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壮大なボンクラ草食系ラスボス誕生物語として読みたい「虐殺器官」




こんにちは、斧です。今回は(今回も?)ものすごくネタバレします。



 虐殺器官を観に行きました。やっと。1年以上待ちました。これが学生時代なら大学をサボってでも公開日の朝イチに行って劇場特典も揃えるつもりで劇場に入り浸ったんでしょうがいろんな意味でそんな余裕はもうないです。

 今の最高レベルのクオリティとリアルよりの絵柄のアニメーションでガンアクションと銃で四肢や頭部が吹っ飛ぶゴア描写をきちんと観れる幸せ。この言い方はなんだか誤解を招きそうですね。少年兵の身体が吹っ飛んで損壊する描写はほぼシルエットだったとはいえよくぞここまでと思いました。ちゃんと「月光」が流れたシーンは震えましたね。プライベートライアンはさすがに無理だったみたいで残念。

 最後の描写に賛否あるみたいですが、個人的にはあれはちゃんと見せないからいいんだろ!!と思いました。紛争地帯になったアメリカでピザを食べる主人公はまあ観たかったですけど、原作にはない指パッチンの描写や法則に則って作ってるっぽい原稿や付箋の並べ方からしてどうみても文法発動してるし。なんとなくそれと判ればいいのです。



 そういうわけで今回のレビューはこちら。


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虐殺器官(伊藤計劃著 早川書房)


 伊藤計劃という作家は、「ゼロ年代最高のSF作家」とかなんとか言われて、ものすごおおおおおおく評価されていて、処女作の虐殺器官は新人賞こそとらなかったもののハードSF小説としては異常なくらい売れて、日本のSF界では「伊藤計劃以前・以後」なんて言葉が出来てしまったように、同年代の作家や作品に与えた影響も強くて、長編2作目の「ハーモニー」ではフィリップ・K・ディック特別賞をとってしまったりしたんですよね。でも彼自身は、ラスボスにときメモの主題歌の歌詞を喋らせたり、今回レビューする虐殺器官冒頭で武装勢力が使ってるトラックがどう考えても頭文字Dだったり、あとは涼宮ハルヒとかスパイ大作戦とかのパロディを大切にし、短編「セカイ、蛮族、ぼく。」では、



「遅刻遅刻遅刻ぅ〜」

と甲高い声で叫ぶその口で同時に食パンを加えた器用な女の子が、勢い良く曲がり角から飛び出してきてぼくに激しくぶつかって転倒したので犯した。

短編集「The Indifference Engine」収録「セカイ、蛮族、ぼく。」より



という文章が冒頭から飛び出してきたりする作家さんなのでもっと気楽に読んで良いものだと思います。

 まあ要するに、散々考察も解説もレビューもされ尽くしている作家さんな訳で、今更自分がレビューという名の駄文を書きなぐる必要もない気はするんでね、ぶっちゃけSFマガジンに載ってた解説とか、公式ムックの「蘇る伊藤計劃」とか、あとは彼のブログとかを正直よんでほしいなあって感じなので!今回はこう、簡単に!さらっと!いつもみたいに超長文にはならない感じで!いきたいなあと考えてるんですがどうなるんでしょうね!!それは今の僕にはわからない。

 

 そういうわけであらすじをさらっと書いておくと、9・11テロやサラエボでテロリストの手作り核爆弾が炸裂した結果、買い物にも・交通にも・その他あらゆることに生体データによる認証が必要になった超・監視情報化社会になりつつある世界を舞台に、アメリカ軍所属の軍人兼スパイの主人公・クラヴィスが、世界中で魔法のように紛争と虐殺を惹きおこす男・ジョン・ポールを追って世界中を飛び回るというスパイ小説でありエンタメでありSF小説です。

 

 特殊部隊員のクラヴィス・シェパードは、紛争地域で虐殺行為を引き起こした人物を暗殺する任務をして回っています。というのも、監視によって先進国でのテロはなくなったけれど、そのかわり後進国での紛争や虐殺が異常に増えていたから。その日も武装勢力の指導者を暗殺しにいったけれど、何かがいつもと違う。



「頼む、教えてくれ。私はなぜ殺してきた」



 虐殺を指揮した張本人が、自分がなぜそんなことをしたのか全く理解していない異常事態に遭遇したのです。任務を続けるうちに、毎回標的として上がりはするものの逃し続けているジョン・ポールというアメリカ人が、世界中で虐殺を引き起こしているらしいことが明らかになります。

 彼が赴いた国や地域では、なぜか虐殺が起きて混沌に叩き込まれる。

 彼が訪れると、そこでは魔法のように死体の山が出来上がる。

 ジョンを追う中でクラヴィスはジョンの元愛人であるルツィアと出会い、とある理由から次第に惹かれていきます。そして任務を通してクラヴィスは監視社会における欺瞞と真相、ジョンの目的を知り、やがて悲劇的な結末を迎えることとなります。

 

 かなりハードで作中独自の専門用語も飛び交いますが不思議と読み辛さは全くと言っていいほどなく、人工筋肉が使われた工業機械や兵器・拡張現実などのガジェットも読んでいて楽しいです。もともとは作家になる以前から親しかったゲームクリエイターの小島秀男氏の作品「スナッチャー」を伊藤計劃氏が二次創作した短編がもとになっている今作ですが、映画に精通していた彼らしく、「007」シリーズなどスパイ映画の基本をおさえたようなストーリーテリングが見事です(と、どこかの解説で読みました)。



 主人公のクラヴィス・シェパード大尉とメインキャラのウィリアムズ以下アメリカ情報軍特殊検索群i分遣隊の隊員は世界各国で暗殺任務をこなしています。作中では兵士のPTSDや、戦闘時の負傷で任務続行は難しくなることを防ぐため、「戦闘感情適応調整」や「痛覚マスキング」といった技術が使用されているのですが、これによって特殊部隊員の彼らは後進国内での激しい戦闘で死体の山に囲まれても、少年兵を銃で吹っ飛ばしても、銃で撃たれても、トラウマや痛みを感じることなく任務に従事することが可能になっています。

  

 しかしながら、まさにその技術によって主人公クラヴィスは、紛争地帯で生きるか死ぬかというある意味圧倒的なリアルの中にいるにも関わらず、実際には戦闘で人を殺し、生き残れたという実感が持てない、リアリティを感じることができないという矛盾の中で苦しみ、苦悩します。この殺意は、自分自身の殺意だろうか、と。僕は僕の意思でそうしているのだろうか。

 そんな彼だからこそ、自分の母親が交通事故に合い、植物状態のまま回復の見込みはなく、延命処置を続けるか否かを他ならぬ自分の意思で決めなければならなくなってしまったとき、激しく動揺してしまいます。そして処置を中止する同意書にサインしたときから、彼は初めて、人を殺したという罪の意識にとらわれ、そのことに関してトラウマを抱えることになります。

