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友人の挫折は慈愛をこめて、でも赤裸々に  つげ義春「ある無名作家」





自分は赤裸々なエッセイ漫画家が好きです。
身辺雑記ものも良いですが、自分の中の喜怒哀楽を開いて見せてくれる
タイプが好みです。人間とは何か、自分とは何か、生きてゆく道筋を探す・・
と考えさせられる作品群にたまらなく惹かれます。
私の場合は深く人生について考えるというよりも、スキャンダラスな芸能週刊誌
をめくるのと同じで下世話なネタを探しているふうでもあります。

エッセイ漫画、漫画家の漫画のルーツであるつげ義春先生を紹介します。
つげ作品は「ねじ式」をはじめてする摩訶不思議な話(夢もの)と、
温泉街などへフラリと旅に出て、その土地の人との出会いの
一喜一憂を描いた話(旅もの)の二つに分類されることが多いのですが、
今回は漫画家の漫画のルーツな作品の「ある無名作家」(つげ義春)を紹介します。


            160123-①


「ある無名作家」
つげ先生は有名になった後に水木しげる先生のアシスタントをしていました。
その頃をモチーフにしたと思われる1984年の短編です。


            160123-②


漫画家のアシスタント仲間が自己の芸術を追いかけるべく、文学の世界に飛び込む。
やがてその仲間は落ちぶれていき、生活は乱れ、ヒモに行き着く。


            160123-③


同棲する女性の連れ子をいじめ、昼間から酒をくらい、毎日ごろごろ。


            160123-④


数年たって、女に出て行かれ、アシスタント仲間の男は心を入れ替え、
血のつながりのない少年と二人っきりで再出発する話。


            160123-⑤


読者に苦痛を強いる作品といえるかもしれません。
漫画なんだし、休んでいるときくらい緊張から
解放されていたいものです。何も考えずにスカッと笑いたい。

ですが、この苦痛がワイドショーの凄惨な事件と接するのとは違う感触です。
つげ先生を思わせる主人公の目線から描かれているので堕落する男を客観視できることと
男が完全な悪人とは描かれておらず、共感できる部分も用意されている
のが要因かもしれないです。

また、中年にさしかかってみて読み返してみると、この物語の男の挫折は若い頃と違った感想を抱きます。
つげ義春先生の小学館から出された「紅い花」の糸井重里氏の解説の中にある、
「おまえが思っているほど、おまえはたいしたやつじゃない」の一節を、
身にしみて思い返してみたり。

世界は不透明であり不確定でパラレルワールドであるならば、
つげ義春先生の新作が読める世界を想像することも許されるでしょう。
実弟で4歳年下のつげ忠男先生は2015年に新刊「成り行き」を出されてサイン会を行い、
2016年の本年には同作の実写化も決まっていることをみると、お兄さんのも読みたい!と
飢餓感がつのります。


(担当:南)



「ある無名作家」収録のつげ作品は表紙をクリックして下さい。

160123-⑥


160123-⑦


  1. 2016/01/23(土) 11:00:29|
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