズも飯の食い方を説教されたあと、盛り上がらない親子喧嘩のまま連載終了した年でもありました。
「刃牙」「タフ」シリーズいずれも10年を遥に超える長期シリーズとなり、格闘技という題材とキャラクター自体の掘り下げが疲弊を感じさせていたこともあり、煮え切れない思いは有りつつも終了を見守るしかないといった2012年は格闘漫画にとって大きなターニングポイントでありました。
その後、「刃牙」シリーズは「刃牙道」として宮本武蔵を蘇らせただけでなく、格闘技だけでない武具を用いた総合武闘を扱うようになったのは皆さんのご存知のことかと思います。

こうして2012年を越えた後、今だ「刃牙」の力を大きく残しながらも、純粋なる格闘漫画は「喧嘩稼業」「ケンガンアシュラ」といった新しい作品たちに大きな流れが動いていくわけなのですが…

そんな時代の中、「タフ」シリーズから生まれたのがこのスピンオフ「Devils×Devil」でした。
主人公、かつての強キャラ「宮沢鬼龍」が殺人ウイルスで崩壊した世界を舞台に登場という今まで以上にぶっ飛んだストーリーは純粋な「タフ」ファンだけでなく格闘漫画ファンをも驚かせたスッ飛び振りでした。


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      これがあの「タフ」のキャラが居た世界といわれても全く実感がわかないんですけど・・・


当たり前のようにシリーズの他のキャラは一切登場せず、人類の99.9パーセントは死滅し「NHM(ノーヘアモンキー)」と呼ばれるモンスター跳梁跋扈するようになったと語られるだけという世紀末ぶりでファンでなくてもショッキングな展開


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                       東京喰種ならぬパリ喰種。


「悪魔」と称された鬼龍も人間じゃないバイオハザード的モンスターには常に劣勢で、平然とダブルバレルショットガンを使いご自慢の鬼龍カーでひき逃げ(かつて自分がされたように…)を繰り出したりと単なる強い生存者レベルの描写で、往年の「強い」鬼龍は正直描かれず鬼龍ファンはひどく落ち込んだものでした。
といえ、崩壊した世界でルーブル美術館を一人守る鬼龍の姿や、律儀に食事のマナーを守り、ワインを嗜む姿は「TOUGH」後半で描かれた強キャラではないにしろ、人間として描かれた鬼龍の延長線上でした。


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    スポーツカーで轢かれたことも轢いたこともある元ラスボスなんて鬼龍ぐらいのもんだと思う・・・多分・・・


また「刃牙道」のように相手は人智を超えた相手であり、戦い方も武具に制限のないある種極限状態での戦闘となっているのも興味深いところ。これは行き詰った格闘描写に対する「タフ」シリーズなりの回答だったのかも知れません・・・
美術品に対する妙な薀蓄や引用などはまさに猿渡節で、一々モンスターにもお決まりの悲しい過去を用意してくださる手腕にはファンは脱帽です。


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               鬼龍の貴重なギャグ顔をみよ!一々ナプキンまで付けてるのが物悲しい・・・
               免許を取りにいくピッコロ、味噌汁を飲む勇次郎に比肩する迷シーン。


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         偉そうにゲルニカについて語っていたわりには残念の画力の鬼龍・・・


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                 本当にワンパンでダウンする鬼龍、弱体化ここに極まれり。



その後猿渡先生は「GOKUSAI」「Runin」といった格闘物とは離れた作品を手がけていき、「ロックアップ」などの連載はあるものの、「タフ」シリーズは数年間休眠することとなりました。
そして遂に2016年「TOUGH外伝 龍を継ぐ男」が連載スタート、長い休眠を終えることになりました。


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             新シリーズの1コマ。水木喜太郎ってそのまんま過ぎィ!



主人公は鬼龍の息子という事でやはり「タフ」シリーズは鬼龍から切っても切れない存在となりました。


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         鬼龍の金玉潰されてましたが子供は相当数残していたようです・・・(汗)



・・・でやはり壮大かつあっさり世界を滅ぼしていた「Devils×Devil」は無かったことにされるんだろうなぁ、となんとなく寂しい気分にもなるのです。
そんな時は2012年のことを思い出すのも乙なもんですよ、格闘漫画もがき、輝いてた2012年を・・・



(中野店/黒田)
  1. 2016/08/18(木) 11:02:11|
  2. 中野店黒田

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