岩井の本棚、SAHRAの本棚

スタッフがマンガ界のニュースとおすすめマンガを紹介します!

フルメタル・ジャケットの妊婦がずっとあなたのそばに飛ぶ




桜はもう散ってしましましたが、すごしやすい季節になってきましたね。この前、同僚の黒田さんと臼井さんと関口さんと一緒に仕事帰りにドンドンドン、ドンキー、ドンキーホーテにふらっと立ち寄ったら、どの煎餅が一番うまいのかという話になり、イチ押しのせんべいを各自買って交換し合うという、せんべいサークルが急遽発足されました。
ザ・醤油せんべいという趣の「三幸製菓 新潟仕込み」、白いところが意外とそんなに甘くない「雪の宿」、あとひとつなんだっけな。忘れました。僕がセレクトした「ふんわり名人 きなこ餅」は、臼井氏から「うまいけど、柔らかすぎる。これはせんべいではない」という講評をいただき、あえなく第1回チキチキ中野せんべい選手権で敗退しました。中野店コミックスタッフの長谷川です。

さて、せんべいとは何も関係ないですが、今回ご紹介する漫画はこちら。

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『WOMBS』全5巻 白井弓子/小学館/2011~2016年

2016年の日本SF大賞を受賞した今作。SF界隈では話題になっているのでご存知の方も多いかもしれません。タイトルの「WOMB」とは英語で「子宮」を意味する言葉で、文字通り妊婦たちがの話なんですが、そこはSF。少し、というかかなりセンス・オブ・ワンダーな「妊婦」たちの物語になっています。
あらすじとしては、地球から遠く離れた碧王星と呼ばれる惑星の第一次移民である「ファースト」は、 第二次移民の「セカンド」の襲来により、国土のほとんどを奪われていた。 今ではファーストの中の「ハスト」という一国のみがかろうじて残り、セカンドとの戦争を続けている。 この戦争では、碧王星の現地生物「ニーバス」の体組織(転送機関と呼ばれている)を子宮に移植し、 「飛ぶ力」を得た女性だけの特殊部隊「特別転送隊」が重要な戦力として戦争に参加していた。という感じです。主人公のマナ・オーガはその特殊部隊に入ってきたばかりの新米転送兵です。物語は、オーガおよび直属の上司であるアルメア軍曹、特別転送隊を中心に展開します。

なぜニーバスを子宮に宿すと空間を瞬間移動できるのかについては、ニーバスがそういう能力を持っているいるからなんですが、その瞬間移動能力の設定がまずおもしろい。さすがにどこにでも飛べるわけではないんですね。転送兵は現実空間に重ねられるようにして存在する「座標空間」という架空の空間を認識することができます。なぜ座標空間と呼ばれるかというと、座標=ポイントがところどころに存在し、そのポイント間を移動することで、転送兵は現実空間をひとっ飛びしているわけです。まあドラクエⅥで例えると、表世界と裏世界があって、裏世界の井戸なら好きなとこにに行けるみたいなものです。また、月が出ているときしか瞬間移動することはできません。1巻の書影のオーガの後ろにあるゴツゴツした白い隕石みたいなものが、この惑星の月です。この歪な形をした月も重要なファクターですね。


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今でこそ、軍の中でも最重要な部隊として扱われている転送部隊ですが、ほんの少し前までは、死刑囚がやらされるような過酷な環境でした。当時は、転送技術の研究も未熟で、転送する際に周りの空間を削り取る作用を利用した人間爆弾にするしか使いみちがなかったりしました。


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人権の無さハンパないですね。それに比べれば今では、フルメタル・ジャケット感溢れる職場ではありますが、誇りと人権という概念がある世界にまでこぎつけました。


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その後も、セカンドの代表のAIおばちゃんのセリフがいちいち煽りとして優秀で、思わず写真を撮って自分の煽り画像フォルダに保存したり、


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転送機関でしかなかったはずのニーバスを人工的に育てて、さらに強力な転送兵を作ろうとするマッド・サイエンティストがでてきたり、

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バースセンターと呼ばれる人口子宮で人間の赤ちゃんを育ているはずの場所が、とんでもない動物・ニーバスおよび人体実験の場であったり、


