岩井の本棚、SAHRAの本棚

スタッフがマンガ界のニュースとおすすめマンガを紹介します!

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恋も友情も家族も優しさもババーのヒステリーもなんでも描けちゃう志村貴子




僕は仕事柄というか昔から古本屋のワゴンセールとか軒先に出てる安い文庫本コーナーが大好きで、今でもとりあえずブックオフに行ったら100円コーナーをしらみつぶしにしてから、通常の価格コーナーをちょいちょい物色するのですが、なにしろ安く買えるのでつい本を買い過ぎてしまい、まだ読んでない漫画や小説がどんどん溜まっていきます。とりあえず一回は読んでみて、そんなに面白くなかったものはどんどん売るか捨てるかしたいんですが、生来のめんどくさがり屋なので、「とりあえず売るか捨てるかする本」の段ボール箱が増殖を始めて、引っ越してからまだ1回も開けていない段ボール箱と相まって、部屋が段ボールだらけでドッタンバッタン大騒ぎです。中野店の長谷川です。

今回ご紹介するのはこちら。

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『娘の家出』 全6巻 志村貴子 / 集英社 / 2014~17年

 志村貴子といえばアニメ化もされた『放浪息子』や『青い花』などの百合やBL、トランスジェンダーものの傑作もすでにあり、知る人ぞ知るというか知らなかったらヤバいレベルの漫画家でもあり、今更紹介しなくてもいいだろ感が滝のように溢れてきそうな向きもありますが、ちょうど完結したことだし、とてもおもしろいので少しだけがんばろうと思います。
 上の画像の表紙の子がまゆこで一応主人公みたいなポジションですが、この漫画はまゆこを中心とした人間関係のなかで繰り広げられるものの、基本的には各話それぞれに主人公がいて完結するオムニバス形式で作られています。そして、みんななかなか家庭が複雑。例えば、まゆこは両親が離婚し、父親の同棲相手が男性です。そのお父さんの同棲相手のトシくんに対して厳しい当たりのまゆこ。

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「ホホを染めながらうれしそうに話す太ったオカマは たいそう気持ちのわるいものでした」


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「デブ専のデブとかマジきもい。どんだけ自分好きなのって思う」

 んんー!厳しい!言葉が強い!確かにお父さんをトシくんに取られてるので、怒りが向かうのは分かるけど、さすがに言い過ぎじゃないイカ?と最初は思いましたが、そこは志村貴子。実はまゆここそがデブ専で、トシくん(父親の彼氏)を好きになったり、母親の再婚相手(おっさん)を好きになったりするので、上の恨み節も半分くらいは八つ当たりみたいなもんなんですね。それに、まゆこはそこまで考えていないかもしれませんが、実は何も恨み言を言われないほうがつらいわけです。実際にトシくんは、まゆこに対して謝るタイミングを逃し続けていました。まゆこは「ちゃんと謝ってほしい」と言ってトシくんを謝罪させたあとに「許さない」と言いますが、謝罪されること自体は拒否していません。まゆこは「謝罪」と「許し」の間に距離があることをちゃんと知っているわけです。まあこの後、お父さんも泣かせるので、誰かのためというより自分のためというか、この三人の関係のために必要なことを知っているというか、とにかくまゆこはいい子です。
 というか、この作品の中核をなすのがまゆこを含めた4人の女子高生(みんな親が離婚しているので「チーム離婚」)なのですが、みんなびっくりするくらい頭がよくて、優しくて、いい子たちです。
とりあえず人物相関図。


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 きゃなこ(大沢さん)と引きこもりゲーマー姉妹の妹(美由ちゃん)の回とか、引きこもりゲーマー妹とジャニオタの久住先生の回とか、みんないい子過ぎて泣きます。あと、まゆこの彼氏の大輝くんの友達で、大輝くんのことが大好きなゲイの羽田くんとミーナの関係とか、ミーナのフラれ方がかっこよすぎて泣きます。子どもたちメインの回だけでなく、大人たちが主人公の回もよくて、すぐ周りの女に手を出すおじさんこと加賀さんのセンチメンタル過去回や、でもやっぱり一番好きなのは2巻第10話「私がオバさんになっても」かな。これは、トシくんの妹(おばさん)に若い彼女ができたという話なんですが、今まで恋愛をろくにしてこなかったクソ真面目であらゆる席を人に譲り続けてきたおばさんに40も半ばになって春が来る。しかも相手は若くて優しい女性。全米が泣いた。もう泣いてばかりです。