 作中でクラヴィスは、しばしば「死者の国」の夢を見ます。そこでは任務で赴いた紛争地域に転がっていたはらわたをこぼした子供や、頭の割れた少年や、虐殺の被害者たちの死体が、そして母親が、みな微笑んでどこかへと行進していく。夢の中でクラヴィスは、自分もその列に加わり、その悪夢的光景に安らぎを憶えます。彼は上記のような罪の意識を持っていて、赦しを欲しているんですが、その赦しを与えてくれる対象が既に死んでおりその機会が永遠に失われているという悲劇を抱えています。だからこそ死者に自分が肯定されるというその光景に安堵してしまう。彼は作中で常に母親の命を終わらせたということに悩み、そのことで母親本人からはもう赦しを得られないという悲しみが行動原理となります。戦場にリアリティを感じられないまま、個人的なことで思い悩む文学部出身の草食系軍人、それが彼です。



 そんなクラヴィスはジョン・ポールの足取りを追って潜入したプラハにおいて、チェコ語の教師をしている女性ルツィア・シュクロウプと出会います。彼女は元MITの学生で、そこの講師だった当時のジョンと不倫関係にありました。潜入任務の過程で彼女と親しくなっていくクラヴィスは、ある日彼女から罪を告白されます。曰く、「サラエボに核爆弾が落ちたあの日、ジョンと寝ていたの」。彼とセックスをしているまさにその時、ジョン・ポールの妻子は観光で訪れていたその地で塵も残さず吹き飛んだのだ、と。クラヴィスの部下であるアレックスの言葉がここで重さを増してきます。



 「地獄はここにあります。頭になか、脳みそのなかに。大脳皮質の襞(ひだ)のパターンに。目の前の風景は地獄なんかじゃない。逃れられますからね。(中略)だけど、地獄からは逃れられない。だって、それはこの頭のなかにあるんですから」文庫新装版52ページより



 ルツィアはそのことに関して罪の意識を感じています。しかし、その罪を告白し、赦しを乞う相手はもうこの世にいません。そしてその点でクラヴィスは彼女になかば一方的に共感し出します。この人は僕と同じ罪を抱えているのだ、この人に自分の罪を告白すれば、自分はそれで救われるのだと執着しだします。ここらへんのくだりのボンクラ感というか、勝手にそれと思い込んで女性の尻を追っかけ出す童貞くささというか、そういうのがなんだかものすごく好きなんですが、マザコンの童貞とか散々ないわれ方をしているのも知ってるのでとても複雑。

 そんなルツィアにつれられ、クラヴィスはとあるバーのマスター・ルーシャスと出会います。彼はクラヴィスに「対価としての自由」の考えを語ります。人はみな、何かをする自由を手放し、別の自由を得ているのだと。今のアメリカはじめ先進国は、プライバシーの自由を放棄してテロへの抑圧からの自由を得ているのだと。だが実際は、そのトレードはまったく釣り合っておらず、監視を強化すればするほどテロは増加する傾向にあり、それは公開されている統計データでみることができる事実だと。



 「あんただったら知ってるだろう。世界中で顧みられていない悲惨な内戦がいくつあるか。人が興味を持つのはそのほんの一部だ。人間は、見たいものだけしか見えないようにできているんだ」文庫新装版292ページより



 工業機械に使われている人工筋肉は、実は人工ではなく、生きたイルカやクジラを解体して取り出した筋肉繊維でできている。調べれば誰でも知ることが出来るのに、誰も知らない。ドミノピザの普遍性の中の暮らしも、映画ストリーミングサービスの無料プレビュー15分のリピートも、そういう嘘っぱちで成り立っている。

 そういうことをクラヴィスに語ったルーシャスは、じつはジョン・ポールその人と繋がっていて、ついにクラヴィスはジョンと邂逅を果たすことになります。



 ジョン・ポールはなぜ、後進国で虐殺を引き起こすことが出来るのか。ジョン・ポールはどうやって、虐殺を引き起こしているのか。その方法は物語中盤のこの時点で結構あっさりと明かされます。人間の脳には生得的な文生成機能がある。人間の脳は、その機能により言葉によって無意識に行動が決定づけられてしまう。言語学者だった自分は、戦争などで残虐行為がおこった地域のテキストデータを文法解析にかけて、特定のパターンがあることを見つけた。ではそのパターンで作られた文章を、残虐行為の起こっていない地域に流したら。

 人間の行動は、意識は、魂は、言葉によって規定されてしまい、そのことは遺伝子にコードされていてどうすることもできないのだとジョンは語ります。じゃあその言葉に左右されてしまう人間の意識ってなんなん、というのが次作「ハーモニー」のテーマのひとつであるんですがまあその辺はまた今度。



 この時点ではジョンが虐殺をまき散らす動機はまだ明らかにはなりません。それが明かされるのは、クライマックスのアフリカにて。その前にクラヴィスたちは、ジョンを拘束するために訪れたインドで、まさに地獄をみることになります。



「どうですか、いまなら子供を殺せそうですか」文庫新装版269ページより



 インドでの任務直前、クラヴィスに感情調整を施したカウンセラーの言葉です。痛覚をマスキングし、感情面も戦闘に適応するよう調整された兵士たちは、インドで麻薬づけにされた少年兵を殺してゆく。適切な処置をすれば単なる仕事としてそれが可能になり、結局のところ自分たちは、麻薬で麻痺した目の前の子供とそんなに変わらないと部下には指摘される。それでもクラヴィスは選択し、背負おうとします。殺したのはまぎれもなく自分の意思で、これは僕の罪だというふうに。しかしながらやはり、彼自身はそのとき感じるべき身体の痛みも心の痛みも感じることはありません。そして地獄。初めて自分たちと同じような特殊部隊との戦闘を経験することになるのです。

 痛みを感じない兵士同士の戦闘は、頭を吹っ飛ばすか身体をミンチにするまで続くハイテクゾンビ同士の殺し合いでした。



<わかりません、他の客車がどうなっているのかは。(中略)俺にしても、外に出ようとしたときに左腕を肩から吹っ飛ばされちまいました>

それまでとなんら変わらぬ声色のまま、リーランドがものすごく派手な事実をさらりと言ったので、ぼくは思わず笑いそうになった。(中略)いやいや、まいっちまいましたよ、気がついたら頭がなくなっていたんでさ。

文庫新装版319ページより





腕がもげても下半身がなくなっても、完全に死ぬまでは銃を撃ち続けるグロテスクな光景。悪趣味な笑い。現実になったモンティ・パイソン。仲間が大勢死んで、まさにそれは地獄だったけれど、クラヴィスはやはり何も感じることができない。

 

ぼくはからっぽだった。誰を憎めばいいのかさっぱりだった。(中略)ぼくが必要としているのは罰だ。ぼくは罰してくれる人を必要としている。いままで犯してきたすべての罪に対して、ぼくは罰せられることを望んでいる。

文庫新装版330〜331ページより



またもやジョンを取り逃がし、部隊は敗北。そして彼はただただ罰と赦しを欲します。ジョンと共に消えたルツィアを、それこそ強迫観念的に。痛みもそれに伴う成長もなにも得られずからっぽのまま思考は堂々巡り。その状態で主人公クラヴィスの物語はクライマックスへ。



 徹底した監視によって先進国のテロはなくなった様に見えたけど、それは全部嘘だったと物語中盤で明かされましたが、実際問題、作中では先進国でのテロは起きていませんでした。それは何故だったのか、ジョン・ポールは本当は何を目的に何をしていたのか。アフリカ大陸・人工筋肉用にクジラやイルカが養殖されているヴィクトリア湖沿岸で、クラヴィスはジョンとルツィアに再会し、ついに真相を知ります。



