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全女体化スキーが泣いた!『ボクガール』




突然ですが考えたことはないですか?
「もし自分が別の性別で生まれていたらどんな風になっただろうか」って。
どんな性格だったかな?また別の友達とつきあったんだろうか。好み変わったかな?部活は何をやっただろう。悲しい思い出も楽しい思い出もまた全然違うものを持つことになったのかなあー。それともあんまり、大して変わんないか?

皆さんはどうして男性(もしくは女性)やっていますか?なにか切欠があったんでしょうか。
いつからやっていますか?…そしてその後どうでしょう。
しんみりしないよ。重くもないです。気になった人はどうぞ楽しくて優しくてちょっとエッチな快作を紹介するので、読んでね

!!!ネタバレ有・要注意!!!

『ボクガール』


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集英社/杉戸アキラ/2013〜2016/全11巻(完結済)
TS(トランスセクシャル=性転換)漫画、2010年代の真打ちとも言うべきいい作品です。

華奢で可憐なこの子は鈴白瑞樹くん(主人公)


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こんなナリをしていても立派な高校男子です。
女と間違われて告白されまくるも、本人は誰よりも男らしくありたい悩めるティーン。
優しくてボインボインな憧れの藤原夢子ちゃんや男気に溢れた気のいい友人・一文字猛と日々楽しく過ごしている


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のだが、ある日神の悪戯で…


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女の子になっちゃいましたー!



突然の変化に戸惑いまくる瑞樹くん。「お前は本当に瑞樹なのか?」当然猛も目の前で起きた事が信じられない。
それでも「朝起きたらこうなっていたけど、自分は自分だ」という瑞樹くん必死の訴えで猛はとりあえず信じることにします。雑だけど。
のちのち、どんなことがあってもとりあえず信じてくれる友人・猛というのがすごく重要な位置を占めてくるんです。


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そして女の子になったまま学校生活が始まりますが、本当に男か…?と疑うクラスメート達や、可愛ければ性別問わぬ変態筋肉ゴリマッチョ(井出)がひたすら貞操を狙ってきたりと気の休まらぬ日々。


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この漫画は本当に変態が多い。

猛のフォローもあり、なんとか女体化バレせずに日々乗り越えていくんですが、その描写がもう、トランスものにおける萌えのツボを余す事なく突いてきて奇声なしじゃ読めぬ。
例えば、乳首がふっくらしてしまって下着をつけた方がいいのか悩んだ挙句にこんな破廉恥な絵面が出来上がったり


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寮の共同風呂だと上記の変態に襲われてしまう→離れた銭湯に行こう!→しかし客観的に見て女にしか見えん→そうだ、もう女装して女として女湯に入れば八方丸くおさまるんじゃね?という超展開でこんなことになってしまったり!


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トランクスが風に飛ばされてしまって、仕方なくこんなことになってしまったり!!


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女の子のおしっこの仕方がわからずこんなことになってしまったり!!!
そうだよね!急に女の子になったらやり方わかんないよね!しょうがない!


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なぜか学園祭で演劇・ヒロインをやらされ!ヒーロー役は憧れの女の子藤原さん!


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もう性転換スキーなら悶え苦しみちょっと死ぬくらい萌え要素マシマシな作品なので、これを書くため読み返してても瑞樹ちゃんが可愛すぎて苦しかったです。
特に「演劇でヒロイン役に抜擢されてしまう男の子」というのは、ある種の人間の心に抉りこむ角度で刺さってくるような滅茶苦茶ヤバい要素なんです。わかってもらえますかね…へへ。わからなくても続けますね。こういう性転換ヒロインに半ば自己投影しながら、本当は男の子なのに女の子扱いされてまさか劇のヒロインにまでされちゃってきゃーどうしよう的なドキドキサイエンスを妄飲しながら1日を終えるのが我々性転換好きの青春のさだめだといっても過言ではないので、作者は神。

はじめは瑞樹くんも、さも男らしくありたいように振る舞うんですが、そんなの全然嘘で可愛いもの大好きな可愛い僕っ娘なのがバレバレです。


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↑kawaii↓


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これもかなり大事な要素です。TSものの醍醐味の一つに、それが本人が心の奥底に持つ願望の現れだという事があります。
だって本当に嫌がっている子に無理矢理女装させても、それがどんなに可愛くてもそれ以上得るものがないので必然萎えます。
逆に初っ端からオープンな女装子的キャラクターでも(それはそれで以前紹介したおカマ白書的な可笑しさはあるんですが)あまり面白くない。やはり、内面と外観のギャップの見せ方なのかなとも思う訳ですが、とにかく
じわりじわりと実はこの瑞樹くんが全然嫌がっていないぞ…でも恥じらっているぞ…ということが露呈してゆきます。




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ただの美少女ならその辺にいくらでもいるんです。ただ可愛い子の痴態が見たければ春輝とか宮崎摩耶とか読んでればいいじゃないですか!かわいいよ!
でもね、それだけじゃ物足りない夜ってのもあるんです。性的な混乱やギャップこそが萌えの最低条件ということです。


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男として育ってきたがゆえの無防備さや、振る舞いの雑さが性的な魅力を産むこと。これはボクっ娘とか俺女とかともまた違う案件なんですね。本人の自覚していない振る舞いによって見えてはいけないものが見えていることに本人が気がついていない時、周りにいる我々はどうすればいいのでしょうか。●REC


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ワーッショイ!ワーッショイ!
さまざまなエロハプニングの連続に、猛もやがて瑞樹の事を男友達と認識することができなくなってゆきます。
これについては変態キャラの代表格でもある井出パイセン(先輩)の言葉が真理ですね。「大丈夫!KAWAIIに性別は関係ないっすよ!」