 しかし志村貴子のすごさは、もう本当に何でも描けちゃうところだと思った回が2巻第8話「燃えろいい女」。
 この回の主人公は大輝くん(まゆこの彼氏)のお母さんです。大輝くんの家にまゆこが初めて招かれて帰った後に、大輝くんのお母さんはなぜかまゆこに難癖をつけて息子(大輝くんの弟)に「ババーのヒストリーはみっともねーよ」と盛大にツッコまれます。「お母さんにあんな言い方しちゃダメだろ。(中略)傷つくよ。」と兄(大輝くん)にたしなめられるも、「自分の母ちゃんが若い女たたいてんのみるのだって 子供はじゅーぶん傷つくんだよ!」とド正論で返されぐうの音もでません。お母さんだって、本当はちょっとやきもちをやく程度で済ます予定でした。でもついつい感情がダダ漏れてしまうのです。


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寝る前にこんな妄想をして、自分に「私はまだ大丈夫」と言い聞かせるお母さん。
「改めまして あなたのことが大嫌いな大輝の母です」には正直すぎて笑いました。
 思い返せば昔から「いい人」として振る舞うのがお母さんの処世術でした。


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 疲れるのかよ!じゃあやめろよ!と言うのは簡単ですが、人の生き方はそんな簡単にやめられるものでもないですよね。若い頃はうまくやれていたのに、最近は欺瞞の仮面がうまく作動しなくなった。それはなぜか。疲れちゃったから。逆に捉えれば、ここ(家庭)でなら仮面を剥ぎ取った自分をさらけ出せるとも言えます。


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 さてさて、これはいい変化なのか悪い変化なのか。なかなか難しいところですが、お母さんは自分の妄想相手に自虐ネタで返すくらいには冷静です。毎日30分や1時間も妄想してる時点でヤバいのではないかという感じもしますが、多分それがお母さんにとって大切な時間なんでしょう。段々歳を重ねるごとにふてぶてしさを獲得していくことと、それでもやっぱり「私はまだ大丈夫」と自分にいい聞かせながら涙を流す弱さ。そのギャップも素晴らしいですが、このお母さんがキャラクターとして一番優秀なところは、妄想シーンに色濃くでている部分の、ただ開き直るイヤなおばさんではなく独特の自虐的ユーモアがあるところですね。しかも、そのおもしろさを恐らくまだ現実世界では出していないのではないか。むしろ出し方がわからないのではないか。いや、もしかしたら出す気さえないのかもしれない。たった1人の楽しみ=妄想のためにのみユーモアを使う女……強そう。まあ、なんにせよ人間楽な方がいいですよね。僕もソファに寝っ転がってお昼寝ついでにアニメ観たい……。

ちなみにここ単体だと煽り画像としても優秀です。

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 皆さんも志村貴子先生の「多角的に言語化された感情のデンプシー・ロール」を浴びたくなったら是非『娘の家出』をお読みください。



『娘の家出』はこちら


その他の志村貴子作品はこちらからどうぞ


(担当:長谷川)
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  1. 2017/06/01(木) 20:51:32|
  2. 中野店長谷川

フルメタル・ジャケットの妊婦がずっとあなたのそばに飛ぶ




桜はもう散ってしましましたが、すごしやすい季節になってきましたね。この前、同僚の黒田さんと臼井さんと関口さんと一緒に仕事帰りにドンドンドン、ドンキー、ドンキーホーテにふらっと立ち寄ったら、どの煎餅が一番うまいのかという話になり、イチ押しのせんべいを各自買って交換し合うという、せんべいサークルが急遽発足されました。
ザ・醤油せんべいという趣の「三幸製菓 新潟仕込み」、白いところが意外とそんなに甘くない「雪の宿」、あとひとつなんだっけな。忘れました。僕がセレクトした「ふんわり名人 きなこ餅」は、臼井氏から「うまいけど、柔らかすぎる。これはせんべいではない」という講評をいただき、あえなく第1回チキチキ中野せんべい選手権で敗退しました。中野店コミックスタッフの長谷川です。