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追い詰められた転送部隊の部長がサラッと爆弾発言をしたあとにリアルに爆発したりと
万人が楽しめる内容になっています。


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特に最終5巻の詰め込み具合が凄まじく、ニーバスのボスとアルメア軍曹の最後の戦いや、SFと言ったらやっぱり広くて素敵な宇宙だよね作戦や、こんな後味の悪いエピローグある? 普通エピローグって全部終わって、あの時の仲間で元気なやつ死んでしまったやつ、色々いるけどあの頃はあれで楽しかったな...みたいな感傷的なやつじゃないの!? という驚きの連続です。ここまで読んで、「なんかよくわかんねーな。SFあんま興味ねーし。それよりメムメムちゃんの更新まだ?」という方も、最後まで読めば自然と何もない空間をグッと握って転送兵たちに思いを馳せること間違い無しなので、是非読んでいただきたいと思います。




『WOMBS』はこちら

その他白井弓子作品はこちらからどうぞ


(担当:長谷川)
  1. 2017/04/26(水) 10:24:42|
  2. 中野店長谷川

子どもが産める男の子と社会の規律を遵守する女の子




フレンズのみんな集まれー! わーい。やったー。君はえにもじがついたものをみるのが好きなフレンズなんだね! どこから来たの? 縄張りは? ぼくは中野ちほーのまんがのフレンズはせがわだよー。うわっ、やめて、叩かないで。僕はセルリアンじゃないよ! ひどいよー。おすすめのえともじを紹介するから、終わったらいっしょに狩りごっこしようよ!

 というわけで、今回ご紹介するフレンズは……じゃなくて漫画はこちら。


『三文未来の家庭訪問』庄司創/講談社/2013年


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 表題作の「三文未来の家庭訪問」を含め3篇の短編が収録されています。

 まず最初の短編が「辺獄にて」。養護施設で育ち、高校卒業後職を転々とし、やっと安定した職と人並みの生活を手に入れた主人公でしたが、妻に浮気をされ離婚調停が済んだ矢先に、心筋梗塞で倒れてしまいます。まさにあと少しで人生終了という狭間の時間に、別の宇宙の超高度知性体からの干渉を受けます。その宇宙人たちは、地球人に限らず条件に適合した死に際の生命体の残り数十秒の人生を体感速度として1000年に引き延ばし、生前に善行を積んだ者には天国のような環境を、悪行をおこなった者には地獄を体験させるという「人生完結センター」を運営していた…。というのが導入で、まあ要するに閻魔様をSF的に解釈するとこうなるよってことですね。その閻魔大王的な宇宙人の目的や天国と地獄のサンプル、「人生完結センター」のシステムなど、SF的な設定もおもしろく、結局主人公が体験させられる地獄が「初めての昆虫遊びルーム」という、巨大な赤ん坊が人間を昆虫のように解体する地獄というのもなかなか悪趣味でいい感じです。
 そのSF的な地獄めぐりと並行して語られる、主人公が回想するある女性(日滝さん。主人公の会社でアルバイトとして働いている)との関係がむしろ物語の主軸なのですが、個人的には日滝さんが主人公にお金を借りるシーンで「これ、日滝さん絶対詐欺師でしょ!」と思ってたらそうじゃなかったというところが一番驚きました。疑って本当に申し訳ありませんでした。主人公と日滝さんは共に親に恵まれず、心の底ではどこか他人を信用しきれず強い人間関係に踏み込めないという共通点がある似た者同士なんですね。そんな彼らが、初めて他人と深い関係を持とうとするまでの物語です。そのことが一番現れているのが、日滝さんが全体重をかけて会社のドアを開く見開き1ページです。彼女にとってそのことがどれだけ大変なことなのかが表現されていて胸に迫ります。

 2番目の短編が「三文未来の家庭訪問」です。


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 舞台は近未来。科学技術の進展によりエネルギー問題が解決され、現在以上に豊かな時代。作品に必要な部分しか詳しい説明はありませんが、社会制度もいまとはちょっと違うみたいです。画像は家庭相談員の年金が担当児童の将来の税収による出来高制になっているという説明。さらに児童の担当権を株のように売買できる制度もあります。まあざっくり言うと「なめらかな社会」的な何かですね。


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 主人公の一人、楽観的で行動力がありコミュニケーション上手なリタくん。子どもが産める男の子です。男の子なのに子どもが産めるフレンズなんだね! すっごーい!


