岩井の本棚、SAHRAの本棚

スタッフがマンガ界のニュースとおすすめマンガを紹介します!

女神の照らす灯りの先を見に行こう




「面白い漫画はありませんか?」

この仕事をしていると、よくそう尋ねられます。
店頭でこの質問を受けると、待ってました、とばかりにいろいろ紹介させてもらっています。
最近ではそれだけでは飽き足らず、うめだ店のtwitter(@umdboy)にて

「ツイート時点で長くて3巻までのコミックス」

という縛りで漫画の紹介をさせてもらっています。
(※宣伝)togetterでもまとめてますので、よろしければごらんください。
http://togetter.com/id/umdboy

ところで。
「面白い」と一口に言ってもいろいろあります。
分かりやすい「面白さ」は頁を捲る手も止まらず一気に読みきってしまうような面白さ。
ワンアイデアで吹き出すような「面白さ」もあります。
けれど、頁を捲るのも勿体無く、買ったはいいけど読み終わるのが嫌でいつまでも読み進められない、そんな面白さもあります。

今回紹介するのは、そういったじっくり読みたいタイプの漫画です。

高浜寛「ニュクスの角灯(ランタン)」(リイド社)


160923画像01160923画像02


舞台は1878年の長崎。
主人公の美世は、親が死んで親戚の家に預けられる。給仕も針もまともに出来ず、ならば奉公に出ろと、雇い人の張り紙を頼りに叩いた扉は、南蛮の雑貨を扱う道具屋だった。
文字も読めず、書けない美世には、しかし、不思議な力があった。


160923画像03


神通力。
触ったものを通して持ち主の過去や未来が見えるという。
店主のモモさんはそれを気に入り、彼女を雇う。

そうした導入から始まるこの物語は、美世の目を通して、当時の最先端の技術が日本に入ってくる様子を描く。
そして、それまでごく狭い世界しか知らなかった美世の世界がどんどん広がっていく物語でもあります。

美世は、そんなわけで、最初はとにかくネガティブで引っ込み思案。
見てください、このどんよりした顔。


160923画像04


160923画像05


160923画像06160923画像07


それが、文字を覚え、新しい南蛮の道具に触れることで、変わってくる。
周りも、美世が何もできないわけじゃなく、よく気のつく頭のいい子だということが分かってくる。

2巻になると、それまで挨拶もできなかった叔父さんにも意見を求められたり、神通力のときもこの穏やかな表情である。



160923画像08


160923画像09


そして何よりの見所は、美世の世界が広がるのと合わせるように日本に押し寄せる西洋開化の波。
明治が舞台ですが、出島のある長崎が舞台なだけにいのいちばんに西洋のモノが出てきます。
しかも、場所は道具屋。

チョコレートに蓄音機、ミシンに幻灯機、etcetc。
丁寧なイラストでそれらが描かれます。作中に出るのもいいですが、各話の合間にあるコラムが、イラストも大きく、文章も丁寧で読み応えがあります。


160923画像10


160923画像11


美世の成長ものとして楽しむもよし、アンティークの美しさに惚れるもよし、当時の世相を知る時代ものとしても面白い、いろんな楽しみ方ができる作品です。

ところで。
作中“おたまさん”という女性が出て来るんですが。


160923画像12


長崎は丸山の遊女の愛を描いた作品「蝶のみちゆき」に出てきた“たま”ですね。
知らなくてもいいけれど、分かると楽しい繋がりです。


160923画像13160923画像14

何度も読んでみたくなる「面白さ」。現在も連載中で、2巻が2016年7月に出たばかり。
「何か面白い漫画はありませんか?」と探している方にオススメです。


(うめだ店/山本コウ)


高浜寛の作品はこちらから

  1. 2016/09/23(金) 10:37:13|
  2. うめだ店山本

まんだらけ 通販

まんだらけ オークション