さて、せんべいとは何も関係ないですが、今回ご紹介する漫画はこちら。

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『WOMBS』全5巻 白井弓子/小学館/2011~2016年

2016年の日本SF大賞を受賞した今作。SF界隈では話題になっているのでご存知の方も多いかもしれません。タイトルの「WOMB」とは英語で「子宮」を意味する言葉で、文字通り妊婦たちがの話なんですが、そこはSF。少し、というかかなりセンス・オブ・ワンダーな「妊婦」たちの物語になっています。
あらすじとしては、地球から遠く離れた碧王星と呼ばれる惑星の第一次移民である「ファースト」は、 第二次移民の「セカンド」の襲来により、国土のほとんどを奪われていた。 今ではファーストの中の「ハスト」という一国のみがかろうじて残り、セカンドとの戦争を続けている。 この戦争では、碧王星の現地生物「ニーバス」の体組織(転送機関と呼ばれている)を子宮に移植し、 「飛ぶ力」を得た女性だけの特殊部隊「特別転送隊」が重要な戦力として戦争に参加していた。という感じです。主人公のマナ・オーガはその特殊部隊に入ってきたばかりの新米転送兵です。物語は、オーガおよび直属の上司であるアルメア軍曹、特別転送隊を中心に展開します。

なぜニーバスを子宮に宿すと空間を瞬間移動できるのかについては、ニーバスがそういう能力を持っているいるからなんですが、その瞬間移動能力の設定がまずおもしろい。さすがにどこにでも飛べるわけではないんですね。転送兵は現実空間に重ねられるようにして存在する「座標空間」という架空の空間を認識することができます。なぜ座標空間と呼ばれるかというと、座標=ポイントがところどころに存在し、そのポイント間を移動することで、転送兵は現実空間をひとっ飛びしているわけです。まあドラクエⅥで例えると、表世界と裏世界があって、裏世界の井戸なら好きなとこにに行けるみたいなものです。また、月が出ているときしか瞬間移動することはできません。1巻の書影のオーガの後ろにあるゴツゴツした白い隕石みたいなものが、この惑星の月です。この歪な形をした月も重要なファクターですね。


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今でこそ、軍の中でも最重要な部隊として扱われている転送部隊ですが、ほんの少し前までは、死刑囚がやらされるような過酷な環境でした。当時は、転送技術の研究も未熟で、転送する際に周りの空間を削り取る作用を利用した人間爆弾にするしか使いみちがなかったりしました。


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人権の無さハンパないですね。それに比べれば今では、フルメタル・ジャケット感溢れる職場ではありますが、誇りと人権という概念がある世界にまでこぎつけました。


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その後も、セカンドの代表のAIおばちゃんのセリフがいちいち煽りとして優秀で、思わず写真を撮って自分の煽り画像フォルダに保存したり、


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転送機関でしかなかったはずのニーバスを人工的に育てて、さらに強力な転送兵を作ろうとするマッド・サイエンティストがでてきたり、

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バースセンターと呼ばれる人口子宮で人間の赤ちゃんを育ているはずの場所が、とんでもない動物・ニーバスおよび人体実験の場であったり、


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追い詰められた転送部隊の部長がサラッと爆弾発言をしたあとにリアルに爆発したりと
万人が楽しめる内容になっています。


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特に最終5巻の詰め込み具合が凄まじく、ニーバスのボスとアルメア軍曹の最後の戦いや、SFと言ったらやっぱり広くて素敵な宇宙だよね作戦や、こんな後味の悪いエピローグある? 普通エピローグって全部終わって、あの時の仲間で元気なやつ死んでしまったやつ、色々いるけどあの頃はあれで楽しかったな...みたいな感傷的なやつじゃないの!? という驚きの連続です。ここまで読んで、「なんかよくわかんねーな。SFあんま興味ねーし。それよりメムメムちゃんの更新まだ?」という方も、最後まで読めば自然と何もない空間をグッと握って転送兵たちに思いを馳せること間違い無しなので、是非読んでいただきたいと思います。




『WOMBS』はこちら

その他白井弓子作品はこちらからどうぞ


(担当:長谷川)
  1. 2017/04/26(水) 10:24:42|
  2. 中野店長谷川

子どもが産める男の子と社会の規律を遵守する女の子




フレンズのみんな集まれー! わーい。やったー。君はえにもじがついたものをみるのが好きなフレンズなんだね! どこから来たの? 縄張りは? ぼくは中野ちほーのまんがのフレンズはせがわだよー。うわっ、やめて、叩かないで。僕はセルリアンじゃないよ! ひどいよー。おすすめのえともじを紹介するから、終わったらいっしょに狩りごっこしようよ!

