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悲しげな女が踊る/4

かつてNHKの放送終了時に流れていた、宇宙から見た地球が、くるくるとまわる画像をみて「あのスピードでは1日があっという間にすぎてしまう。また人間が振り落とされるに違いない」と大真面目で苦言を新聞に投書してきた老人がいたのですが、人間が振り落とされるようなことがあるのかどうか。それは少年時代謎でした。この地球が秒速30キロ、時速にすると10万キロ以上というとてつもないスピードで地球が廻っているなんてことは子供には実感できませんからね。

さてその画像も無音だったのですが、地球がそのとてつもないスピードで廻っていても、そこに音というのは生じません。
しかし、ある難解な女性・・・女力のある女性・・・つのだ先生でいうところの「おんな」たちに言わせると、「地球の廻る音」というおは確かに聞こえる。聞こえるのだというのです。

さて「悲しげな女が踊る」シリーズ、京都編・「地球のまわる音が聞える」をご覧下さい!

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舞台は岬、岩をたたく大きな波、荒れる海。そこに浮かぶモノローグ・・・

「・・・そんな時どした うちには 地球の廻る音が聞こえてきたんどす ほんまです・・・」

例によって難解な出だしです。先方の言うがまま、口を挟む余地ナシ、こりゃ仕切られるままになるなという空気が漂いますね! 

そしてそこに皆さんおなじみのつのだフォントと、見開きいっぱいの全裸女性! 

で、さあ!来ちゃいましたよ始まっちゃいましたよ!

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ヌーディストビーチみたいに開放的におどる全裸の女性は何を意味するのか・・・

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セーラー服を着たこの少女が、初めて地球のまわる音を聞いたのは17のとき。京都から和歌山に遊びに行き、そこで、かねてから文通してた男性と落ち合う予定だった、というんです。まあ今だったらメル友ですね。リアルで会わずにメル友2年って聞くと長い気がするから不思議ですな。

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ところが、2年もかけて約束の日、やっと会う会えるというその日、なぜか会わなかったというんです。そんとき彼女がなにをしてたのかというと・・・

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「うちは
その約束の時間
灯台から1キロほど
はなれた草ムラで
一糸もまとわんと
大の字なりに寝て
地球のまわる音を
聞いてたんどす」

・・・えっ?

なんで大事な約束すっぽかして、全裸で草むらに寝っ転がる必要があるの!? 何してたかというと地球のまわる音を聞いていた、という・・・しょっぱなから来たなー難解な女性特有の思想! 女力を隠してた皮をペロッと剥いてまろび出してきましたね。
これはまあ前回でいう「道のど真ん中を歩いたことある?」ですね。

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風邪を押して約束の地に向かったのに全裸でねっころがったりしたため風邪をこじらせ、半年入院する羽目になったと。まあそんな前衛的なことしたらそうなりますわな・・・と信じそうになりますが、やはりここにラストの大どんでん返しがあるのがつのだ先生のすごいところです! 

そして会う予定だったペンフレンドの真下さんにはこんな手紙を出して謝ったそうな。

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すまんことどした
うち 地球の回る
音を聞いたんどす

手紙まで京都弁かえ!

何の説明もなく、地球のまわる音を聞いたんだよねアタシ、と詫び状にすらなってない抽象的な一文を送りつけて終了! しかも方言で! 
方言手紙、これはほんとにどうなんですかね。やる地域あったりすんだろうかしら。僕新潟県人ですが手紙で「だっけさー、そん時わたし地球のまわる音をきいてたんらてばー」などと書いたりはしませんよ。

とわれわれの疑問を置いてきぼりにして話は現代へ。あのときの少女も20年たち今はすっかり妙齢に。少年が「すまんことどした」の問題の手紙を見つけて、この婦人を問い詰める。

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なんでこんな手紙あなたがもってはりますの?

