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ヤクザと百面相

去年、好評のうちにシメた「チャンピオン創刊40周年企画」。手塚先生とのエピソードを各作家さんが紹介していて興味深かったんですが、中でも吉本浩二&宮崎克コンビの「ブラックジャック創作秘話」が最高に面白かったんですな。妙に肉感的な大手塚、当時の破天荒なエピソードなどを吉本浩二という、どう考えてもスマートな手塚像を描くには不向きだが、泥臭くさせたら古今無双な書き手によって描かれたもの。(ちなみに第1話だけ、「週刊少年チャンピオン40th」に掲載されてますよ!)

これがまた、40周年などとっくに終わった今週のチャンピオンに掲載されたんです! どうも評判よかったようで、シリーズ掲載決定!とありました。うれしいですね~このタッグがまた見られるのは! 

今回の出だしはしかし

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なぜかマッチで足指の間をジジ・・・と焼く珍シーンから始まる。そいで柱には

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と妙な惹句が・・・とにかく血沸き肉躍る、てきな大仰な表現なんだなと思っていると・・・

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「水虫を焼いているこの人がボクの上司でした」と、現れたのは秋田書店黄金期を支えた伝説の名物編集長こと、壁村耐三。カベさんです! 全然「燃え上がる炎」じゃないじゃないか!水虫あぶってるだけじゃないか! この導入部、これだけで「やられた」って思いますね。今後この人の方針に従うほかないな、という諦観です。

前回もこのカベさんのムチャぶりと豪腕さは余すことなく表現されてましたが、どんな人かというと

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この「ポイと捨て・・・」のくだりで一コマつかうセンスのよさ! ヤクザというより愚連隊ですね。出版業界というインテリ社員のイメージとは対極にある人です。

手塚番になった新人は、ブラックジャックの読み切りを手塚に書いてもらうため詰めるが、既に50ページの作品に取り掛かっていてなかなか自分の番にならない。しかも勘違いしてて、まだ50ページでも折り返し地点・・・自分のスケジュールには到底間に合いそうもない、とカベさんに告げる。すると

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と不穏なことをいうカベさん。どういうことかというと・・・

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つまり「いま手塚が取り掛かってる他社の原稿をやめさせろ」という意味! どんなバカな! そんなことできるのか! あまりに横暴な命令に対してもしかし新人にはイエッサーしか返す言葉がないのはどこでも一緒。恐ろしい世界というか、過去のこととして平然と自社のキチガイ的なエピソードを公開する秋田書店もまたスゴイ!

まあここから先は実際にチャンピオンを読んでいただきたいのでネタバレは終了ですが、このシリーズは吉本浩二の抜群の描写力によって、手塚先生が神に見えなくなるレイヤーがかけられているのが見所。日本のマンガの第一人者として紳士然とあった手塚ではなく、マンガ描きは体力勝負の肉体労働者だよねといわんばかりの肉、ヒゲ、汗、アブラ、そして湯気・・・という血の通った手塚を表現。今回もすばらしい百面相と肉ダルマぶりを見せてくれます。

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暑苦しい! 実に暑苦しいが、たぶんこっちの手塚のほうが正しいのです! イメージや虚像よりもこの正しさを支持したいですね!。 僕は特に3コマ目、

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が好きですね。

思うにネット言論は、職の有無年齢の老若性別に思想がバラバラだから、最終的に皆が共通して正論としてもってるのが「社会常識」になっちゃうためか、常識から外れることには皆ひどく批判的です。でも何かを「回す」「生む」現場には著しく非常識、でも常人にはマネできないものを作ったり実現させる破壊的発想の人間がいるわけで、そういった聖なる非常識を批判するのって、たぶん麻生首相に対し「漢字読み間違えたよねキミ」とかイチローに対し「野菜食べないよねキミ」などと隅をつついて鬼の首をとったように批判するのと似てる気がしますね。
カベさんにしろ手塚先生にせよ、明かされるエピソードはことごとく破天荒で非常識ですが、しかしそれはそれできっと正しいのです。こういう非常識人の破天荒なエピソードの正しさがあるから、宮崎克原作の「松田優作物語」も同様に面白いんでしょうな。
  1. 2010/05/06(木) 23:35:55|
  2. こねた

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