 というわけで、今回ご紹介するフレンズは……じゃなくて漫画はこちら。


『三文未来の家庭訪問』庄司創/講談社/2013年


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 表題作の「三文未来の家庭訪問」を含め3篇の短編が収録されています。

 まず最初の短編が「辺獄にて」。養護施設で育ち、高校卒業後職を転々とし、やっと安定した職と人並みの生活を手に入れた主人公でしたが、妻に浮気をされ離婚調停が済んだ矢先に、心筋梗塞で倒れてしまいます。まさにあと少しで人生終了という狭間の時間に、別の宇宙の超高度知性体からの干渉を受けます。その宇宙人たちは、地球人に限らず条件に適合した死に際の生命体の残り数十秒の人生を体感速度として1000年に引き延ばし、生前に善行を積んだ者には天国のような環境を、悪行をおこなった者には地獄を体験させるという「人生完結センター」を運営していた…。というのが導入で、まあ要するに閻魔様をSF的に解釈するとこうなるよってことですね。その閻魔大王的な宇宙人の目的や天国と地獄のサンプル、「人生完結センター」のシステムなど、SF的な設定もおもしろく、結局主人公が体験させられる地獄が「初めての昆虫遊びルーム」という、巨大な赤ん坊が人間を昆虫のように解体する地獄というのもなかなか悪趣味でいい感じです。
 そのSF的な地獄めぐりと並行して語られる、主人公が回想するある女性(日滝さん。主人公の会社でアルバイトとして働いている)との関係がむしろ物語の主軸なのですが、個人的には日滝さんが主人公にお金を借りるシーンで「これ、日滝さん絶対詐欺師でしょ!」と思ってたらそうじゃなかったというところが一番驚きました。疑って本当に申し訳ありませんでした。主人公と日滝さんは共に親に恵まれず、心の底ではどこか他人を信用しきれず強い人間関係に踏み込めないという共通点がある似た者同士なんですね。そんな彼らが、初めて他人と深い関係を持とうとするまでの物語です。そのことが一番現れているのが、日滝さんが全体重をかけて会社のドアを開く見開き1ページです。彼女にとってそのことがどれだけ大変なことなのかが表現されていて胸に迫ります。

 2番目の短編が「三文未来の家庭訪問」です。


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 舞台は近未来。科学技術の進展によりエネルギー問題が解決され、現在以上に豊かな時代。作品に必要な部分しか詳しい説明はありませんが、社会制度もいまとはちょっと違うみたいです。画像は家庭相談員の年金が担当児童の将来の税収による出来高制になっているという説明。さらに児童の担当権を株のように売買できる制度もあります。まあざっくり言うと「なめらかな社会」的な何かですね。


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 主人公の一人、楽観的で行動力がありコミュニケーション上手なリタくん。子どもが産める男の子です。男の子なのに子どもが産めるフレンズなんだね! すっごーい!


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 なぜ男なのに子どもが産めるのかというと、ひとことで言えばそういう遺伝子操作をしたからです。35年前に発足した「WOLVS」という集団生活団体が入居者に遺伝子操作をしていて、それが発覚。人権侵害ではないかと当局の操作が入り、「WOLVS」は強制解散させられます。そういうわけでリタくんはお父さんとお母さんと一緒に団地に引っ越してきたわけです。家庭相談員のカノセさんが怪しむように、その団体の目的がよくわからないんですね。レズビアンなら人口生殖するほうが早いし、男と自称する必要もない。集団生活団体にしては異様に外社会への適応能力が高く、危険思想も特にない。公式には単なる「趣味」ということで発表されましたが、どうにも他に目的があるのではないかと。


