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子どもが産める男の子と社会の規律を遵守する女の子




フレンズのみんな集まれー! わーい。やったー。君はえにもじがついたものをみるのが好きなフレンズなんだね! どこから来たの? 縄張りは? ぼくは中野ちほーのまんがのフレンズはせがわだよー。うわっ、やめて、叩かないで。僕はセルリアンじゃないよ! ひどいよー。おすすめのえともじを紹介するから、終わったらいっしょに狩りごっこしようよ!

 というわけで、今回ご紹介するフレンズは……じゃなくて漫画はこちら。


『三文未来の家庭訪問』庄司創/講談社/2013年


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 表題作の「三文未来の家庭訪問」を含め3篇の短編が収録されています。

 まず最初の短編が「辺獄にて」。養護施設で育ち、高校卒業後職を転々とし、やっと安定した職と人並みの生活を手に入れた主人公でしたが、妻に浮気をされ離婚調停が済んだ矢先に、心筋梗塞で倒れてしまいます。まさにあと少しで人生終了という狭間の時間に、別の宇宙の超高度知性体からの干渉を受けます。その宇宙人たちは、地球人に限らず条件に適合した死に際の生命体の残り数十秒の人生を体感速度として1000年に引き延ばし、生前に善行を積んだ者には天国のような環境を、悪行をおこなった者には地獄を体験させるという「人生完結センター」を運営していた…。というのが導入で、まあ要するに閻魔様をSF的に解釈するとこうなるよってことですね。その閻魔大王的な宇宙人の目的や天国と地獄のサンプル、「人生完結センター」のシステムなど、SF的な設定もおもしろく、結局主人公が体験させられる地獄が「初めての昆虫遊びルーム」という、巨大な赤ん坊が人間を昆虫のように解体する地獄というのもなかなか悪趣味でいい感じです。
 そのSF的な地獄めぐりと並行して語られる、主人公が回想するある女性(日滝さん。主人公の会社でアルバイトとして働いている)との関係がむしろ物語の主軸なのですが、個人的には日滝さんが主人公にお金を借りるシーンで「これ、日滝さん絶対詐欺師でしょ!」と思ってたらそうじゃなかったというところが一番驚きました。疑って本当に申し訳ありませんでした。主人公と日滝さんは共に親に恵まれず、心の底ではどこか他人を信用しきれず強い人間関係に踏み込めないという共通点がある似た者同士なんですね。そんな彼らが、初めて他人と深い関係を持とうとするまでの物語です。そのことが一番現れているのが、日滝さんが全体重をかけて会社のドアを開く見開き1ページです。彼女にとってそのことがどれだけ大変なことなのかが表現されていて胸に迫ります。

 2番目の短編が「三文未来の家庭訪問」です。


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 舞台は近未来。科学技術の進展によりエネルギー問題が解決され、現在以上に豊かな時代。作品に必要な部分しか詳しい説明はありませんが、社会制度もいまとはちょっと違うみたいです。画像は家庭相談員の年金が担当児童の将来の税収による出来高制になっているという説明。さらに児童の担当権を株のように売買できる制度もあります。まあざっくり言うと「なめらかな社会」的な何かですね。


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 主人公の一人、楽観的で行動力がありコミュニケーション上手なリタくん。子どもが産める男の子です。男の子なのに子どもが産めるフレンズなんだね! すっごーい!


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 なぜ男なのに子どもが産めるのかというと、ひとことで言えばそういう遺伝子操作をしたからです。35年前に発足した「WOLVS」という集団生活団体が入居者に遺伝子操作をしていて、それが発覚。人権侵害ではないかと当局の操作が入り、「WOLVS」は強制解散させられます。そういうわけでリタくんはお父さんとお母さんと一緒に団地に引っ越してきたわけです。家庭相談員のカノセさんが怪しむように、その団体の目的がよくわからないんですね。レズビアンなら人口生殖するほうが早いし、男と自称する必要もない。集団生活団体にしては異様に外社会への適応能力が高く、危険思想も特にない。公式には単なる「趣味」ということで発表されましたが、どうにも他に目的があるのではないかと。