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代替わりして、真下の息子が父の遺品からこの手紙を見つけたというのですね。父は生前、機嫌のいいときに「地球のまわる音ってどんな音なんだろうなー」と息子に語っていた、と。死ぬ間際まで地球のまわる音が聞こえる・・とうわごとを。父はこの手紙の主を思い慕っていたのではないか。一目会いたかったのでは・・・ ずっとそれが心に引っかかっていた息子(名は進)。
住所を調べ東京からここまでわざわざやってきた、そこで婦人に問い正すんです、あの父を生涯悩ました抽象的な文言「地球のまわる音」ってなんやねん!って。困りきった顔をする婦人。

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でここで大事なのは、真下進の顔はつのだ先生ではなくアシスタントによるものだということ。基本的にメインキャラクターのみつのだ先生が描くという特異点から推測するに、この真下進という男は前回の「消耗しすぎるほどやりまくる男」北島ほどの器ではないんだな、と推測できてしまうのがつのだ作品の趣のひとつですね。

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外は嵐に。そこに婦人の娘、美弥子が帰ってくる。あれ?美弥子はつのだ筆だぞ!ということはこの女もおとなしそうな顔してそうとうなアレなんだな、とわかるのがつのだ作品の趣のひとつですね。
婦人と父親の文通が、その息子と娘の世代で縁を結ぶ・・・そしてこの娘も、謎の単語「地球のまわる音」が引っかかっていた・・・

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母親が地球のまわる音を聞いたという岬に出かける二人。

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同じ謎を共有できて、わたし進はんと会えてよかったどすわ・・・という美弥子。美弥子の母も進の父も、文通が終ってしまったあと、本人の意ではない相手と、家の都合で結婚せざるを得ず、そこで生まれたのが美弥子と進。お互い会ったことさえないペンフレンドの関係だったのに、一生忘れないなんてロマンチックよね昔の人は・・・そしてこの地でぼくら二人が・・・なんていってふたりでホッコリしてるところへ急報が!

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はい出た、つのだタテ線!

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なんと七重こと婦人はいきなりガス自殺! 進が問いただした、たった数時間後に! どう考えても「地球のまわる音」を誰何した真下進がやってきたからですよ! 母子家庭なのにあっという間に孤児になってしまう美弥子。真下進は不幸を呼んできた男だった!

そして遺書にもまた謎の文言「地球のまわる音」。その音を明らかにするくらいなら死んだほうがマシ! 天国で真下はんにお詫びしたい! いったいどういったことなのか地球のまわる音! 一家を壊してまで明らかにするべきなのか真下進! 

葬式も終わり、放心したようになったふたりは両親の思い出後、岬へと向かう。一応だけど、ここまでで進は空気読まずにしゃしゃり出で自殺に至らしめたことになんの謝罪もしてません。

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地球のまわる音が聞こえてきたのは、一糸まとわぬ姿でいたときに聞こえた、とだけ・・・

というがはやいか

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脱ぎだした! 

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わてはなんも恥ずかしいことおへん、再現するためにやってみようやおまへんか・・・と誘う美弥子。いやあ、なかなかのタマですねやっぱり。

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そして二人で草原に横になってみるも、音は聞こえてこない。やっぱりね、男の全裸っていうのは草原でははえないですね。
進は鈍感だから何で脱ぎだしたかもわかってないし、脱げいわれたらすなおに脱ぎ、ふにゃちんのまま寝転がる18歳とは思えない下半身低血圧ボーイですが

美弥子はやはりそれにはご不満の様子。

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草食にも程がある、若い小鹿をじいっと見ていたかと思うと、業を煮やした美弥子はこういうのです。

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その気にさせるために夜誰もいない岬にさそって、その気にさせるために一糸纏わぬ姿で再現しよう、といったのに手ェひとつ出してこないバカ進。鈍感ですね。女性にここまで言わすなんてダメな男ネ、とはここまでは美弥子に同情していたんですが、次のコマ。