「愛する人々を守るためだ」文庫新装版368ページより



サラエボで妻子が死んだ時思ったんだよ、彼らには彼らに殺し合ってもらう、こんな悲しみは十分だ、アマゾンで買い物をしてみたいものだけ見て暮らす、そんな世界を守るとジョンは言います。テロを起こすほどの憎しみが先進国に向く前に、内輪で混乱を起こすと。価値観の逆転がここで起こり、世界中で虐殺を起こした張本人が実は、アメリカはじめ先進国にとってはある意味で正義だったことが明かされます。先進国の平和は、後進国での混乱のうえに成り立っている。自由は、死体の山とのトレードの上に成り立っている。

 その自由の対価として責任を負う必要があるとルツィアは言います。クラヴィスはジョンを逮捕し、すべてを公にすべきだと。それが彼女なりの罪に対する責任の負い方で、彼女の選択で、決断でした。クラヴィスも賛同します。僕たちは罪を背負うべきだと、彼はここに来てようやくすべてを受け止め、からっぽのままただ悩むだけでなく前に進もうとします。



「いままでは世界なんか守っちゃいなかった。ただ命令されたから、やっていただけだ」

「これからは、違うのかい」

「わからない」ぼくは正直に答える。「でも、いろいろなものがはっきり見えるようになる。そう思うんだ」

文庫新装版383ページより



しかし、ジョンが語った真実は、テロ対策として情報インフラを整備してきた先進国つまりアメリカにとって不都合そのもので、結局すべてもみ消されます(あくまで一旦は、ですが)。そうまでして守らなければならない自由とはいったい何なのか。地獄の上に浮かんでいるはずの、このピザを認証で受け取りビッグマックを食べきれなくて捨てる世界の正義とはなんなのか。ここでクラヴィス・シェパードという青年は、またもやからっぽになってしまいます。そのからっぽの状態のまま、とある決断をするわけです。ジョン・ポールから託されたメモを手にして。



ぼくは罪を背負うことにした。ぼくは自分を罰することにした。(中略)とてもつらい決断だ。だが、ぼくはその決断を背負おうと思う。

文庫新装版396ページより



 ジョン・ポールがアメリカを守るためにそれ以外の国の命を背負うと決めたように、ルツィアが平和は地獄の上に浮かんでいることを公にすべきだと決断したように、クラヴィスもようやく彼自身の決断をします。誰かに罪や罰を背負わされ、誰かに罰してもらうのではなく、彼自身で罪を背負い、彼自身で自分を罰することにするのです。あくまでからっぽのまま。見たいものしか見ないようにしてきたみんなに、ここ以外の場所はどれだけ地獄だったのかをこれ以上ない方法でわからせるということ。



 外、どこか遠くで、ミニミがフルオートで発砲される音がする。うるさいな、と思いながらぼくはソファでピザを食べる。

 けれど、ここ以外の場所は静かだろうな、と思うと、すこし気持ちがやわらいだ。

文庫新装版396ページより



 それはどこまでいっても彼のエゴで、ジョンとルツィア両名の思いを踏みにじることにもなるのですが、僕としてはどんな形であれあんだけふらふらしてた彼が彼自身の決断をすることが出来たことを讃えたい。まあこの後えらいことになって「ハーモニー」の世界に繋がるんだけど。結局世界中巻き添えで地獄をみるけど!でもちょっと待ってください。自分のエゴを押し通した結果(ある意味で)世界を滅ぼすラスボス。とっても素敵ではないですか。そう、この「虐殺器官」は壮大なラスボス誕生秘話なんだよ!「エピソードⅢ」なんだよ!(絶対ちがう)



 まあ、僕の好みとクラヴィスという人物が最終的に決断できたからといってそれで成長できているかどうかはまた別の話で、だからいろんなとこで彼に関してあーだこーだ言われるのもわかりますよ、わかりますけど、結局彼の行動原理ってどこまでいっても大切な人を失った悲しみなわけで、だから彼には共感せざるを得ないんです!だって大事なひとがいなくなった悲しみって普遍じゃないですか。ラストシーンも起きてることとは裏腹にすごくポジティブな感じがして、ああ前向きになったねクラヴィス!ってなるじゃないですか。ならないですか、そうですか。



 そういえば今作で使われた「感情調整」や「感覚のマスキング」などのガジェットは世界観を共有している短編「The Indifference Engine」でも使われていて、ここでも先進国側の正義の押しつけで起こるグロテスクな悲劇と妙に前向きさを感じる読後感とかがたまらないという話をしたい。もうこのままレビューいっちゃいましょうか。もういいですか、そうですか。なんですかね、こんなに長くするつもりはなかったんですけどね、手がね、勝手にね。



次回は「ハーモニー」の感想を書きますよ。



(担当 斧)



「虐殺器官」ふくめた伊藤計劃の作品はこちら。

https://order.mandarake.co.jp/order/listPage/serchKeyWord?categoryCode=11&keyword=%E4%BC%8A%E8%97%A4%E8%A8%88%E5%8A%83
  1. 2017/03/18(土) 11:00:00|
  2. 中野店斧

前回のブログで今年邦画すごかったねーって話してるのにそこにヒメアノ〜ルを入れ忘れたのが一生の不覚なのでちょっと森田くんに刺されても文句言えない




 先日散々発売延期になってた「ジ・アート・オブ・シンゴジラ」がやっっとこさ届きました。思ったより文章の量がはるかに多くて読破するのはきっと当分さきだろうなーと思いますはい。そーいうわけでとりあえず写真とかコンセプト画だけぱらぱらーっと眺めてる日々なんですがこうしているとあの時の感動が蘇ってアアアアアアーーーーーーーーーー!!!!

 自分がシンゴジラを結局6回観に行ったのにはそれなりに理由があってですね、あの冒頭の「何が起こってるか全然判んないけどもう状況が取り返しの着かないくらいに進行してる不穏な空気」とかゴジラが初めてまともに画面に映って初めてBGMが流れるシーンとか散々ゲロビームだの内閣総辞職ビームだの言われるみんな大好き放射熱線で東京壊滅するシーンとかそうして苦い思いをさせられ続けて最後の最後にやっとやっと反撃に転じて宇宙大戦争マーチが流れるシーンのカタルシスがもう大好きでアアアアアアアーーーーーーー!!!!そして予約開始されたシンゴジラのブルーレイ三枚組をアアアアアアアアーーーーーーー!!!!!(Amazonでスチールブック付きと一緒にマイケル・マン監督「ヒート」20周年記念ブルーレイを予約する音)



 というわけで年末は久しぶりに大学の友人と会って飲んで部屋に泊めたりしてました。どういうわけだ。それは僕にもわからない。密室に男2人で一晩。何も起きないはずはなく…(何も起きませんでした)。



 とりあえず久々に会って学生時代のことを話したりして思い知ったのは、学生時代って本当に楽しんでたんだなということでした。レポートに追われてたあの日々が懐かしいです。そんな気分で今回紹介するのはこれです。


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ワールドゲイズクリップス(五十嵐藍 著 全4巻 角川書店)

 

 主に高校生の少年少女たちの青春をオムニバス形式に描いた作品。いくつかのエピソード、いくつかの主人公たち。ちょっとした家出とか、文化祭の準備とか、放課後にする無駄話とか、子供時代のほんの一瞬をきりとったばらばらなお話のなかで共通しているのは、これまでとこれからの日々に対する虚無感。漠然とした諦め。空虚感。わかりますか、思春期に感じたアレです。あのむやみなアンニュイさ。あの感じです。「こんなことしててなんか意味あんのかな」っていうアレです。そして何度も何度も訴えてくるのは、意味なんかあろうがなかろうが何もかも必ず変わっていくということ。



「もうすぐ卒業。どう思う?