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 もう一人の主人公というかヒロイン。「出たよ支辺!!」ことマキちゃんです。決めゼリフは「どう言われても私は社会の規律を遵守します」。わかりやすく言うと、委員長タイプの最高ランクみたいなキャラクターです。お母さんが「ルール違反を見つけたら死んでも注意する宗教みたいな団体」に所属していてそうなっています。その団体の名称は「彼方建設」。一番の目的は、その名のとおり理想の都市を作ってみんなで暮らすことなんですが、モラルの高い人を集めるという方針が行き過ぎてややカルト化しています。


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 どうやらマキちゃんのスケジュールはバブル期のエリートサラリーマン並に埋まっているみたいです。リタくんはいじめられそうになった自分を理由はどうあれ助けてくれたマキちゃんに好意を抱き、マキちゃんの自由な時間を増やすために勧誘を手伝ったり、マキちゃんのお母さんに少し休ませてあげて欲しいと頼みに行ったりします。


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 お母さん超めんどくさそう! 初めて好きな女の子の家に行ってその子のお母さんにこんな話振られたら、ちょっと「お、おう……」ってなっちゃいそうですが、そこはコミュニケーション超人のリタくん。お母さんの話を正面から受けとめつつ、自分の意見も言い放ち、だんだん打ち解けていきます。
 マキちゃんのお母さんも最初から「彼方建設」の人だったわけではないんですね。マキちゃんが生まれる前はプログラマーをやっていて、マキちゃんを生むために休職していたら、プログラマーという職自体が技術の発展によってほぼ絶滅してしまい、することがなくなって「彼方建設」にハマってしまったという経緯なわけです。お母さんにとっては「彼方建設」が唯一の拠り所だったのかもしれません。


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 そんな中、「彼方建設」倒産のニュースが入り、事態は急展開を迎えます。これ以降のストーリーは現物を御覧ください。全体的にジェンダーモノとしても新興宗教モノとしても青春モノとしても近未来SFとしてもよくできていて、ちょっとてんこ盛り過ぎるくらいですが、SF的な仕掛けが有機的に物語に結びついてよくまとまっている良作です。団地が舞台なのもポイント高いですね。
 そして何よりマキちゃんかわいい! 本編を読んだけどマキちゃんのかわいらしさがイマイチわからないという方でも巻末のおまけ4P漫画「昼休みのマキちゃん(クレーマー)」を読めば、ああなるほどそういうことねと納得していただけると思います。おまけ漫画の中でも、言ってることは前とあまり変わらない委員長っぷりに見えますが、今度は自分の意思で、自分が思ったこと、言いたいことを言っているから逆に生き生きした印象になりますね。あと天然っぽいところが、いい……。

 最後の短編「パンサラッサ連れ行く」は5億年前の古生物たち(三葉虫的なやつ)をローマ時代風に擬人化して描かれた漫画です。パンサラッサとは古典ギリシア語で「全ての海」を意味し、今の場所だと太平洋があるところにあった海のことです。本書の中では一番短いですが、信仰と世俗の関係性がコンパクトにまとまっていて読ませる作品です。神を信じれば苦しみがなくなるわけでもなく、世俗的な人間が合理性だけで恐怖から逃れられるわけでもなく、価値観の違いはあれど共に連れ立って生きていくしかないとても弱い生き物(=人間)の行末とは。途中で説明があるように古生代の生物はほぼ直系の子孫を残すことなく、現在では絶滅しています。しかし、彼らにしてみればそんなことは知りようがありません。私たち人類がこの先どうなるのかを知らないように。そんなことを思いました。

 それじゃあ、ぼくはそろそろドッタンバッタン大騒ぎジャパリパークに戻るね。また狩りごっこしようね! 約束だよ! またねー。




『三文未来の家庭訪問』はこちら
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庄司創先生の他の作品はこちらからどうぞ。
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ちなみに『白馬のお嫁さん』は妊娠する男性要素をもっと展開している作品です。「三文未来の家庭訪問」がおもしろかったという方はこちらも是非!