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体育倉庫に2人閉じ込められたり雨に降られて暖めあったりと順調にアクシデントを乗り越えて、瑞樹くんと猛はお互いを意識していきます。


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瑞樹くんの抑圧の理由も語られます。父親の教えである、男子たるもの〜な懐古的男子像を内面化してしまったがゆえ、本来の自分との間に生じるギャップに苦しみ違和感を覚えているのがこの瑞樹くんなんですが、こうして体が女の子になってしまったことでなし崩しで本性を露わにして行くのです。

その厳しい父親がこちらなのですが…

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御多分に洩れずただの変態です。

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瑞樹くんが愛しい母親にそっくりで可愛すぎてヤバイから必要以上に厳しくしていただけのど変態父親の教えに縛られていただけの瑞樹くんがもうらしい。
そんな瑞樹くんの万感の一言がこちら。

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エロコメディでありながら、ちゃんと中身がある漫画!

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周りのみんなが瑞樹くんの姿形や性別に惑わされて瑞樹くんそのものを見れていない中、(その鈍感さも手伝って)変わらぬ扱いをしてくれる猛や藤原さんの尊さ。
猛は初めからしてそうなんです。性別が変わってしまっても真っ先に受け入れて、混乱しつつも瑞樹くんそのものを見ようとして、あんまり動じずに相対する感じ。そりゃ惚れますわな。



物語中盤でようやく憧れの藤原さんにも女体化カミングアウトをします。

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二人してぼんやりしてしまう感じがなんともリアルですな。

でも藤原さんは決して瑞樹くんを否定しません。あるがままを受け止めようとしてくれるのです。
そう、この漫画、基本的に悪人が一切でてこないのもおおきな特徴です。瑞樹を性転換させた神でさえやんちゃではあれど憎めない造形で。変態ばかり出るけどもそいつらがみんな瑞樹くんのこと大好きで、自らの変態性のおもむくままにのびのびとやれている感じ。否定してやろうとか虐めてやろうだとか、嫌な奴がどこにもいない。変態が変態のまま跳梁跋扈できている幸福な時空間における可愛い瑞樹くんの漫画なんです。

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公的にもカミングアウト。学校バレという萌え通過儀礼のひとつでもあります。
周囲の認識も変わり、女になった以上は制服も女子のものを着出し、髪も伸びてだんだん瑞樹くんは女の子でしか無くなっていきます。

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瑞樹くんはもともと藤原さんのことが好きだったけど猛のことが気になっていて、
猛は瑞樹くんのことが気になってきていて、
藤原さんは瑞樹くんのことが気になりつつも猛に恋している。
というのが『ボクガール』の屋台骨になる三角関係なんですが、物語終盤にさしかかり瑞樹くんの女子力が上がるにつれ、猛が瑞樹くん方面に傾くにつれ藤原さんは平静じゃいられなくなります。好きな人と大切な友達が距離を縮めていくのを、間近で見せられるわけですから。

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何かを得るということは、いつでも選ばれなかった何かがそこにあるという切なさも含んでのことなんですね。いまちょっと良いことを言いました。



そして瑞樹くんは選択を迫られます。
男として生きていき、藤原さんへの気持ちを選ぶのか、
女になり、猛への気持ちに向き合うのかを。

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結末を前にして登場人物たちはみな立ち止まって考えます。

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みな、自分が真に抱いている気持ちとは何なのかをしっかりと表明します。

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僕はギャグ漫画が基本的に苦手なんですが、その理由というのが毎回毎回「あったこと」が「なかったことになる」のがたまらなく苦痛ゆえなんですね。で、けっこう既存のTSものは作中で色々展開してても最終的に変化の少ない曖昧な地点に着地してしまう作品が多かったように感じて不満を感じていました。
だって性転換してしまったら、たとえ一過性のものでもその人物の人生において決して消えない痕跡を残すでしょう?性転換は"はしか"のようなものじゃなく、決定的で不可逆な変化なんですよ。であるべきなんですよ。なのだから、それは決してなかったことになっちゃいけないんだ。ラッキースケベだけじゃなくて、とっととヤれよ!ヤったら孕めよ!孕んだら産めよ!それぞれの心境と関係性の変化を述べよ!っていつも心の中で吠えてました。ToLOVEる読んで。(向いていない)

そんな僕がこの作品で本当に素晴らしいと思うのは、ちゃんと変化を選び取り、TSしたままの未来を選び取ったことなんです。
瑞樹くんは女として生きていくことに決めます。猛を愛して猛と一緒に生きていこうと決めます。
性転換という非日常を自分のものとし、新たな日常を作り上げてしまうところまでをここまで逞しく描き切っている漫画は読んだことがなかった。

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11巻の表紙を見てください。

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こういう作品だったんですね。

きっと藤原さんに抱いていたのは瑞樹くん自身がこうありたいという願望の投影で、願望越しに望むナルシズムだったのかもしれません。
最終盤、瑞樹くんは髪を伸ばし、藤原さんはばっさりと切り落とし、両者の立ち位置が入れ替わります。
性転換によって解放されて瑞樹くんは幸せになれたんですが、たとえTSしていなくともきっと、願望と恋とを混同することなく、本当に愛するものを選びとっていたんじゃないのかなぁなんて思うのです。
性別はいくらでもかわるけれど、変わらないものもあるようです。

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まあ愛する対象と自分の性別はあんまり関係ないですしね。性別のギャップがどうとかさんざ語っておいてなんですが。

僕からは以上です!


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  1. 2016/12/01(木) 11:00:26|
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