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「プロになるっていうのは、一生将棋を指し続けなきゃならないってこと」




「たどり着きたい場所を持ってしまった人間というのは、ここまで突き詰めないといけないのか」
…というのは羽海野チカ先生の「三月のライオン」からですが、同じくプロ将棋の世界に視点を当てた作品を今回は紹介したいと思います。福岡店の衛藤です。


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こちらは「東京心中」シリーズでBL作家としても人気なトウテムポール先生の初の青年誌(ヒバナ/小学館)での連載作品です。もともとは2007年に「グッドバイ」というタイトルでアフタヌーン秋審査員特別賞を受賞したトウテムポール先生ですから、青年誌に来るのを心待ちにしていた読者も多いのでは?

さて、「東京心中」ではTV業界を舞台としておりましたが、「或るアホウの一生」では奨励会に通う4人が主人公。先述した「三月のライオン」では、天才棋士と呼ばれた少年の苦悩や成長を描く作品ですが、こちらは「1期のうちプロになれるのは2人だけ。もっと言っちゃえばプロになれなかった負けっぱなし37人のうちの4人」という主人公の1人である17歳の高以良 瞬の言葉通り、未だプロ棋士ではない、つまり凡人に近い4人。そんな高校生男子が気持ちを高めるため…と歌舞伎のような化粧をしてきたりピアスをあけたりと、情熱が若干空回りしつつ「勝ちたい」気持ちで迷走する17歳がトウテムポール先生らしいコメディタッチで描かれています。


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世の中には何かしらのプロがたくさんいますけど、それはつまりプロを目指す「プロ未満」の人口がそれ以上に多いということ。主人公の高以良くんもこの位置で、常に将棋のことを考えていて、高校の同級生、いわゆる「ふつー」の生活態度とまったく違う。しかしハードルも合格ラインもどうやったらなれるかすらわからないのがプロという世界。がむしゃらにやるだけじゃ意味がない、しかも相手のミスを見て見ぬふりするやつ、ほとんど偶然プロになったやつ、…実力だけあればいいわけじゃない!?「強い」ってなに!?プロになるって何!?…と、地団駄ふみつつ手探りで努力を続けているのは、報われるかどうかもわからないけど「一生将棋を指し続ける」ため。


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1巻ラスト付近で語られるこの魂の叫びとでもいうセリフは、まさしく自分を表現せずにはいられない星のもとに生まれてしまったすべての表現者・ファイターの心に響くもの。うーん、わかるよ高以良くん。決して天才ではない自分という存在を自分一人の中に押し込めておけない世間知らずの阿呆共が、この世にはたくさんいるんですよねえ。



(福岡店/衛藤)
  1. 2016/06/09(木) 10:59:06|
  2. 福岡店衛藤

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