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 なぜ男なのに子どもが産めるのかというと、ひとことで言えばそういう遺伝子操作をしたからです。35年前に発足した「WOLVS」という集団生活団体が入居者に遺伝子操作をしていて、それが発覚。人権侵害ではないかと当局の操作が入り、「WOLVS」は強制解散させられます。そういうわけでリタくんはお父さんとお母さんと一緒に団地に引っ越してきたわけです。家庭相談員のカノセさんが怪しむように、その団体の目的がよくわからないんですね。レズビアンなら人口生殖するほうが早いし、男と自称する必要もない。集団生活団体にしては異様に外社会への適応能力が高く、危険思想も特にない。公式には単なる「趣味」ということで発表されましたが、どうにも他に目的があるのではないかと。


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 もう一人の主人公というかヒロイン。「出たよ支辺!!」ことマキちゃんです。決めゼリフは「どう言われても私は社会の規律を遵守します」。わかりやすく言うと、委員長タイプの最高ランクみたいなキャラクターです。お母さんが「ルール違反を見つけたら死んでも注意する宗教みたいな団体」に所属していてそうなっています。その団体の名称は「彼方建設」。一番の目的は、その名のとおり理想の都市を作ってみんなで暮らすことなんですが、モラルの高い人を集めるという方針が行き過ぎてややカルト化しています。


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 どうやらマキちゃんのスケジュールはバブル期のエリートサラリーマン並に埋まっているみたいです。リタくんはいじめられそうになった自分を理由はどうあれ助けてくれたマキちゃんに好意を抱き、マキちゃんの自由な時間を増やすために勧誘を手伝ったり、マキちゃんのお母さんに少し休ませてあげて欲しいと頼みに行ったりします。


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 お母さん超めんどくさそう! 初めて好きな女の子の家に行ってその子のお母さんにこんな話振られたら、ちょっと「お、おう……」ってなっちゃいそうですが、そこはコミュニケーション超人のリタくん。お母さんの話を正面から受けとめつつ、自分の意見も言い放ち、だんだん打ち解けていきます。
 マキちゃんのお母さんも最初から「彼方建設」の人だったわけではないんですね。マキちゃんが生まれる前はプログラマーをやっていて、マキちゃんを生むために休職していたら、プログラマーという職自体が技術の発展によってほぼ絶滅してしまい、することがなくなって「彼方建設」にハマってしまったという経緯なわけです。お母さんにとっては「彼方建設」が唯一の拠り所だったのかもしれません。


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 そんな中、「彼方建設」倒産のニュースが入り、事態は急展開を迎えます。これ以降のストーリーは現物を御覧ください。全体的にジェンダーモノとしても新興宗教モノとしても青春モノとしても近未来SFとしてもよくできていて、ちょっとてんこ盛り過ぎるくらいですが、SF的な仕掛けが有機的に物語に結びついてよくまとまっている良作です。団地が舞台なのもポイント高いですね。
 そして何よりマキちゃんかわいい! 本編を読んだけどマキちゃんのかわいらしさがイマイチわからないという方でも巻末のおまけ4P漫画「昼休みのマキちゃん(クレーマー)」を読めば、ああなるほどそういうことねと納得していただけると思います。おまけ漫画の中でも、言ってることは前とあまり変わらない委員長っぷりに見えますが、今度は自分の意思で、自分が思ったこと、言いたいことを言っているから逆に生き生きした印象になりますね。あと天然っぽいところが、いい……。

 最後の短編「パンサラッサ連れ行く」は5億年前の古生物たち(三葉虫的なやつ)をローマ時代風に擬人化して描かれた漫画です。パンサラッサとは古典ギリシア語で「全ての海」を意味し、今の場所だと太平洋があるところにあった海のことです。本書の中では一番短いですが、信仰と世俗の関係性がコンパクトにまとまっていて読ませる作品です。神を信じれば苦しみがなくなるわけでもなく、世俗的な人間が合理性だけで恐怖から逃れられるわけでもなく、価値観の違いはあれど共に連れ立って生きていくしかないとても弱い生き物(=人間)の行末とは。途中で説明があるように古生代の生物はほぼ直系の子孫を残すことなく、現在では絶滅しています。しかし、彼らにしてみればそんなことは知りようがありません。私たち人類がこの先どうなるのかを知らないように。そんなことを思いました。

 それじゃあ、ぼくはそろそろドッタンバッタン大騒ぎジャパリパークに戻るね。また狩りごっこしようね! 約束だよ! またねー。




『三文未来の家庭訪問』はこちら
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庄司創先生の他の作品はこちらからどうぞ。
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ちなみに『白馬のお嫁さん』は妊娠する男性要素をもっと展開している作品です。「三文未来の家庭訪問」がおもしろかったという方はこちらも是非!


