岩井の本棚、SAHRAの本棚

スタッフがマンガ界のニュースとおすすめマンガを紹介します!

母の言葉は偉大也




わたしが紹介する作品はこちらです。


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主人公の《江山藍都》は毎日理不尽なイジメの日々に絶望していた。そんな藍都のもとにある日奇妙な手紙が届く。それは誰でも好きな相手を一ヶ月監禁できるという『監禁ゲーム』への招待状だった。
期間中、監禁相手を殺さなければ何をしても許され、さらには相手に正体がバレなければ一千万円の大金も手に入る。
監禁相手をイジメの首謀者である《桐嶋彩》に選んだ藍都はどのようにして監禁ゲームを進めていくのか…。
こんな感じの内容になっています。


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監獄実験繋がりで調べてみたのですが、《スタンフォード監獄実験》なるものが1971年8/14~8/20まで、アメリカ・スタンフォード大学心理学部で心理学者フィリップ・ジンバルドー氏の指導の下に、刑務所を舞台にして、普通の人が特殊な肩書きや地位を与えられると、その役割に合わせて行動してしまう事を証明しようとした実験が行われていたみたいです。
詳しい概要等は省きますが、結果として強い権力を与えられた人間と力を持たない人間が、狭い空間で常に一緒にいると、次第に理性の歯止めが利かなくなり、暴走してしまう。しかも、元々の正確とは関係なく、役割を与えられただけでそのような状態に陥ってしまうことが分かりました。(世界的にそこそこ有名な心理学実験みたいで映画化もされているみたいです。)
実際に作品の中でも藍都の正確が段々と変わっていく様子が見受けられます。


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自分は昔から「人が嫌がることをしたらその分自分にも返ってくるんだよ」と母に言われ続けてきました。この作品を
読み進めていてふと思い出しました。
ですがこの言葉は藍都にもいえる言葉ですね。


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果たして藍都は彩への復讐を成功させるのか、それとも藍都にも何か報いがある
のか、先の展開が楽しみですね。
現在2巻まで出ているので気になった方は是非お手に取ってみてはいかがでしょうか?


『監獄実験』通販ページ↓
https://ekizo.mandarake.co.jp/order/listPage/serchKeyWord?categoryCode=00&keyword=%E7%9B%A3%E7%8D%84%E5%AE%9F%E9%A8%93&soldOut=0&dispCount=48

(コンプレックス/山田)
  1. 2016/10/25(火) 10:48:30|
  2. スタッフおすすめコミック

成熟した神様が放った極上エンタメ 手塚治虫「アドルフに告ぐ」





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手塚治虫の後期の1983年の作品「アドルフに告ぐ」を紹介します。
劇画ブームにより青年誌が創刊され、手塚漫画も大人向けの絵に変容して20年程が過ぎて、アドルフに告ぐは手塚漫画の中でもリアルさでいったら1,2を争う作画なのでは。いつもよりランプやハムエッグが背が高いです。
週刊文春で連載されたこともその理由のひとつでしょうか。


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「ヒットラーにはユダヤ人の血が流れている!」



第二次世界大戦開戦前夜の頃、世界に公表されたらナチス転覆の危機であろう上記の架空の設定のもとに、
証拠となるヒットラーの出生証明書のコピーや親族の残した手紙を束にまとめた文書を巡って、ナチス、新聞記者、共産主義グループ、
特高、歴史上の人物などの人と人と人と人と人のドラマです。


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タイトルのアドルフとはヒットラーのファーストネームです。
アドルフはもう二人出てきて、神戸在住のパン屋のユダヤ人とナチスの父を持つ二人の白人の少年もアドルフという名前。


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左がパン屋の子で右がお父さんがナチスです。

ヒットラーはもっぱら「文書」で存在感を示し、神戸在住の二人のアドルフの話がメインです。
ナチス側のアドルフはのちドイツに渡り、親友のアドルフを慕いながらも感化されてゆきます。