(担当:長谷川)
  1. 2017/03/22(水) 11:00:25|
  2. 中野店長谷川

お見舞いについて語るとき我々の語ること




あけましておめでとうございます。大晦日に同僚と飲んでいて、その足で新井薬師に初詣に行ったのですが、ものすごく寒くてこのまま外にいたら死んでしまうのではないかという環境の中、「セブンイレブンでハーゲンダッツが20円引きだから」という理由で震えながらアイスを食べ始めた黒田さんを見て、新年一発目の「いったいやつは何をやっているんだ?」という気持ちになりました。中野店の長谷川です。

 外にいるだけで凍え死にそうな元日の午前3時にアイスを食べ始めた黒田さんに対して何もできなかった僕ですが、親しい人が不治の病に冒されたとき、その人の為に何ができるのかという問いに「笑い」で答えた作品が、今回ご紹介する『NKJK』(全2巻)です。

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『NKJK』吉沢緑時/双葉社/2016年


 多くの人は医者でもないので、できることは限られています。お見舞いに行って少しでも気持ちを明るくさせようとか、何か欲しいものを買って来てあげようとか。しかしどれだけ親しくとも、これから死ぬかもしれない人間と、以前と変わらない生活をしている人間とではまったく立場が違います。次第に以前と同じようなコミュニケーションは取れなくなっていき、どちらにとっても会うことが負担になっていく。そんな、ある意味避けようがなく、誰しもが遅かれ早かれ直面するであろう重病患者への「お見舞い」。
 この作品でも、不治の病を派手に発病した富士矢さんに対して、西宝さんはお見舞いには行くものの「私は、富士矢さんの力になれているのだろうか...」と不安になります。


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 そんな西宝さんに、富士矢さんのお母さんが「娘を笑わせて欲しい」という依頼が。人体には免疫力を高める「NK(ナチュラルキラー)細胞」というものがあり、それは笑うことで活性化されるというのです。この「NK細胞」、実在する細胞なんですね。ふざけた名前だから、最初は作者のオリジナルかと思っていましたが、検索したら本当に存在する細胞でした。


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 そんなわけで、「笑い」というものに明るくないお嬢様女子高生の西宝さんが、これまたお嬢様JKの富士矢さんを笑わせるためのミッションが始まります。お笑いのジャンルを細かく調べ、エクセルにしてタブレットで持ち歩く、まじめな西宝さん。


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 まずは基本中の基本であるおでんリアクション芸から始まり、たとえツッコミ、古典落語、日常にあったおもしろい話の紙芝居などなど。成果はというと、ド天然である西宝さんが狙った方向とは違うところで富士矢さんを笑わせることに成功したり、ネタの最中に寝られたり、ただキョトンとさせたり。


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 その間にも、やたら笑いと人生について造詣の深い長期入院中の榎本りんちゃん(10歳)という師匠ができたり、高校の同級生である甲斐さんと壇さんという協力者を得て、段々とやれることのバリエーションも増えていきます。


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上の画像が師匠こと榎本りんちゃん。下の画像の黒髪が甲斐さんで、金髪が壇さん。

 しかし、それでも富士矢さんの病状は進み、またとんでもない発作を起こしてしまいます……。


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 手術室の前で10歳とは思えないフォローをする師匠。


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 もう完全に「富士矢さん死んじゃったのかな?」みたいな雰囲気しかないですが、ところがどっこい一命は取り留めます。落ち込んでいた西宝さんも、「富士矢さんは西宝さんたちの登場を楽しみにしていたし、迷惑だなんて思っていない。むしろ『もっと来い!』と思っているはず」と甲斐さんに背中を押され、渾身の不謹慎ネタ(富士矢さんの葬式動画)を作ります。その動画を見た富士矢さんの表情がこちら。


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 このコマで1巻は終わりです。このあとどうなるのか。西宝さんの次のネタは何なのか、師匠は次はどんなアドバイスをするのか、そして富士矢さんの病状は......。先月発売の2巻で完結なので、そちらでご確認ください。ひとつだけ言えることがあるとすれば、師匠は2巻でも非常にかっこいいです。

 あらすじは大体こんな感じなんですが、なんかこの漫画ちょいちょいおかしいんですよね。一番気になるのは、回想シーンや容態が急変した時の富士矢さんの吐血の量が多く、やたらリアル寄りで死体みたいなところ。


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 ギャグ漫画であることと、難病モノの感動系であること、さらにはリアルな死という、なかなか相容れない要素を組み合わせようとしているから、読んでいて何か引っかかる部分を残すのかもしれません。まあそもそも、西宝さんは当然ちょっとおかしいとして、それを当たり前のように受け入れる富士矢さんもおかしいので、土台から普通ではないんですけどね。