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 もう一人の主人公というかヒロイン。「出たよ支辺!!」ことマキちゃんです。決めゼリフは「どう言われても私は社会の規律を遵守します」。わかりやすく言うと、委員長タイプの最高ランクみたいなキャラクターです。お母さんが「ルール違反を見つけたら死んでも注意する宗教みたいな団体」に所属していてそうなっています。その団体の名称は「彼方建設」。一番の目的は、その名のとおり理想の都市を作ってみんなで暮らすことなんですが、モラルの高い人を集めるという方針が行き過ぎてややカルト化しています。


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 どうやらマキちゃんのスケジュールはバブル期のエリートサラリーマン並に埋まっているみたいです。リタくんはいじめられそうになった自分を理由はどうあれ助けてくれたマキちゃんに好意を抱き、マキちゃんの自由な時間を増やすために勧誘を手伝ったり、マキちゃんのお母さんに少し休ませてあげて欲しいと頼みに行ったりします。


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 お母さん超めんどくさそう! 初めて好きな女の子の家に行ってその子のお母さんにこんな話振られたら、ちょっと「お、おう……」ってなっちゃいそうですが、そこはコミュニケーション超人のリタくん。お母さんの話を正面から受けとめつつ、自分の意見も言い放ち、だんだん打ち解けていきます。
 マキちゃんのお母さんも最初から「彼方建設」の人だったわけではないんですね。マキちゃんが生まれる前はプログラマーをやっていて、マキちゃんを生むために休職していたら、プログラマーという職自体が技術の発展によってほぼ絶滅してしまい、することがなくなって「彼方建設」にハマってしまったという経緯なわけです。お母さんにとっては「彼方建設」が唯一の拠り所だったのかもしれません。


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 そんな中、「彼方建設」倒産のニュースが入り、事態は急展開を迎えます。これ以降のストーリーは現物を御覧ください。全体的にジェンダーモノとしても新興宗教モノとしても青春モノとしても近未来SFとしてもよくできていて、ちょっとてんこ盛り過ぎるくらいですが、SF的な仕掛けが有機的に物語に結びついてよくまとまっている良作です。団地が舞台なのもポイント高いですね。
 そして何よりマキちゃんかわいい! 本編を読んだけどマキちゃんのかわいらしさがイマイチわからないという方でも巻末のおまけ4P漫画「昼休みのマキちゃん(クレーマー)」を読めば、ああなるほどそういうことねと納得していただけると思います。おまけ漫画の中でも、言ってることは前とあまり変わらない委員長っぷりに見えますが、今度は自分の意思で、自分が思ったこと、言いたいことを言っているから逆に生き生きした印象になりますね。あと天然っぽいところが、いい……。

 最後の短編「パンサラッサ連れ行く」は5億年前の古生物たち(三葉虫的なやつ)をローマ時代風に擬人化して描かれた漫画です。パンサラッサとは古典ギリシア語で「全ての海」を意味し、今の場所だと太平洋があるところにあった海のことです。本書の中では一番短いですが、信仰と世俗の関係性がコンパクトにまとまっていて読ませる作品です。神を信じれば苦しみがなくなるわけでもなく、世俗的な人間が合理性だけで恐怖から逃れられるわけでもなく、価値観の違いはあれど共に連れ立って生きていくしかないとても弱い生き物(=人間)の行末とは。途中で説明があるように古生代の生物はほぼ直系の子孫を残すことなく、現在では絶滅しています。しかし、彼らにしてみればそんなことは知りようがありません。私たち人類がこの先どうなるのかを知らないように。そんなことを思いました。

 それじゃあ、ぼくはそろそろドッタンバッタン大騒ぎジャパリパークに戻るね。また狩りごっこしようね! 約束だよ! またねー。




『三文未来の家庭訪問』はこちら
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庄司創先生の他の作品はこちらからどうぞ。
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ちなみに『白馬のお嫁さん』は妊娠する男性要素をもっと展開している作品です。「三文未来の家庭訪問」がおもしろかったという方はこちらも是非!


(担当:長谷川)
  1. 2017/03/22(水) 11:00:25|
  2. 中野店長谷川

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