(担当:長谷川)
  1. 2017/03/22(水) 11:00:25|
  2. 中野店長谷川

お見舞いについて語るとき我々の語ること




あけましておめでとうございます。大晦日に同僚と飲んでいて、その足で新井薬師に初詣に行ったのですが、ものすごく寒くてこのまま外にいたら死んでしまうのではないかという環境の中、「セブンイレブンでハーゲンダッツが20円引きだから」という理由で震えながらアイスを食べ始めた黒田さんを見て、新年一発目の「いったいやつは何をやっているんだ?」という気持ちになりました。中野店の長谷川です。

 外にいるだけで凍え死にそうな元日の午前3時にアイスを食べ始めた黒田さんに対して何もできなかった僕ですが、親しい人が不治の病に冒されたとき、その人の為に何ができるのかという問いに「笑い」で答えた作品が、今回ご紹介する『NKJK』(全2巻)です。

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『NKJK』吉沢緑時/双葉社/2016年


 多くの人は医者でもないので、できることは限られています。お見舞いに行って少しでも気持ちを明るくさせようとか、何か欲しいものを買って来てあげようとか。しかしどれだけ親しくとも、これから死ぬかもしれない人間と、以前と変わらない生活をしている人間とではまったく立場が違います。次第に以前と同じようなコミュニケーションは取れなくなっていき、どちらにとっても会うことが負担になっていく。そんな、ある意味避けようがなく、誰しもが遅かれ早かれ直面するであろう重病患者への「お見舞い」。
 この作品でも、不治の病を派手に発病した富士矢さんに対して、西宝さんはお見舞いには行くものの「私は、富士矢さんの力になれているのだろうか...」と不安になります。


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 そんな西宝さんに、富士矢さんのお母さんが「娘を笑わせて欲しい」という依頼が。人体には免疫力を高める「NK(ナチュラルキラー)細胞」というものがあり、それは笑うことで活性化されるというのです。この「NK細胞」、実在する細胞なんですね。ふざけた名前だから、最初は作者のオリジナルかと思っていましたが、検索したら本当に存在する細胞でした。


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 そんなわけで、「笑い」というものに明るくないお嬢様女子高生の西宝さんが、これまたお嬢様JKの富士矢さんを笑わせるためのミッションが始まります。お笑いのジャンルを細かく調べ、エクセルにしてタブレットで持ち歩く、まじめな西宝さん。


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 まずは基本中の基本であるおでんリアクション芸から始まり、たとえツッコミ、古典落語、日常にあったおもしろい話の紙芝居などなど。成果はというと、ド天然である西宝さんが狙った方向とは違うところで富士矢さんを笑わせることに成功したり、ネタの最中に寝られたり、ただキョトンとさせたり。


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 その間にも、やたら笑いと人生について造詣の深い長期入院中の榎本りんちゃん(10歳)という師匠ができたり、高校の同級生である甲斐さんと壇さんという協力者を得て、段々とやれることのバリエーションも増えていきます。


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上の画像が師匠こと榎本りんちゃん。下の画像の黒髪が甲斐さんで、金髪が壇さん。

 しかし、それでも富士矢さんの病状は進み、またとんでもない発作を起こしてしまいます……。


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 手術室の前で10歳とは思えないフォローをする師匠。


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 もう完全に「富士矢さん死んじゃったのかな?」みたいな雰囲気しかないですが、ところがどっこい一命は取り留めます。落ち込んでいた西宝さんも、「富士矢さんは西宝さんたちの登場を楽しみにしていたし、迷惑だなんて思っていない。むしろ『もっと来い!』と思っているはず」と甲斐さんに背中を押され、渾身の不謹慎ネタ(富士矢さんの葬式動画)を作ります。その動画を見た富士矢さんの表情がこちら。


