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桜玉吉の3・11以前と以降





うめだ店の吉野です。
今回は僕が子供時代からリスペクトしている桜玉吉(別名義:チャーリー野沢)について少々。

今でも知ってる人は知っていて、知らない人は全く知らない漫画家・桜玉吉。
僕は子供時代はテレビゲームが好きで、好きなら通るゲーム雑誌「ファミコン通信(現:ファミ通)」で
その名を知ることになります。
それがテレビゲームのパロディをメインにした漫画
「しあわせのかたち」
なのであります。
おまえ・コイツ・べるのの例の3人組を筆頭に、オリジナルキャラとゲームキャラ(改変あり)
を隔週4ページを使って自由な切り口で子供時代の僕達を楽しませてくれました。

…が

時が立つにつれて子供ウケするゲーム漫画は影を潜め、代わりに主役に踊り出たのが
桜玉吉本人なのでした。

「しあわせのかたち」4巻以降から自身の日常を切り売りする漫画を描くようになった
桜玉吉は「しあわせのそねみ」や「ラブラブルート21(なんと2014年に映画化!!)といった
作品内代表作を生み出しました。
特に「しあわせのそねみ」はその後の作風に多大な影響を及ぼし、後作品の
「防衛漫玉日記」
「幽玄漫玉日記」
「御緩漫玉日記」
に受け継がれていくことになります。

ですが作品を全部読まれている方はご存じかと思いますが、桜玉吉作品の積み重ねは
自身を晒した代償による鬱との共存を描いた軌跡でもあるわけで。
それ故休筆期間も多く、それは作品を積み重ねるごとに長くなってしまったのです。
「御緩漫玉日記」終了後は約5年に渡って長期休載、その間はファミ通でひっそり連載している
「読もう!コミックビーム4コマ」のみで読者は生存を確認する日々が続きました。

そんな桜玉吉がひきこもり状態から復活へのきっかけになった出来事が起こります。

3・11です。

前置きが長くなりましたが、今回メインで紹介したい作品がこちら。


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「漫喫漫玉日記 四コマ便」
メインの収録は「読もう!!コミックビーム4コマ」4年分になりますが、
この本には復活の軌跡がわかる桜玉吉本人のインタビューが盟友・○村編集長との
対談形式で4部に渡り掲載されており、僕としてはこの作品、一通りインタビューも含めて
読んだ後にもう1度4コマの部分を1から読むと、桜玉吉の精神状態や環境が回を追うごとに
変化していく様が読み取れてネタとプラスで面白いです。

3・11以前の桜玉吉はインタビューにも記載されていますが「御緩漫玉日記」以降から
長期に渡って続く鬱の極地時代。
作中にもふいにその痛々しい姿が散見されます。


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最早、4コマにすらなってない四面楚歌。
当時の心境を直球で表現しているとも言える。

作中だと画の印象やネタと相成って
「そんなにヤバイ状態なの?」
「なんでヤバイ状態なのにネタが面白いの?」
と思わず勘ぐってしまうのですが、インタビューで以下の述懐があります。
以下、抜粋。

玉吉:どんなシリアスな状況になっても、俺はオッチョコチョイってことがわかって、
   そこからUターンして戻ってこれた。
○村:横で見ててそれはわかったよ。どんどん内向していって、ほとんど日常生活破綻
   してるのに、アホな漫画描けちゃうんだからな。
   だってさあ、ほとんど外出ないわけじゃん。
玉吉:うん。
○村:そんでも、さすがにタマ~~~に外に出たら、妙な事が起こって、ネタになる状態
   になっちゃうのよな。
玉吉:そうなんだよ! マヌケなタイミングでマヌケな事が起こる。
   オカルトとかそんなんじゃなくって、何なんだろう?
○村:まあ、俺も人の事、全然言えねえんだけどさあ。
   何なんだろう?
玉吉:そういう星の下に産まれたとしか言いようがないね。
○村:情けねえけどなあ。
玉吉:情けないけど、人の本質じゃない? それって。
○村:まあな。
玉吉:そのことに気づいて、なんとか戻ってこれたんだよ。
○村:原点回帰ってヤツだな。

達観度ハンパない…。
40歳にも満たない僕にはまだ辿り着けない境地でしょうか。
また、鬱の極地から戻れたのは自覚があって自身を客観視できていたからとのことも
インタビューには綴られていました。

そして、あの日を迎えることになります。
以下の作品は3・11以降にあたるものです。


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作中外に出ている、また人と対話している場面が徐々に増えてきます。
インタビューによると、3・11以降外に出るようになったのだそうです。

…なぜ?

一般的に考えると、より絶望感に襲われて、よりひどい症状に向かってしまうのでは?
以下、抜粋。

○村:普通さあ、地震やら放射能やらって話になって、外出するのはどうよ?
   って状態になって、外うろつき始めるってのは、どんだけ天邪鬼なのよ?
   なんでそーなんの?
玉吉:わからねえよ!
   ただ……震災後、原発事故で放射能が漂い始めた時あたりに、NHK観ててさ、
   電波調整用にかわいい子犬の映像が流れて、その後、日本の四季がただ流されててさあ、
   綺麗な自然、山、川、花、樹木……それで涙が止まらなくなっちゃった。
○村:あ、俺も似たようなことあったなあ。
玉吉:なんで泣いちゃったかってのを、具体的に言うとね、美しい日本の風土の中でさ、
   親子が散歩してるわけ、そこで子供が綺麗な落ち葉を拾おうとすると母親が
   「やめなさい! それ放射能ついてるから!」なんて情景を想像したら
   涙が止まらなくなっちゃってさあ。
○村:うん。
   そんで俺らも、ちょうどそういった花鳥風月、四季の移り変わりみてえなモンが、
   ええなあって思えるようなトシになっちゃったから、余計に敏感に感じちゃった
   のかもしれん。
玉吉:そういう要素も相まって、なんであんな事態を、食い止められなかったのかという
   自責の念も湧いちゃって……。
○村:まあ……なあ。

この後のインタビューでも述懐していますが、元々桜玉吉は原発関係には昔から
興味があったのだそう。
ただ、理屈だけでは説明しきれない何かが3・11をきっかけに桜玉吉の心を動かした
のではないかと思います。

それから徐々に復活の道を歩む桜玉吉は、仕事場の拠点を鬱により崩壊寸前の自室から、
タイトルにも含まれている漫画喫茶に移し、1年以上に渡って生活まですることになるのです。


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仕事場と化した漫画喫茶の一室での風景。

3・11以降そして「御緩漫玉日記」以降久々発売の4コマではなく短編漫画集がこちら。


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「漫喫漫玉日記 深夜便」
特に震災当日の桜玉吉の様子を綴った「3・11金曜日」は必見!!
漫喫生活開始のきっかけの話でもあります。


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相変わらず桜玉吉が描く女の子はかわいい。
だがそんな事言ってられない事態が襲いかかる!!

最近はというと、生活拠点を伊豆の別荘に移した桜玉吉。
今何かと出てくるセンテンススプリング(週刊文春)で「日々我人間」も連載中。
単行本化が楽しみではありますが、どうか体と心には気をつけてください。
気長に待ってます。

担当:うめだ店 吉野


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「漫喫漫玉日記 四コマ便」

「漫喫漫玉日記 深夜便」

「桜玉吉 全作品」

「マリオの大冒険(チャーリー野沢名義)」


(うめだ店/吉野)
  1. 2016/04/19(火) 10:56:18|
  2. うめだ店吉野

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