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石田の漫画で主に泣いてます 最終回「主に泣いたランキングベスト10」




てけり!り!(ラブクラフトからではなく、栞と紙魚子からの引用)
こんにちは、中野店少年コミック担当の石田です。

ちょっと自分で古本屋をやってみよう、等と思い立ち、会社を辞めることとなったため、最終回となりました。なので、普段はへっ、少年漫画なんか読むかよ!新刊?ブックオフに並んでからが勝負やんけ!などとひねたことを言っていますが、少年コミック担当(比較的新しめな少年・青年・成年漫画やラノベ等)なので、今年に入ってからの新刊(きちんと新刊で買ったものです。中古品を扱う仕事とはいえ、プライベートでは作家さんにお金はちゃんと払いたいのです)の中でジーンとなったやつを振り返ってみようかと思います。
ランキング、と書きましたが、順不同で。また、ものによってはうちの通販サイト上に上がっていないものも多数あるため、商品へのリンク、ございません。そういやこんなんもあったよなぁ、くらいに眺めて頂ければ幸い。

●天原 / 貞操逆転世界


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『ワンパンマン』を初めとして、大手出版社のネットレーベルへ多数の作家を輩出することとなった、WEBコミック版2ch的サイト「新都社」の人気作品の一つ『平穏世代の韋駄天達』の作者・天原さんによる、奇想エロ。
「もしも男女の貞操観念が逆転した世界になったら」。
つまり、女性がおおっぴらに「あーやりてー」等とのたまい、ラッキースケベを常に心待ちにしており、男性がそんな女性に対してゲンナリする、みたいな。
大発明でした。エロい。
主人公が3000円で体を売る、となると狂喜する女学生。「とんだ男だぜ」と飛びついて来るヤンキー女子。
お前は体の何処かにローションでも仕込んでたんかと突っ込みたくなる汁汁しい画面、ぼにょぼにょとニクニクしい「恵体」表現などでエロ漫画表現が平板化していく中、こりゃー発想の勝利だな、と感動しました。

●福島聡 / ローカルワンダーランド 1


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同時発売の2巻で完結する、SF・ファンタジー・人間ドラマ、でもどこかに超然とした優しさがある、福島聡短編集。収録作の半分以上が「これはアタリや…!」と涎を垂らして打ち震える名短編集だったのですが、特に「ローカルワンダーランド」「深作慧」が涎だけでない様々な体液が漏れいでてしまったので、後者を軽くご紹介。


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何の取り柄も無い小学生・雨宮の書いた絵を「いいね」と評価してくれたのは深作慧だけだった。何十年か経ち、雨宮はおっさんになった。同窓会であった深作慧は、まだ結婚しておらず、雨宮は「間に合った」と思った。…もう、雨宮には妻も子どももいるというのに。
手に入れたいもの、手に入れたかったもの。色々あります。それを思って「切ない」とか思うのは、あまりに大人の自己陶酔というか、情けなくて、全否定したいところなのですが、このラストがね、【太字】でも望もうと望むまいと、時間は経つんだ【ここまで】、と福島聡さんに言われてるような気がしました。


●藤田和日郎 / 双亡亭壊すべし


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連載開始号、サンデーを久々に買いました。カラーが格好良過ぎて、捨てられません。
『双亡亭壊すべし』。
幼少期、街のお化け屋敷に絶大な恐怖を与えられた首相と防衛大臣は結託し、お化け屋敷に自衛隊機によるミサイル攻撃を敢行。びくともしないお化け屋敷。双方ともにマッスル過ぎます。


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そのお化け屋敷「双亡亭」に人生を狂わされた人、人を助けに行く人、その人たちを眺める人を藤田和日郎が描き取ります。その「人」たちがまたバラエティに富んでおり、1巻時点ではどんな風に話が転がるか、過去作どころではない「読めない」感じが魅力。
一応言っておくと、合わせて「貞子VS伽倻子」もしくは「呪怨」を観ると倍以上に面白いです。精神・心霊面でのバトルがそれらの映画群。物理面でのバトルが双亡亭。対比も実に乙い。
あと、同時発売の『読者ハ読ムナ(笑)』も併読したいところ。


松井優征 / 暗殺教室 18


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終わりました。松井優征さんの二度目のジャンプ連載作品。
なんでそれで18巻?と思われるでしょうが、ちょびちょびジャンプ本誌も読みつつ単行本を買っていた自分は、この巻で薄ら寒い思いをしたのです。


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18巻では概ね「学校生活」が終わり、卒業に向けて全員が動いて行く、というシーンが描かれるのですが、単行本発売がちょうど3月終わり。
自分の高校生活になんとなく重なったのですが、みんながそれぞれの道を行くための、あの微妙なよそよそしさというか、教室とか心の中が軽くなっていく感じと言いますか。そうした「不安と嬉しさと空虚さ」みたいなのが、高校生活の3月頃だったなぁ、と思い出しました。思い出させられるような描写を、3月発売の単行本に入れ込んで来る。それだけでなく、ジャンプ本誌の方ではいよいよ殺せんせーとの別れ付近が描かれ始めるし、映画は映画で「卒業編」なんて名前付いてるし、アニメはもうすぐ春が来ることを予感させる辺りの話だし、ってのをどうやら狙ってやってるようなことが作者の一言に書いてあったんです。時期、タイミング、重なり合うクロスメディア。
ネウロの時から底知れない人だな、とは思っていたんですが、頭の出来が違い過ぎるのを実感させられて、震えました…。あ、でも終わり方もとっても良かったです。