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 このコマで1巻は終わりです。このあとどうなるのか。西宝さんの次のネタは何なのか、師匠は次はどんなアドバイスをするのか、そして富士矢さんの病状は......。先月発売の2巻で完結なので、そちらでご確認ください。ひとつだけ言えることがあるとすれば、師匠は2巻でも非常にかっこいいです。

 あらすじは大体こんな感じなんですが、なんかこの漫画ちょいちょいおかしいんですよね。一番気になるのは、回想シーンや容態が急変した時の富士矢さんの吐血の量が多く、やたらリアル寄りで死体みたいなところ。


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 ギャグ漫画であることと、難病モノの感動系であること、さらにはリアルな死という、なかなか相容れない要素を組み合わせようとしているから、読んでいて何か引っかかる部分を残すのかもしれません。まあそもそも、西宝さんは当然ちょっとおかしいとして、それを当たり前のように受け入れる富士矢さんもおかしいので、土台から普通ではないんですけどね。


(担当:長谷川)


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  1. 2017/01/08(日) 11:00:08|
  2. 中野店長谷川

みんなおなじこと言ってるんだろうなー。




ちょぼ先生、『あいまいみー』アニメ3期決定おめでとうございます。中野店の長谷川です。秋なんてなかったというレベルでもうすっかり冬ですね。夏はなんとかエアコンなしで生活できたんですが、冬はマジで死ぬかもしれない危険性があるので、最近ケーズ電気でエアコンを買いました。昨日、取り付け工事があったのですが、僕の部屋には壊れて2時間遅れの時報をキャラクターボイスで知らせてくれる「けいおん!!」の壁掛け時計というものがあって、黙々と作業をするおじさんと僕との無言の空間に「12時だよ!(10時)」という平沢唯ちゃんの声が響き渡り、芭蕉が「古池や蛙飛び込む水の音」と詠んだ時の気持ちになりました。

 というわけで、今回ご紹介する作品がこちら。


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『鬼頭莫宏短編集 残暑』鬼頭莫宏/小学館/2004年

 『なるたる』や『ぼくらの』で有名な鬼頭莫宏先生の短編集です。

 交通事故で死んだ妹の幽霊とデートするデビュー作の「残暑」(1987年!)から、ある駄菓子屋をめぐる喪失と少年たちの成長の話「ポチの場所」(2004年)までの計7作品が収録されています。一貫して流れるのは、コマの余白に宿る余韻というか、独特の喪失感。それでも暗い話にはならず、爽やかささえ感じる終わり方。各短編は人が死んだり幽霊がでてくる話が多いのですが、不思議とカバー絵にある澄み渡る青空のような読後感のある作品集です。

 その中でちょっと毛色が違うのが忌野清志郎の同名曲がタイトルの「パパの歌」です。


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 まず、人も死なないし幽霊も出てこない。少年少女も登場しない。里帰り出産のために妻の実家に帰る若い夫婦の車中での会話がメインの話です。
 それだけの説明だとかなり地味な印象ですが、これが名作。伏線の回収といい、会話のうまさといい、最初の印象からラストでの意外性といい、「雨上がりの夜空に」から「パパの歌」へのズラしと反復といい、短編の構成として言うことない出来です。


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 車とギャンブルとRCサクセションの「雨上がりの夜空に」が好きで、金髪でヤンキーっぽい風体の隆(夫)。


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 それに比べ、タバコもギャンブルもせず、酒も付き合いくらいで、趣味は居間の掃除という、いかにも中年サラリーマンという風貌の松葉(妻)のお父さん。

 見た目も性格もまったく違うように見える2人ですが、松葉は最近なぜかお父さんのことを思い出してしまうし、(松葉の)母には隆がお父さんと似てると言われる。なぜなのか。いわゆるミステリー風の大どんでん返しがあるわけではありませんが、一つ前に引用した「雨上がりの夜空に」のページの伏線が見事に回収されていて、心憎いです。というか、お父さん最高にかっこいいぜ!
 あと、このページの「松葉、そういう趣味?」への「バカ?」の返しがいいですね。なんかもう、これだけでこの2人の関係性がわかるような気がして、すごくしっくりきます。というかただ単純に、僕が疑問形で「バカ?」と言われたいだけのような気もしてきましたが、それはそれで。