 最近教室に入るとさあ、進路とか将来の話とか、みんなで離ればなれになるための相談をしてるみたい。(中略)時々なんか変なむなしさみたいなものを感じてさ。もうすぐみんなバラバラ。過ぎてく。忘れてく。なくなってく。今までがなんか無意味くさいなって…」(1巻収録「ウォーキングウィズアフレンド」より)



アアアアアアアアアアアアア!!アアアアアアアアアーーーーー!!!!(言葉に出来ない感情の波にもまれて床を転げ回る)



この作品で特に好きなエピソードがあって。家庭に問題がある優等生の委員長と同じクラスの不良が一緒に家出してみる「放課後ロスト」と、まああとは2巻全部なんですけど。



放課後ロストでは、「家出したって状況は何も変わらない」という委員長に対して不良がこんなことを言います。



「最近なにしてた?今の私たちなんか一瞬だよ。クラスメイトとの賑やかな日も過ぎてく。カップルが永遠の愛を誓っても嘘になるかもしれない。悩みもいつか消えてく。明日全部なくなるかも。委員長が望んでも望まなくても嫌でも変わってくよ」(1巻収録「放課後ロスト」より)



そしてこの直後に家出を通じてちょっと仲良くなった2人はあっさり離ればなれになる。



2巻の「橙色の時間とさようなら」では高校を中退した男の子が元クラスメイトの女の子に告白してフラれる。そのときのこんなやりとり。



「どうかさ、ずっとそのままでいてください」



「…んー、無理です。きっと変わっていきます」

(2巻収録「橙色の時間とさようなら」)



アアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!

 

このさァ、作品通して流れるダウナー過ぎる空気感とか、今悩んでることとか時間が経てばきっとどうでもよくなったりするってどこかで判ってるからこその通過儀礼的な諦念とかがたまらなくてんああああああ!!

 だって実際自分が昔どんなことで悩んでたかなんておぼえてないじゃないですか。この作品の登場キャラたちも今でこそ内面的なセカイのことでグジグジ言ってるけど結局はあっさりいろんなことに順応して普通に社会とか外の世界にむかっていくんですよきっと。そういうことを読者もキャラもどこかで悟ってるから感じる「今この瞬間」に感じるセンチメンタルな気持ちなアレやそれがほんとに、ほんとにたまんないっていうか久々に読んだら刺激が強すぎて死にそうたすけて。



基本的にこの作品って登場キャラがみんな揃ってくだらない言葉あそびとか暇つぶしで何となく思いついたことをするだけなのになんだかよくわからない切迫感とかがあって。あえて傍からみてると心底どうでもいいよくわからないようなことで遊んで時間をつぶすのはそれが多分当人たちにとって本当に切実なことだから。どんなことでもいいから今一緒にいる人たちと何かを残した気にならないといつか本当に何もかも消えてしまうと思っているからなんじゃないかなあと思いました。



2巻に登場する里美とユウは、文化祭の準備中に出会って暇つぶしを通じて少し仲良くなるけど、ユウが近々転校することを告げたとたんお互いに距離をとるようになってしまうんですが、そのときのユウの台詞がね。ホントね。



「でもそういうのって、どうやったってあるもんだよね。小学校中学校過去の友達って今も全員友達?(中略)全部は持っていけなくて、ぽろぽろ落としていっちゃうんだ」



ほんとにねー、なんかねー、昔すごい仲良かったのにいつの間にか疎遠になってて、久々に会ったりしたはいいけど全然上手くいかないのって誰にでもあるじゃないですか。ていうかよくよく考えたらその人とどうやって仲良くしてたかもう全然思い出せないし、別にその人がいなくても自分の人生もその人の人生も問題なくまわるし、でも何かが欠けたっていう感覚はまちがいなくあるしでもう何これ、何の話?これ。ほんとね、そんな感じなんでね、本当にこの台詞が当時の自分に刺さっちゃって、なんか涙がとまらなくなったんですわ。お前いつも泣いてんじゃねえかって話なんですけどね、ほんと…ふううううわあああああああああああああああああああああ!!!!!!!もう駄目だだれかぼくを殺してくれ…







始終テンションが低くて諦めや漠然とした絶望ばっかりの漫画です。でも、良いことがあっても、哀しくても悩んでても、時間が経てば何もかもいつかは嫌でも変わっていって全部忘れて行って、そうして全部なくなったって、あの日あのときあなたが感じたなにもかもがあなたにとっては尊くて大切だったのだと、そういう風なわりと前向きなメッセージを伝えてくれている気がします。



「ワールドゲイズクリップス」の通販はこちら。
https://order.mandarake.co.jp/order/listPage/serchKeyWord?categoryCode=11&keyword=%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%89%E3%82%B2%E3%82%A4%E3%82%BA




(担当 斧)

  1. 2017/01/18(水) 11:00:54|
  2. 中野店斧

このまま映画の話で終わったらどうしようかと思ったらやっぱり映画の話で終わった




 今年はわりと邦画を観に行く。すごいですねえ今年は。去年もすごかったんですけどね。マッドマックスとスターウォーズでヴァルハラに逝ったりフォースに導かれたりダークサイドに堕ちたりで上が下でお前が俺でのお祭り騒ぎ。何言ってんだ僕は。

 今年はねェ、ほんとねェ、邦画がねェ…。ゴジラやら君の名はやらヒメアノ〜ルやらアイアムアヒーローやら怒りやら。ディストラクションベイビーとか葛城事件なんかもありましたね。あとは淵に立つの浅野忠信が本当に怖かった。洋画も「手紙は憶えている」とかすごいおもしろかったですけど。主にブレイキングバッドのハンクおじさんがネオナチになってたところとか。ていうかミニシアター系もチェックしはじめたらキリがないね。最近は何者と永い言い訳とこの世界の片隅にを立て続けに観に行きました。

 そんで何者の話なんですけどもね、誰しも経験がある就活あるあるですよ。予告のわりとポップな感じに惹かれて行ったらもう蓋を開けてびっくり。超リアルで生々しい人間関係と劣等感と嫉妬うずまくドロドロした暗い話が展開されてぶっちゃけすげえ胃が痛くなりながら観てたんですが、とある登場人物が終盤で肥大しまくった自意識と歪みに歪んだ承認欲求からたったの一言で解放される瞬間にもう涙がぶわーっと溢れて正直今年ベストになったし「忘れられない人生の一本」になってしまいました。そしてその直後にみた西川美和監督の「永い言い訳」が軽々と今年ベストを更新していきました。

