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岩井の本棚、SAHRAの本棚

スタッフがマンガ界のニュースとおすすめマンガを紹介します!

直された2コマ

今週は土曜日にジャンプ・スピリッツ・ヤンマガと3誌出て、いずれも合併号でもう来年まで本は出ません! この時期はまあ仕方ないんですけれど、週刊誌でマンガ追う派としてはなんかさびしいですねえ。
とくに今はヤンマガが面白くて、「ヤンキー塾に行く」が自分的には最高に楽しみ。
今年は個人的なコミックのベスト10とかの作品を選ぶ脳内企画もなんでか起きなかったんですが、きちんと組み立てて考えてみていけば、たぶん2位か3位には入ってくるんじゃないかと。そういう出来でした。90年代ヤンマガを10代に味わってきた作家層が「悪の華」「R-中学生」そして「ヤンキー塾へ行く」といった影響を感じさせる作品を生み出してて、その全てに僕はモロはまりしてしまったんですよ。

べつにヤンマガが自分のマンガ的な青春の全てであったわけではありません。その年代、中学生から高校生の頃は青少年が読むべき週刊誌は一通り読んでたわけで、でもヤンマガは僕にとってはひときわ特別な存在だったんだなと、今になってわかったというだけの話しかもしれない。


で、もうひとつの大事な存在だったのがスピリッツ。90年代スピリッツといえば、「東京ラブストーリー」的な、バブルの空気にのっかったいくつもの作品たちとともに、「美味しんぼ」に「ツルモク独身寮」、山本直樹に澤井健、「サルまん」相原コージから「伝染るんです。」の吉田戦車の新しい笑いに、石坂啓「夢見るトマト」は初めて知る生身のホモの描写だったし、岡野玲子「両国花錦闘士」のワケのわからなさ、そして浦沢直樹と江川達也の大ブレイクです。それがすべて80年代後半から90年代のスピリッツで起きたわけです。惹かれないわけがない。

その80年代後半から90年代のスピリッツを牽引してきたのが、まちがいなく浦沢直樹。「YAWARA!」が、そのあとを継ぐ「HAPPY!」が、それと同時に兄弟誌ビッグコミックオリジナルで「MASTERキートン」「MONSTER」で常に人気を得てきたわけです。スピリッツを読む青少年には娯楽に徹した作品たちを、ビッグコミック系を読む読者には知的好奇心を供給して別の顔を見せていたのも、作家としてこれだけ人気を得続けた(飽きられなかった)理由のひとつでしょうか。同時期人気連載作家で、かつ多作であった江川達也があれだけ得ていた人気を、いつの間にか失い削られていったのとは対照的ではあります。
僕にとっては最初に意識したのは「パイナップルARMY」のヒトとしてなんですよね。恥ずかしながら、ジェド豪士とかコーツ少佐を模写したりしましたよ、ええ。いや、でも改めていうとこんなに恥ずかしいことはないです。冷や汗でますね。

で、その大出世作「YAWARA!」ですが、今度完全版がでる!という話になってます。
いや、古本屋的に言えば、文庫版は出てるんだけど、でもその文庫版の表紙が、なんか本人が書いてないリアルタッチなイラストで、正直時代を伴ってないカンジがするってのも多分にはあるかもしれませんが。

で、今週のスピリッツに、その宣伝をかねて第1話だけ載ってると。
でもね、1986年開始の作品ですよ。27年前の作品ですから、ペンタブレットどころかPC処理だってだーれもしておらず、それどころかみんな定規の下にマッチ棒しいて線引いたり、かぶらペンで線引いたり、カラス口で枠線引いたりしてた時代です。今の作品に混ざってたら、フツウはちょっと厳しいことになるハズなんですが、でも浦沢タッチだからか、妙におさまりが良かったのも事実です。

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ほら。たしかに柔ちゃんの絵はちょっと古い印象がありますが、全体としてはべつに違和感はないというか。

でも、そんななか、読んでてちょっとだけ違和感があるコマがありました。そしてその違和感が本当かどうかを確認すべくしらべたところ、この2コマが修正されていました。連載当時版と、今回のものです。

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なるほどこうしてみると、ぼくらが思ってる近年の浦沢さんの絵の特徴のひとつって、口の中の表現だったなんて気がつかなかったですね。
でもこの2コマをどうしても浦沢さんが直さないと気がすまなかったのはなんでなんだろう。全編通じて修正されているのがこの2コマだけなんです。この2コマだけが今の絵だから違和感があって、それ以外は古い絵なんです。

完全版というのは、絵自体も当時の雰囲気を全て封じ込め、雑誌のときの完全収録を志し、連載時の空気感含めて読者に当時の記憶を思い起こさせるものが正しいのか。
それとも作家本人の「今の絵で描きたい」という欲求をある程度は満たすことも入れ、読者の空気間は横においておくのが正しいのか。難しい問題ですよね。
だって、今のリファインされた絵で見たいよな、ってマンガ読みなら必ず口にする問題じゃないですか。クローズ完全版とか、多分みんなそう思ったよ。いまのワーストの絵で書き直してくれたらな・・・って。でも、大著であるクローズを全部書き直すことは不可能ですよ。だとすると雑誌収録のときの完全収録するのが完全版の使命だと思うんですよね。

ただ、今回のばあいは雑誌収録時のカラーは完全収録するとしても、絵の一部がいまの絵になってると。完全収録というのともちょっと違うものなのかもしれません。この2コマ以外は当時の絵だから、やっぱり良くも悪くも違和感がある。作る側が完全版というのがどういう意味合い・枠組みを考えてのものなのかが、また異なってきているのかもしれません。基本的に当時収録のものを第一で遵守するけれど、絵が一部書き換えられている完全版、というのもよく考えたらヘンですしね。

もしかすると、雑誌に掲載するこの1話だけ、浦沢さんがこの2コマを書き換えたというのもなくはない。宣伝ページには「雑誌掲載時カラー完全再現&カバー描きおろし」しか書いてないからわからないんですよ。12月27日発売とありますが、どれくらいの描きかえがあるのか、それともないのかを調べてみたい気になりますね。



というわけで久しぶりの更新でした。
2004年くらいから「岩井の本棚」を書いてて、この数年はぜんぜん更新してませんが、それでも日々見てくれている方があとを絶たず、ありがたく思ってます。いまだにブラックカレーで検索してくるとか、「真現代猟奇伝 ZIP」で検索してくるヒトとか(zipはありません!)がいるというのもなんだか不思議な感じですな。
まあ、よろっと(新潟弁)更新もできたらなと思っていますが・・・。14年はすこーしだけご期待ください。
  1. 2013/12/21(土) 23:34:31|
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