 会話のかけ合い自体も、一枚上手の妻と尻に敷かれてる夫、でも意外と夫に甘い妻と意外としっかり将来のことを考え始めた夫の、なんだかんだいい組み合わせだなと思わせる若い夫婦感が出ててすごくいいんですが、下の画像のようなちょっとした会話のズレというか時間差みたいな演出はもっと好きです。こういうのが、リアリティとか間とかテンポとか言われてるやつですよね、きっと。


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 特にパパになる予定も里帰り出産の予定もない僕ですが、人はこうやって少しずつパパになるのかもなー。と暖房が効いた部屋でアイスを食べながら思った秋の夜長でした。

(担当:長谷川)


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  1. 2016/11/30(水) 10:41:13|
  2. 中野店長谷川

世の中にはな―― ふたつのものしかないっ




いやー、すっかり秋ですね。秋アニメも続々と開始する中、なんといっても『12歳。~ちっちゃやなムネのトキメキ~』の2クール
目が始まりましたね。1クール目の1話を観た一部のTwitter界隈の克洋じゃない方の大友たちが、

「12歳のリアルのすべてが詰まっている」
「12歳。に比べると深夜アニメが子どもの遊びに見える」
「Aパート濃すぎる」
「作者、ブラと生理の話好きすぎない?」
「このペースだと3話くらいで妊娠してしまうのではないか」

とザワザワしたことも記憶に新しいあのアニメが帰ってきたのです。
2クール1話目は僕の大好きな蒼井結衣ちゃん回!「12歳...それは子どもでも大人でもない微妙な年齢。変わっていく体...
変わっていく心...私たちは思春期の入り口で戸惑いながら大人への階段をのぼっていく...」結衣ちゃんによる12歳特有のポエムで開幕です。(スタンディングオベーション)

本編はいきなりブラのサイズの話から始まり、キス?で終わるAパート。1クール目1話とのデジャヴ感も相まって頭がクラクラしてき
ます。新キャラのチャラ男稲葉くんの登場で結衣ちゃんの貞操があぶない!でもそこは風呂屋の息子こと結衣ちゃんの彼氏、桧山くんが完全シャットアウト!1話は最終的に桧山と結衣ちゃんがイチャイチャして終わります。

その他にも、某お兄様を彷彿とさせる感情がなさそうな完璧イケメン高雄に、そろそろお姉さんの実在が疑わしくなってきた「
お姉によると」が口癖の恋愛博士まりんちゃんなど、愉快な仲間たちによる日本で一番リアルな12歳の日常が展開されていきます。
最新の2話では、ただのチャラ男だと思っていた稲葉くんが実はいいヤツで、誠実な視線に見つめられた結衣ちゃんのハートと貞操がヤバい!的な感じになっており、ますます目が離せません。

まったく関係のない前フリが長くなり過ぎました。今回ご紹介するのはこちら。


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『竜の学校は山の上 九井諒子作品集』 九井諒子 イースト・プレス 2011年

『ダンジョン飯』が「このマンガがすごい! 2016」オトコ編1位に選ばれ、飛ぶ鳥を落とす勢いの九井諒子先生の短編集になります。ちなみに『ダンジョン飯』は中野店でも3巻の発売と同時に全巻面出しをしている人気作です。

九井先生の作品は、大別するとふたつの作風が抽出できます。ひとつは、作品世界をファンタジー世界にして、そこに現実世界のリアリティとロジックを適用する作品。『ダンジョン飯』や、『竜の学校は山の上』の中では前半の「帰郷」「魔王」「魔王城問題」なんかはそうですね。
もうひとつは、世界観は現実世界なんだけどそこにひとつ大きな嘘(ファンタジーやSF要素)を導入し、結果的に現実世界の寓話になっているという作品群です。『竜の学校は山の上』では後半の「現代神話」「進学天使」、表題作の「竜の学校は山の上」がそれに当たります。
どちらの作風にも共通するのは、描写と設定のディティールの丁寧さによって獲得されるある種のリアリティです。リアリティ。それはとっても難しいなって。まあ、ここでは「現実っぽさ。現実の手触り。あらゆるパラレルワールドの中でこの現実世界との距離感が比較的近い」くらいの感じで使っています。余計わかりにくくなりましたね。リアリティ問題は僕の手に余るので次に行きましょう。