この「永い言い訳」がヤバい。もうヤバい。何がヤバいって本当に良いものに出会ったときひとはヤバいとしか言えなくなるし嗚咽するほど号泣するわけでもなくただ自然と涙がすーっと頬を伝ってゆくのだと思い知りました。身近な人を失って、それを乗り越えようとして、あるいは忘れようとして、別の誰かと関係を築きながら哀しみをゆっくりと咀嚼していく様子が感情的になりすぎずに淡々と描かれて、それゆえに画面から溢れ出てくる優しさ。名作です。



 そんで似たような漫画がそういやあったなあと思い出した感じです。それがコレ。


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ストレッチ (アキリ著 全4巻 小学館)





  東山翔さんという成年向けロリ漫画家がいてさァ。



 いやわかるよ。いきなり何の話だって感じだよね、まあ聞けよ。

 その人が百合アンソロジー誌「つぼみ」で連載してた「prism」っていう漫画がそれはそれはもう、それはもうね、いやあもう。大変によろしいものでございましてですね。


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prism (東山翔著 全1巻 芳文社)



こいつぁとんでもねえものが生まれちまったぞと。こいつぁ大変なことになるぞと。世界がひっくり返るぞと。神の存在を感じたぞと。それくらいに百合界隈では騒がれていたという名作なんですがね。って僕が勝手に思ってるだけなんですけどね。



でもとある事情で連載が中止になってしまって。間もなく掲載誌も廃刊になって。未収録2話を残して事実上終了してしまった不遇の作品なんですね。



こいつぁとんでもないことになったぞと。こいつぁ大変なことになるぞと。いっそ世界が終わるぞと。神は死んだぞと。「prism」の打ち切りってそれくらいの大事件だったんですよね。主に僕の中で。



いやまあ最後に掲載された話が主役2人が初めて結ばれるってそれはそれでキリがよかった気がしないでもないんだけど違うそうじゃねえんだよ!畜生、俺たちはこの行き場のない悲しみをどう乗り越えれば良いんだ!



 …ってなってたときに突然「やわらかスピリッツ」でweb連載が始まったのが「ストレッチ」でございまして。ええ、そうです。絵をみたら作者アキリってお前これどっからどうみても東山某先生ェじゃねえか!しかも内容はOLと女子大生のルームシェア生活…?百合じゃねえか!!ひゃっほう!先生ェはやっぱり俺たちを見捨ててなんていなかったんだ!えーと何の話だっけ。そうだ内容紹介しなきゃ。



 はい。そんで「ストレッチ」ですけどね。上記のとおりOLの慧子と、


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どうやら医学部生らしい蘭が


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なんか東京でルームシェアしてるって話です。そんだけです。

いやそんだけじゃないんだけど。ごめん、はやく書き終えて借りてきたアメリカンヒストリーXを観なきゃいけなくて…。



なんかこの慧子と蘭は高校時代の先輩後輩の仲っぽくて、ルームシェア始める前までは疎遠になってたっぽくて、でもある出来事をきっかけにたまたま再会して、って感じのことが小出しの回想とかエピソードでちょっとずつわかってくる。そういうスパイスをはさみながら、基本的にはふたりのちょっとほっこりするやりとりとか、他愛も無い会話とか、くだらない毎日が淡々と描かれる。


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こんなんとか


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こんなんとか


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こんなんとかねー。



ふたりのやりとりのくだらなさとか身近さに、少しクスっとしながらまあ基本的には楽しく読み進められると思う。でも、そういう楽しい日常に不意に出てくる、死を連想させるような暗いイメージにぎょっとする。



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 そもそもどうしてこの2人一緒に暮らしてるんだろう、たまに出てくる不吉なイメージはなんだろう、この胸騒ぎはなんなんだろう。そう思いながら読み進めると急に、ピンとくる。断片的なイメージ。海。喪服。東北。停電。育てていた花が怪物に食べられる夢の話。



ああ、あの地震だ、と多分日本人ならみんな気付く。あの、春先の。それともうひとつ。そっか、これそういう話だったんだと、気付いた瞬間鳥肌が立ちました。



気付くと同時に、このお話の終わりも見えてきて。すなわちこのふたりはお互いに何か大切なものを喪っていて、その哀しさとか喪失感とかその他いろいろなものにある程度の決着が着いたら、たぶんこのルームシェアは終わってしまうんだろうなあと。


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僕はサンデーで連載してる「だがしかし」がすごい好きでして。


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だがしかし (コトヤマ 著 最新6巻 以下続刊 小学館)



というのも理由があってですね。アレ一見すげえくだらないシュールギャグに見えるじゃないですか。そんでその内容がほんとくだらなくて、アホかよって思いながら楽しく読んでるんですよ。これずっと続けばいいのになあって。でもギャグの合間にふっと現実に引き戻されるというか、何か終わりを予感させるシーンが挟まって。このキャラたちのこの今のやりとりが永遠に続いてほしいけど、でもその日常にはいつか終わりがくると判っているから「今」が尊いんだなっていうなんかアレです。駄目だかっこいいこと書こうとしたら全然上手くいかなかった。



 「ストレッチ」に話を戻すとですね、まあなんていうかなんだ。こういう作品、要するに「いつまでも続いてほしい日常はいつか必ず終わるということが思い知らされる作品」に出会うたびに同時に思い知らされるのが「今の日常はいつか必ず終わるけどその後も日常が続いて行く」という こと。身近な人が死んだりいなくなったりしてそれまでの毎日が終わっても、人生が続いて日常が続いてく故の残酷さと救いと優しさですよ。誰かを喪った悲しみは消えなくても、時間をかけて自分の中で気持ちに整理をつけることはできるんだよ。なんて優しさに溢れた作品なんだろうと震えました。

 なんていうか愛しい。この2人のたった一年の同居生活がただただ愛しくて愛しくてたまらない。最近は「この世界の片隅に」を観たときもおんなじようなことを思いました。


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くだらないとるに足らない日常は永遠じゃないからこそ尊くて美しい。



 こういう優しい作品に出会うと心底漫画読むの趣味でよかったなあとか感じます。

(担当 斧)



あとひとつ訂正。冒頭で長々と感想書いといてアレなんだけど今年のベストは「永い言い訳」でなくぶっちぎりで「この世界の片隅に」だからみんな観に行こうな!!



prism含めた東山翔先生の作品の通販はこちら。違うんだ、僕はロリコンじゃないんだ。ちょっと守備範囲が広いだけなんだ!!

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  1. 2016/12/03(土) 11:00:00|
  2. 中野店斧

要約/私は百合の花が好きです




あのさァ!!「聲の形」のさァ!!公式ファンブックに載ってたってきいたんだけどさァ!!



植野と!!


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佐原が!!


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くっ付くっていうはなしでさァ!!



植野(かわいい性格悪い系女子)と!!


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佐原(高身長かっこいい系女子)が!!


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一緒に住んでるって話でさァ!!



なんだよそれ・・・最強じゃん・・・え?待って?いっしょにすんでる・・・?

いっしょにすんでるって何それ・・・?え?それ同棲じゃね?