(担当:長谷川)


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吉沢緑時先生のその他の作品はこちらからどうぞ
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  1. 2017/01/08(日) 11:00:08|
  2. 中野店長谷川

みんなおなじこと言ってるんだろうなー。




ちょぼ先生、『あいまいみー』アニメ3期決定おめでとうございます。中野店の長谷川です。秋なんてなかったというレベルでもうすっかり冬ですね。夏はなんとかエアコンなしで生活できたんですが、冬はマジで死ぬかもしれない危険性があるので、最近ケーズ電気でエアコンを買いました。昨日、取り付け工事があったのですが、僕の部屋には壊れて2時間遅れの時報をキャラクターボイスで知らせてくれる「けいおん!!」の壁掛け時計というものがあって、黙々と作業をするおじさんと僕との無言の空間に「12時だよ!(10時)」という平沢唯ちゃんの声が響き渡り、芭蕉が「古池や蛙飛び込む水の音」と詠んだ時の気持ちになりました。

 というわけで、今回ご紹介する作品がこちら。


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『鬼頭莫宏短編集 残暑』鬼頭莫宏/小学館/2004年

 『なるたる』や『ぼくらの』で有名な鬼頭莫宏先生の短編集です。

 交通事故で死んだ妹の幽霊とデートするデビュー作の「残暑」(1987年!)から、ある駄菓子屋をめぐる喪失と少年たちの成長の話「ポチの場所」(2004年)までの計7作品が収録されています。一貫して流れるのは、コマの余白に宿る余韻というか、独特の喪失感。それでも暗い話にはならず、爽やかささえ感じる終わり方。各短編は人が死んだり幽霊がでてくる話が多いのですが、不思議とカバー絵にある澄み渡る青空のような読後感のある作品集です。

 その中でちょっと毛色が違うのが忌野清志郎の同名曲がタイトルの「パパの歌」です。


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 まず、人も死なないし幽霊も出てこない。少年少女も登場しない。里帰り出産のために妻の実家に帰る若い夫婦の車中での会話がメインの話です。
 それだけの説明だとかなり地味な印象ですが、これが名作。伏線の回収といい、会話のうまさといい、最初の印象からラストでの意外性といい、「雨上がりの夜空に」から「パパの歌」へのズラしと反復といい、短編の構成として言うことない出来です。


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 車とギャンブルとRCサクセションの「雨上がりの夜空に」が好きで、金髪でヤンキーっぽい風体の隆(夫)。


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 それに比べ、タバコもギャンブルもせず、酒も付き合いくらいで、趣味は居間の掃除という、いかにも中年サラリーマンという風貌の松葉(妻)のお父さん。

 見た目も性格もまったく違うように見える2人ですが、松葉は最近なぜかお父さんのことを思い出してしまうし、(松葉の)母には隆がお父さんと似てると言われる。なぜなのか。いわゆるミステリー風の大どんでん返しがあるわけではありませんが、一つ前に引用した「雨上がりの夜空に」のページの伏線が見事に回収されていて、心憎いです。というか、お父さん最高にかっこいいぜ!
 あと、このページの「松葉、そういう趣味?」への「バカ?」の返しがいいですね。なんかもう、これだけでこの2人の関係性がわかるような気がして、すごくしっくりきます。というかただ単純に、僕が疑問形で「バカ?」と言われたいだけのような気もしてきましたが、それはそれで。

 会話のかけ合い自体も、一枚上手の妻と尻に敷かれてる夫、でも意外と夫に甘い妻と意外としっかり将来のことを考え始めた夫の、なんだかんだいい組み合わせだなと思わせる若い夫婦感が出ててすごくいいんですが、下の画像のようなちょっとした会話のズレというか時間差みたいな演出はもっと好きです。こういうのが、リアリティとか間とかテンポとか言われてるやつですよね、きっと。


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 特にパパになる予定も里帰り出産の予定もない僕ですが、人はこうやって少しずつパパになるのかもなー。と暖房が効いた部屋でアイスを食べながら思った秋の夜長でした。

(担当:長谷川)


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  1. 2016/11/30(水) 10:41:13|
  2. 中野店長谷川

まんだらけ 通販

まんだらけ オークション

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