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さて、『竜の学校は山の上』の中でも僕が一番好きな短編が、表題作の「竜の学校は山の上」です。舞台は現代。日本で唯一「竜学部」がある山奥の大学。昔は交通や運輸の手段として利用されていた竜ですが、科学技術が発達した現代ではコストがかかりすぎて利用価値のない絶滅危惧種。そんな竜を有効活用する方法をどうにかしてみつけようと日々奮闘しているのが、カノハシ部長率いる竜研究会。
だがそう簡単に見つかるはずもなく、やはり竜には利用価値はなく、ゆるやかに絶滅するに任せるしかないのか......という形でストーリーは進んでいきます。

というか、カノハシ部長かわいすぎでしょ!!!!


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なぜある種のオタクは、白衣を着ててショートカットで中性的なキャラに弱いのかと小一時間考えましたが、ただの僕の趣味嗜好だったので答えは出ませんでした。『日常』の中村先生なんかもかなり好きです。でも『日常』だとはかせも白衣キャラだから、かなり手強いですね。何の話だっけ。
そうそうカノハシ部長かわいいって話ですね。そりゃ、はかせも中村先生も超かわいいんですが、『日常』は絵柄がデフォルメされてて物理法則も歪んでるので、完全に2次元キャラとしてのかわいさなんですよね。ここでさっきのよくわかんない「リアリティ」の話に
繋がるんですが、「竜の学校は山の上」の世界は「竜」が存在するということ以外はほぼ現実世界と同じで、物理法則も歪んでいないません。比喩的に言うなら1,87次元くらいの距離感なんですね。いや冷静になれば漫画だし完全に2次元なんですけど、カノハシ部長みたいな人いそうだなーというか、都市伝説レベルでは存在したのでは?くらいの感覚なんですよね。いや、「都市伝説だったら存在してねーじゃねーか」というツッコミはわかるんですが、そうじゃねーんだよ!現実との距離感の問題なの!ここでは!!!でも別に現実に近いからいいという話ではないんですよ、はかせ超かわいいし。でもですね、各リアリティレベルによって引き出される魅力の違いみたいなものがあると思うんですよ。

はかせかわいい。でも現実にはいない。OK。
カノハシ部長かわいい。現実にはいない。だけど、はかせよりは現実世界に近いレベルのパラレルワールドにいそう。OK。
はかせのかわいさとカノハシ部長のかわいさは微妙に違う。それは単純にキャラクターの違いということ以外にも、リアリティレベル
の違いから自動的に要請されるものがあり、比喩的に言うなら......すいません、ちょっと思いつきません。

オッケーです。次行きましょう。


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というわけで、基本的には竜の有効活用を模索する形で話は進んでいきます。人を乗せて空を飛べるヒリュウで日本一周してPRする計画や、竜の卵や肉を食用にできないか、愛玩動物としてはどうか。しかしどれも実現は難しそうな感じです。これらがダメな理由も、いかにも現実で無理筋な研究をしている理系研究者という趣があって、やはりディティールが素晴らしいです。基本的には大型の竜を維持するのにコストがかかりすぎるんですね。具体的な数字が出てくるのがいいです。


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そしてかわいいだけじゃないカノハシ部長の孤独とかっこよさが語られるシーン。


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カノハシ部長とよし子(ヒリュウ)の飛行シーンを挟んで、タイトルに引用した部長のセリフの続きが語られます。


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世の中にはふたつのものしかない。それが何と何なのかは本編を読んでご確認ください。
カノハシ部長の生き方、研究とは何か、科研費とは何かが集約された一節になっています。
もちろんそのセリフによって、何かが解決したわけではないし、これからも解決されないのかもしれない。所詮はきれいごとかもしれない。しかし少なくとも、僕は背中を押された気がしましたし、カノハシ部長に一生ついていこうと思いました。


(担当:長谷川)


『竜の学校は山の上 九井諒子作品集』の通販はこちら

九井諒子先生のその他の作品はこちらからどうぞ
  1. 2016/10/21(金) 11:02:33|
  2. 中野店長谷川

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