何それっていうかむしろナニしてんだって話でオイどういうことだ佐原ァァ!!(錯乱)



はあ・・・はあ・・・しまった・・・すっかり取り乱してしまいました・・・ごめん(「イコライザー」のデンゼル・ワシントン風に)。



はい。



さて、いきなり見苦しい文章で気分を害された方に向けてみんな大好き植野さんのまるで天使のような画像を貼っておきましょうね。


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あ、画像間違えた。まあいいや。



 とまあそんな感じでとても頭悪い感じに始まったスタッフ斧ブログ2回目ですね。僕はといえば最近は「綾野剛がまじであっくす(僕のあだ名)だからすぐ観に行け」と大学時代の友人に言われてちょうど観たい映画だったし行くかーとフラっと観に行った「怒り」がとっても気に入ってしまいました。あの誰かを結局信じられなかった人とそれでも最後は信じた人と信じてた人に最悪の形で裏切られた人の対比がね。もうね、「ここでエンドロール来ちゃったらどうしよう・・・」って思いながら終盤は戦々恐々としてましたよ。問題の綾野剛はのっけから妻夫木くんと濃厚な絡みを見せてたので(え?俺っぽいってそういうこと?)と思わずにはいられなかったですが、まあでも不思議と観てるうちに綾野剛の仕草とか喋り方とか完全に自分とダブって見えるっていうかもうあっくすじゃん。綾野剛はあっくすだった・・・?いやもはや僕が綾野剛なんじゃね?(うるさい)

 あと余談ですが男同士のそういうアレなら「キル・ユア・ダーリン」のダニエル・ラドグリフとデイン・デハーンのキスシーンが素敵だという話を私はしたい。ひょっとして僕はBLもイケるかもしれない・・・?



 そんな感じで今回ご紹介するのは「怒り」の話も綾野剛もダニエルもデインも全然関係ない「聲の形」の作者大今良時繋がりでこちらァアアア!!!(深夜のテンション)



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マルドゥック・スクランブル(講談社・全7巻)

原作:冲方丁 作画:大今良時




「天地明察」などの歴史小説や「シュピーゲルシリーズ」などのライトノベル、「ファフナー」などアニメ脚本でもおなじみ冲方丁先生のSF小説を、「聲の形」の大今良時先生がコミカライズしたものにして彼女の連載デビュー作です。



 舞台は戦争で技術的にも経済的にも発展を遂げたサイバーパンク風NYと言った感じの港湾都市・マルドゥックシティ。そこで身寄りのなく少女娼婦として生きていた主人公ルーン・バロットは、自分を拾って世話をしてくれたカジノディーラー・シェルに突然自動車事故に見せかけて焼き殺されかけます。



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 皮膚のほとんどを焼いて失った瀕死の彼女を救ったのは、一人の男と一匹の金色のネズミ。元軍属の科学者と軍で開発された「どんな道具や武器にでも変身できる生体兵器」のコンビ、ドクター・イースターとウフコックでした。



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 彼らは人命保護の場合に限り法的に禁止された科学技術を行使できる緊急法令・09(オー・ナイン)法案に従事する委任事件担当官でした。シェルのバックについているとある企業の犯罪行為を立証するため、以前から彼をマークしていたのです。



「なんで私なの?」



 失った皮膚の代わりに、特殊な人工皮膚を移植され、あらゆる電子機器に干渉できる能力を得たバロット。自分が殺されかけた理由を知り、シェルの犯罪の証拠を集めて事件を立証するため、イースターとウフコックに協力することを決意します。


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 一方でシェル側は、『当事者の死亡または失踪により事件が不成立』となることを狙い、次々と刺客を送り込んでくる・・・。


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 はい、僕が作家・冲方丁を知りSF好きになるきっかけになった作品です。高校生のときに表紙買いしてドハマりして原作そろえて連載も追っかけた思い出。

それから伊藤計劃と円城塔も大好きになって昨年の映画「ハーモニー」のあまりの出来に血の涙を流したんですがまあその話は今はいい。



 主人公バロットは物語開始時点では何もかも諦めていて絶望していて、「死んだ方がいい」と自分に言い聞かせてしまうほど。というのも彼女の人生ではそれまで本当にいろんなものを奪われていて、希望とか幸せとかそういうものは望むだけ無駄だと思い知らされてきたからなんですが・・・。


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その内容がまあ悲惨で、末端神経症で働けなくなった父親に処女を奪われてそれから近親相姦が日常になるわ、そのことを知って激怒した兄が父親を拳銃で撃って刑務所送りになるわ・・・。


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それから保護された施設では性的虐待が横行していて逃げ出した果てに売春宿に拾われるんですよ。そこで行為の最中にまったく反応をしないからついたあだ名が雛料理(バロット/孵ってないヒナをそのまま煮殺して食べる料理)。え?これ少年誌に掲載してたの?やっぱり俺たちの別冊マガジンはひと味違ェや。



 結局居着いた売春宿も警察の手が入ったことで潰れて、とうとう行くアテが無くなったバロットのもとに現れたのがシェルでした。


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 カジノのディーラーという立場を利用してマネー・ロンダリングに手を染めている彼は、その過程で6人の少女を殺しています。しかもそのたびに自分の記憶をデータ化して脳内から消去してるので、バロットの件に関しても同様に記憶がない。


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もっぱら事件の証拠としてその記憶データを手に入れようとする、というのが物語のキモになります。この人もすごい悪人に見えるけど大分悲惨な経験してるんですよね・・・。終盤で明らかになるトラウマ描写がまあ哀しいこと。あと大分直接的でショッキング。え?これ少年誌に載せていいの?やっぱり俺たちの別冊マガジンはひと味違ェや。



 そんなシェルがバロットの元に送り込む刺客。イースターとウフコックの元同僚であり、ウフコックの元パートナー。あるとき突然暴走し事件関係者を皆殺しにしてまわり、2人と決別したディムズデイル・ボイルドです。彼は疑似重力(フロート)によって壁や天井を歩き回り、バカでかいリボルバーをぶっ放す大男。


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ボイルドはバロット殺害のため、都市のアンダーグラウンドを根城にする殺し屋集団、バンダースナッチカンパニーを雇います。


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イカれたメンバーを紹介するぜ!



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ミディアム・ザ・フィンガーネイル!変態!


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レア・ザ・ヘア!変態!


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ミンチ・ザ・ウィンク!変態!


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フレッシュ・ザ・パイク!変態!


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ウェルダン・ザ・プッシーハンド!変態!以上だ!