●富樫義博 / HUNTER×HUNTER 33


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前述「暗殺教室」の連載開始から終了までの間が、ハンタ32巻・33巻の発売間隔と同じ、なる話を読んで、震えました。
毎週血の滲むような思いで書かれている作家さんもたくさんいるでしょう。なのに、この間隔・感覚で連載をしているハンター。すっげー面白いのです。なんてこの世は不公平。


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「週刊少年ジャンプ」なのに、主人公が出て来るページが1冊で2ページ程度。戦闘描写もほぼ無し。なのに、この湧き上がるワクワク感は、やっぱりズルいとしか言いようがありませんでした。あい。


●水上悟志 / スピリットサークル 6


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8人の自分が、生きて、死ぬ話。終わり。
輪廻転生が存在するとして、それを「全て」追体験することが出来たなら、「今の自分」とはなんなのか。今自分が立っているのは、「どんな風に立っているのか」。


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このシーンは、思わず涙がボロボロ出てしまいました。
説明するとどうにも、本当にどうにもならないので、物凄いドラマが見たい人・物語に触れて胸打たれたい人、は6巻分の単行本を読んで下さい。
Aさんが言ったことと、Bさんが言ったこと、同じ内容でも、Aさんは10年自分と一緒に居た人で、Bさんは先週会った人。どちらの発言が自分にクるでしょうか?そんな話をぶつけられたような気持ちです。
『惑星のさみだれ』が「こうしたいと願う道へ必死で辿り着く話」なら、『スピリットサークル』は「目的地へ辿り着こうと思って来た道のりで眺めて来た・取りこぼして来たものはなんだったのか、全部ひっくり返して見直す・考え直してみる話」だったんだなぁ、と。「さみだれ」を描いた作家さんがコレを描けたの、本当にただただスゴい、と思います。


●フクイタクミ / 百足 2


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百人の敵キャラ、他の漫画に出て来たら、中ボスだとか四天王だとか付きそうなヤツを、ものの見事に1コマ2コマで葬り去る、爽快バトルアクション。
1巻を読んだ時の驚きには流石に劣るものの、百足側の組織感や、トリックスターの登場など、爽快感を邪魔しない程度の、世界観の複雑化は、なんとも良バランス!


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「一個の命かけただけで…殺りすぎだろ」
読者の思いを代弁する、ナイス突っ込みです。うん。
まぁコイツも次のページで死ぬんですけど。


●田中圭一 / Gのサムライ


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下品です。以上です。


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確か田中圭一さんて50歳過ぎてたんじゃないかと思うのですが、よくここまで下ネタを思い付いたな、と感動しました。手塚治虫・本宮ひろ志・小島剛夕・平田弘史を混ぜこねた様な絵柄は、最早パロディではなく、「田中圭一絵柄」として輝き続けていくのでしょう…。時代劇画誌にコレが載っていた、という経歴すら面白い。


●福満しげゆき / 中2の男子と第6感 3


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現ジャンプ連載作品の中で、ヒロアカがぶっちぎりで好きなんですが、それは「スゴく頑張った人間が報われるから」をあまり主人公補正付け過ぎで描いてないから、なんですが、そんなヒーローものの王道みたいなところとの真逆のところで輝き始めようとしているかのように見えた3巻。


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家にカワイイ女の子の妄想みたいなものが居る、という、ジョジョをギャルゲー化したような謎設定で始まった本作だったのですが、3巻の福満さんのあとがきを見ると、「よくあるラブコメみたいなヤツと、キックアスとかスパイダーマンみたいなヒーローものをもっと局所的な展開にした上に、自分の好きなものを詰め込んだ」みたいな話が出てて、納得。3巻は「愛のむきだし」感もありました。エロポイントを集めるヒーローてなんだ。最近の福満さんは、「ゾンビとり」もですが、ストーリー漫画面白くなり過ぎです。


●ちゃおホラーアンソロジー / 本当は恐ろしい童話・伝説


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ちゃおホラーは、20年したら絶対高くなる。高くなるぞ。周囲に触れ回っております。
目ぼしいな、と思った作家さんが居たら単行本を買うようにしているのですが、過去単行本と比べれば一目瞭然、「表紙デザインがなんか違う」のです。
ちゃお編集部のやるきスイッチか何かか。でもこの本はアタリでした。


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小室栄子さん、牧原若菜さんといった俊英に混じり、「環方このみ」さんという見慣れぬ名前。
この方がアタリでした。
「ヘンゼルとグレーテル」「三匹のこぶた」のホラーマンガアレンジが載っていたのですが、特に後者が良くてですね、長兄・次兄の子分のように扱われた末弟がどんどん闇堕ちしていく、という。「闇がどこにでもある」というのは、常々ホラーに教えてもらっている大事なことだな、とハッとさせられると共に、新たなる俊英の登場に感動です。

並べてみましたが、1/3も泣いてませんでしたね。すみません、誇大広告タイトルでした。



会社で働く。色々ありました。でもかつて偉い人は言いました。「さよならだけが人生だ」と。色々なことを忘れていくのでしょう。でもまた色々なことにも出会うのでしょう。新刊漫画も面白いし、古書みたいなヤツも面白い。漫画だけでなく、全て、それなのです。それを忘れぬよう、うろうろしながら、生きていくのです。
かつてエロい人は言いました。「ほら。拍手がやんだ。」
またどこかで。



担当:石田
  1. 2016/07/27(水) 11:00:57|
  2. 中野店石田

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