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「犯して!」

「ちょっと休んでかない」どころではない超直接的口説き文句。男だって「やらせろ」くらいはいっても「犯させろ!」とはいわんよ。

やっぱりつのだセンスのある女性は違う! いくつになっても下っ腹にはくすんだ女の性のゆらぎってものがあるものやで・・・という売春婦のババ、立ったまま抱き合ってたら彼のアレがいつのまにか入っちゃってたのよね、という玲子、そして「地球のまわる音を聞くには全裸にならんと」などといって男を誘惑、「犯して!」と叫ぶ美弥子・・・いやいや、花札で言うなら手札でもう三光ですよ。あいてが何そろってても、これでまず負けはない手札。

そして美弥子は、じつはあたし「地球のまわる音」の正体知ってるの・・・と暴露。うち、昔の新聞調べて分かったンどす・・・と。それは・・・

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まあね、それさえ事前に進むが知らされてたら進の父親こんなに悩まずにすんだわけだし、美弥子の母も自殺しなくてすんだわけですからな、もっとはやく知ってたらと思うんですよ、で、何なんですかその音って・・・と前のめりになるわれわれを見て、本の向こうのつのだ先生は「そんなに知りたいのかい?」とニヤっと笑ったに違いありません!

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ぎゃーっ!

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・・・まあ要するに、約束の地に向かう最中に男数人がかりでレイプされてしまった、と。それでこれではとても真下はんには合わす顔がない!と呆然として横たわっていたときに聞こえたのが「地球のまわる音」=つまり絶望の音、だった、と・・・。真下の父親や美弥子の母が死の直前になって地球のまわる音が聞こえたのも当然。絶望の音なんだもの・・・という怖いオチ。ああーっ、もう聞きたくない!聞きたくありませーん!! スカッともしないです。またほうれい線の数が増えた気がする。つくづく顔面の美容によくないシリーズです、「おんなシリーズ」は!! 

僕らは絶望の中にいるんじゃない!僕たちはここで希望を生むんだ、僕と美弥子さんは運命で結ばれているんだ!結婚しよう! と言い出す進。

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僕は犯さない! 結ばれるんだ! と優等生的発言をする進。ちがうよ! 美弥子はぐちゃぐちゃに犯されたいドMなんだもん! ボクサー北島だったらとっくに入れてますよ。

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最後は結ばれて終る二人。希望に満ちた二人の交合、地球のまわる音は、進には聞こえなかったという・・・という終わりです。なかなかキレイにまとめましたが、・・・つのだ先生の本領はこっからです! さて、はじめに戻って、地球のまわる音、という単語のところを「あなた輪姦されたあとどんな心境でしたか」と言い換えて、もういっかい読み直してください!

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1つぶで2回鬱になるとはこのことです!なにもかもあーあ、としかいいようがない暗黒の展開。アソビに遊んで得たものは、一番下までだれもたどり着けないし光も届かないような真っ暗な深い穴。ドラゴンヘッドのラストに出てきた富士山の噴火口のような代物。まだまだつのだ先生の本気を僕らは知れてない気すらします。

隔週とか週刊スパンで、しかもたった22ページでこんな話をまとめて来て、毎回レベルが落ちずに描いてきていたというのはすごいと思うんですよ。手塚先生が「おんなシリーズが君の代表作」、といったのはあながち間違ってないのかもです。

しかしまだ、もう花札で言う20点札が3枚出てきたのに。まだまだあとすうまいすごい手札が残っていたりするのが「悲しげな女が踊る」のすんごいところ! 70年代百合事情、フラメンコ、お父さんだーいすき、まーだまだ紹介してないアレレレな女子がまだ数人残ってる! 五光どころじゃないよ! 次回紹介をお待ちください!



で、さて本題です! 「悲しげな女が踊る」も紹介している拙著「マンガけもの道」(扶桑社/1,470円)、まだまだ全国書店とまんだらけ各店で絶賛発売中です! 

  1. 2010/10/16(土) 00:05:32|
  2. つのだじろう

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