はい、人体移植が趣味の畜産業者の皆さんでした。いい変態っぷりです。最高です。でも真の変態は原作の改訂版を出すにあたって全3巻分の原稿を全文書き直したり、執筆中に自分が書くキャラにリンクしすぎて半年間失踪したりした原作者・冲方丁自身であることを僕らは知っています。ありがとう先生、あなたが変人でよかった・・・。


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楽しそうで何より。



でもさァ・・・この人たちも元軍人で戦場でいろいろあったんですよ。それこそ主人公のバロット並に大事なものを奪われて、それをなんとか埋め合わせようと足掻いてる人たちなんですよ。この漫画版だと原作にはないメンバー一人一人のトラウマがフラッシュバックするシーンがあって、それがより明確になってるというか。主人公がたどるかもしれなかった可能性の一つというか。トラウマを抱えたまま誰も救ってくれる人がいなくて、そのまま怪物になってしまった人たちで、それをバロットがウフコックとともに撃退して行くのにはなんともいえない物悲しさを感じます。


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さて、こういう刺客たちと戦うにあたってバロットが次第に特別な感情を寄せて行くことになるのがウフコックです。彼はどんな道具にも変身できる万能道具存在(ユニバーサルアイテム)なんですが、体臭から相手の感情を読み取る力も持っていて。それゆえ武器としてのフォローだけでなく精神面でもバロットをサポートします。


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物語序盤、自分が生き残って幸せになれるなんて信じられないバロットはウフコックが変身した拳銃で自殺しようとします。でもその拳銃に引き金が無い。


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もう彼の優しさと人間性(?)が全部詰まった場面です。そりゃバロットも惚れますよ。ネズミと少女のラブストーリーですよ。どうですかこの萌えポイント。昨今の人外ブームを先取りしてた感じがしないですか。


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あと上記の「銃に引き金がない」というシーンがクライマックスでもう1度繰り返されるんですけど!もうね!そのときの状況とそれが持つ意味がね!!もうヤバいんですよ!!泣きましたよぼくは!!



そして物語が進行し、シェルの犯罪の証拠となる記憶データがカジノの100万ドルチップに隠されていることを知った一行は、事件に勝つためにシェルがオーナーを務めるカジノに赴きます。ルーレットやポーカー、ブラックジャックなど、大金が動くゲームに勝利し、データが納められた100万ドルチップを4枚手に入れるため。


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そして一部(主に冲方ファン)ではもはや伝説となっているカジノシーンが幕をあけます。


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5巻から始まるカジノ編において、当初「死んだ方が良い」と口にし、自殺までしようとしていた少女バロットは、やがて自分が生き残るために選択し、自分の人生に一糸報いようと尽力します。全ては殺されかけた理由をしるために。自分を助け出してくれた人たちに応えるために。これまでの人生にふりかかった悪運だの運命だのを乗り越えるために。


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そして物語は一気に終幕へと向かってゆきます。

これは、卵の中で煮殺されていた少女が、自分で殻を破って羽ばたくまでの物語です。


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私情ですがかなり好きな一作です。オススメです。





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(担当 斧)
  1. 2016/10/24(月) 10:36:56|
  2. 中野店斧

ああ、ともだちっていいな。『ルー=ガルー 忌避すべき狼』




はじめまして。
初めての社会人・一人暮らし・東京暮らしというトリプルパンチにより去る3月の新卒社員歓迎会では号泣し、ホームシックになっては泣き、そのことを先輩や同期にネタにされ、借りてきた映画のDVDを観ては泣き、漫画や小説を読んでは泣き、なんで新宿の映画館って平日の真っ昼間なのにこんな混んでんだよと文句を垂れながら観に行った「シン・ゴジラ」を観てあまりの面白さに感動して泣き、先日観に行った「君の名は。」では23歳の野郎が一人で恋愛映画を観ながら号泣するという大変見苦しい絵面が展開され、先輩には「お前いつも泣いてんな」と言われる中野店コミックスタッフ・斧です。しょうがないじゃない、いい作品だったんだから・・・。ちなみにシンゴジは5回観ました。「君の名は。」もまた観に行きます。



 そんな調子で徐々にではあるものの日々移り変わる新しい状況に次第に慣れ、そういえば学生時代の友人たちは元気かなあとツイッターやFacebookを覗いては相変わらずのバカっぷり(いい意味で)に思わずクスっと笑いを漏らしてしまう、そんなあなたにオススメしたいのがこの作品。


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『ルー=ガルー 忌避すべき狼』

京極夏彦(原作)・樋口彰彦(作画) 徳間書店(旧版) 講談社(完全版)



 書く小説のあまりの分厚さから「鈍器」「人を殺せる厚さ」と称される小説家・京極夏彦先生のSF×サスペンス×百合小説を漫画家・樋口彰彦先生がスタイリッシュにコミカライズした作品です。

 

 舞台は少なくとも2050年代以降の日本。「パイドパイパー」と呼ばれる歴史的なパンデミックにより世界人口は激減。その復興を契機にパラダイムシフトした近未来で、人々は人権保護の名のもとネットワークによる徹底した管理を受けています。端末(モニタ)が支給され、自分の行動が逐一記録される世界。パンデミック時には家畜などの食物が汚染源だったために災害が終息した後もその摂食は規制され、食卓に並ぶのは人工的に合成された合成食品。


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 そんな世界で学校(センター)に通うメインキャラである14歳の少女たち。疑問も持たずに管理教育を受ける彼女たちの世界には本来なら何の危険も無いはずでした。その周辺でバラバラ連続殺人が起きるまでは。


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 事件に否応なしに巻き込まれ、彼女たちは次第に過酷な現実をみせつけられることになります。



・ 「友情」を理解できないこどもたち

パンデミックの記憶や情報化された管理社会により、作中世界では極端な個人主義がスタンダード。コミュニケーションはネット主体で、人々は直に会って会話を行うリアルコミュニケーションやリアルコンタクトを避ける傾向にあります。その世界にあってはそもそも「友情」「友達」という概念が廃れていて、学校内でよく一緒にいる主人公達には異質なものを見るような視線がむけられます。


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 牧野葉月(まきの はづき)は内気な少女で、他人と接触したり精神が不安定になると鼻血が出てしまうという「接触型コミュニケーション障害」を持っています。興奮すると鼻血が出る。ここがポイントです(何のだ)。実は鼻血設定は原作にはない改変部分。これによってキャラクターの心の機微が判りやすくなった良改変だと思います。彼女がどういう場面で鼻血を出すか、それに対する周囲の反応はどう変わって行くかに注目すると面白いかもしれません。


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 ウイルス災害の名残で血や他者との接触が避けられる世界ですから、彼女自身も他人からは避けられがち。本人も自分の体質が大っ嫌い。でも同じクラスに血を嫌がらない神埜 歩未(こうのあゆみ)という女の子がいて、そのコのことがなんとなく気になる。


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 歩未は自身の匂いを嗅いで「獣の匂いがする」とつぶやいたり、どこか動物っぽい雰囲気の少女。ちなみに僕っ娘。

 その二人にたびたびちょっかいをかける慌ただしい性格の都築 美緒(つづき みお)は、14歳で大学のカリキュラムに進んでいる天才・・・でもバカ。ハマった「火を吹くカメが出てくる20世紀のムービー」に影響されてプラズマ砲をつくったり、警察の機密情報にハッキングしたりといろいろと危なっかしい。


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 彼女達はいつもなんとなく一緒にいて、そうでありながらなぜそうするのか、自分たちの関係は一体なんなのかが理解できないわけです。現代日本で生きる僕たちは「それって友達っていうんじゃね?」と言えるんですが、本人達にはそれがわからない。ああ、もどかしい!


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「なぜか」一緒にいることが多い3人。



 そんな日常に唐突に訪れる殺人事件。暴漢に襲われるクラスメイトの矢部 祐子(やべ ゆうこ)を救ったことをきっかけに、彼女達の関係が変わっていく。美緒の幼なじみの中国拳法少女・麗猫(レイミャオ)。


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ゴスロリ占い少女・作倉 雛子(さくら ひなこ)。


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関西弁の転校生・来生 律子(きすぎ りつこ)。


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ほとんど関わりのなかった・あるいは離れていた少女達が、理解できないはずの友情パワーで結束し、大冒険が始まります。「みんなを守らなきゃ」そんな思いに突き動かされ、巨大でリアルな世界と対峙することになります。



・ 「生きる」ということ

上記のとおり、作中では人間は合成食品を食べて生きています。それは草も動物も食べない=いきものを殺さなくなり、食物連鎖から外れたということ。そのことに対し美緒はこんなことをつぶやく。


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 常にモニタの中でネットワークに繋がり、口にするものは生き物の形をした偽物。彼女達にとっては画面越しに見る世界こそが「リアル」であり、現実の世界は嘘くさく見えてしまう。それこそどこか生きている実感が湧かなくなってしまうくらいに。


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 だからこそ殺人事件に巻き込まれ、結果として親しくしていたクラスメイトの一人が命を落としたという事実は、圧倒的なリアリティをもって葉月たちに現実を突きつけます。人はいつか必ず死ぬということ。どうにもならないことがあるということ。現実=リアルは痛くて、こわい。


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 それでもやがて、少女達は事件を終わらせるためにそんな現実=リアルに立ち向かいます。みんなを守るために、再び。今度は自分たちの命を賭けて。そして生きるか殺されるか、そういう状況に放り込まれてようやく生きていることを実感するのです。


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後半の怒濤の展開のなかで彼女達はどんどん危険な状況に踏み込んで行きますが、言うまでもなくそれは決して死のうとしている訳ではありません。ただ純粋に生きるために生きようとする、「友達」を助けようとするひたむきな行為であり、それゆえ僕は読み返すたびに心を打たれてしまうのです。



・ サスペンス×百合×少年漫画としての魅力

 この作品では少女たちの物語と平行し、シブい不潔な中年刑事・橡 兜次(くぬぎ とうじ)と潔癖性のカウンセラー・不破 静枝(ふわ しずえ)のコンビによる捜査パートが進行します。


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 正反対の性格の2人が猟奇殺人の捜査を通して最初は反発しながらも次第に認め合い、真相にたどり着く。王道です。デビッド・フィンチャー監督の「セブン」のようですね。あれは鬱だ鬱だ言われるけど最後のモーガン・フリーマンの台詞で決してバッドエンドではないということが判る良い映画だと思うんですがどうでしょう(全然関係のない脱線)。

 捜査が進むうちに事件の隠蔽・情報の改ざんが明らかになり、黒幕の存在が明かされ、裏切られ、気付けば周りは敵だらけ・・・という展開は非常にスリリング。真犯人の動機に合成食品との関係が示唆され、事件の真相と2人の過去の因縁が収束していく終盤のシーンのやるせなさはかなりクるものがあります。


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 なんというか無駄な設定がないんですよ。さすが京極夏彦先生。そして彼の分厚い小説を漫画としてさらに読みやすくブラッシュアップした樋口彰彦先生の手腕に脱帽。

 

 そして百合。


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つまりガールズラブ。


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ウーマンス!


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 はい、実はこの作品、僕を百合好きにした大変に罪深い漫画でもあるのです(どうでもいい情報)。上にも書いた理由から主人公の葉月は歩未に惹かれていて、歩未もそれを拒まない。はっきりと「好き」と伝えたわけではないし、相手が何を考えているかなんてわからない。でも互いが互いを本当に大切に思っていることは何となく察せられる。おお、このプラトニックな関係よ。



 美緒とその幼なじみの麗猫の関係もまた大変よろしいのですよ。昔は仲が良かったけど大人達の都合で疎遠になって、数年後に再会したときにそっけない態度をとるけど実は互いのことをずっと思っていて、みたいな。


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あーもう、もう!!



 事件が起きるまでの彼女たちにとって他人との繋がりとは、ネットを常に介したもの、情報ネットワークとの繋がりそのものでした。それが事件を通すことでリアルな対人関係へとシフトしていき、親密になっていく様子が繊細で丁寧に描かれます。そういう描写の積み重ねがあるからこそ、彼女たちの一人が殺されたときの喪失感や悲しみが読者にも伝わるし、ついに「敵」に反撃を開始したときのカタルシスが半端ないのです。


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仲間のために。ともだちのために。巨悪に立ち向かいアジトに乗り込んで陰謀も欺瞞も全部ぶっ壊す。なにか熱い感情に突き動かされて。まさに王道です。少年漫画です。爽快で、アツい。


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仲間のピンチに駆けつける天才バカの美緒。こんなんワクワクしないわけないじゃないですか!



・ 「狼」

 ただそんなクライマックスの少年漫画的展開のさなか、葉月たちととある少女との間に、決定的な断絶があることがわかってしまう。どうにもできない壁。そして別れ。


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 この物語は全体的に赤ずきんがモチーフになっていて、劇中には「狼」という単語が何回か登場します。タイトルも『ルー=ガルー』、つまり人狼・人食い狼。それが誰のことを指しているのかは作中で何度も、露骨なくらいに示唆されます。それでもそれがはっきりと判明するシーンは怖いと同時にとても哀しくて。


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 ああ、このコはどこか根本的なところで葉月たちとは違っていたんだ、ということがわかる場面。でも同時に葉月たちのことを本当に大切に思っていて、だこそ彼女達から離れようとするのだということも同時にわかるシーンで、これが切ない。



そしてかすかな痛みを残したまま事件は終わり、狼少女も葉月たちの前から姿を消します。

















・・・・・・が、このままでは終わりません。


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「このまんまじゃ終われねえよなぁ」



 いきなりいなくなった狼少女のことを、葉月たちは放っておいてくれません。

仲間だから。ともだちだから。壁があるならぶっ壊せば良い。君のことなんか全然怖くないし、嫌だと言っても側にいてやる。もう、こいつらマジで好き。


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そして迎える大団円。原作小説もコミック版も、最後はこの文章で締められます。



「昔、狼というけだものがいたそうだ。でも狼は絶滅した。そういうことになっている。」



 原作だと「狼」が葉月たちから離れて終わってしまうんですよね。だから心がひりひりするような、少し痛みを残す読後感。対してコミック版だと最終話でその後が描かれて、同じ文章で終わってるのに印象が180度違っていて、それがなんだかうれしくて、なんかもう、本当に好きです。いままで出会った「最終回」の中で一番好きかもしれません。俺はこの漫画が好きだ!!



 さて、ここまで読んで下さった皆様、こんな長文・駄文につき合ってくださりありがとうございました。今回のブログを書くにあたって久しぶりにこの作品を読み返したのですが、原作・コミック版問わずやっぱこれ大好きだなあと再確認しました。友達に会いたくなりますなあ。



 SF好きにも、百合好きにも、サスペンスが好きな方にも、はたまた王道なストーリーが好きな方にも。自身を持っておすすめできる、間違いなく傑作です。旧版なら前5巻、完全版なら全3巻と手頃ですし、どうでしょう。蝉の声も少なくなり、夏から次の季節に移り変わりつつある今日この頃。秋の読書用にお買い求めになられてみては?



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(担当・斧)
  1. 2016/09/10(土) 11:00:43|
  2. 中野店斧

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