非戦や非暴力を訴えるための暴力は、手塚作品最高の作画と周到なストーリーの設定と伏線で、
より強大に描かれます。2人のアドルフの友情は年月も民族も国境も引き裂くことはできませんでしたが・・。


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ヒットラーのアキレス腱である文書を亡き弟に託され、巻き込まれることになった、
もう一人の主人公の善良なる新聞記者も追いつ追われつ物語を駆け抜けます。


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また、この作品も手塚のスターダムシステムが炸裂!
ランプ、ハムエッグを筆頭に「奇子」の天下市朗、山崎先生が友情出演。
もちろん手塚治虫自身もタクシードライバーとしてカメオ出演されています。
ハムエッグは特高刑事として登場。物語の後半には頭がおかしくなってしまう男を熱演します。


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助演男優賞のハムエッグ。


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天下市朗。


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山崎先生。今回も手塚女性キャラをセクハラ。

とにかく主人公が4人ですし、その他おびたただしい登場人物たちです。
でも、どのエピソードも面白いです。文書は日独を往復し、さっきまで都会にいたかと思ったらひなびた村に移動したりと場面展開も早い。
忘れた頃にあのキャラクターが浮かび上がってきて、ここにつながってくるのかーとなります。
ちょい役の人たちも皆いい味出していて、熟練の身振り手振りとセリフで、その職業の人にしか見えません。

あとがきに「神戸の戦前、戦中の時代の思い出を描いたらという構想があり」とあります。おぼっちゃんな環境で育った手塚治虫先生が望郷の念をこめて、
当時のハイカルチャーな様子も自然に描写されています。

これだけ話が広がってるにも関わらず、一本筋のテーマが通っていて、大団円もある。
子供の頃から読んでましたけど、ふいと久々に再読しまして、物語に感動する自分を発見して驚きました。
何度も感動できる、お得な自分の脳味噌のできを差し引いても、手塚作品の代表作のひとつであることは間違いないです。
未見ならば是非どうぞ!


(担当:南)

  1. 2016/03/05(土) 11:00:20|
  2. スタッフおすすめコミック

友人の挫折は慈愛をこめて、でも赤裸々に  つげ義春「ある無名作家」





自分は赤裸々なエッセイ漫画家が好きです。
身辺雑記ものも良いですが、自分の中の喜怒哀楽を開いて見せてくれる
タイプが好みです。人間とは何か、自分とは何か、生きてゆく道筋を探す・・
と考えさせられる作品群にたまらなく惹かれます。
私の場合は深く人生について考えるというよりも、スキャンダラスな芸能週刊誌
をめくるのと同じで下世話なネタを探しているふうでもあります。

エッセイ漫画、漫画家の漫画のルーツであるつげ義春先生を紹介します。
つげ作品は「ねじ式」をはじめてする摩訶不思議な話(夢もの)と、
温泉街などへフラリと旅に出て、その土地の人との出会いの
一喜一憂を描いた話(旅もの)の二つに分類されることが多いのですが、
今回は漫画家の漫画のルーツな作品の「ある無名作家」(つげ義春)を紹介します。


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「ある無名作家」
つげ先生は有名になった後に水木しげる先生のアシスタントをしていました。
その頃をモチーフにしたと思われる1984年の短編です。


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漫画家のアシスタント仲間が自己の芸術を追いかけるべく、文学の世界に飛び込む。
やがてその仲間は落ちぶれていき、生活は乱れ、ヒモに行き着く。


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同棲する女性の連れ子をいじめ、昼間から酒をくらい、毎日ごろごろ。


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数年たって、女に出て行かれ、アシスタント仲間の男は心を入れ替え、
血のつながりのない少年と二人っきりで再出発する話。


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読者に苦痛を強いる作品といえるかもしれません。
漫画なんだし、休んでいるときくらい緊張から
解放されていたいものです。何も考えずにスカッと笑いたい。

ですが、この苦痛がワイドショーの凄惨な事件と接するのとは違う感触です。
つげ先生を思わせる主人公の目線から描かれているので堕落する男を客観視できることと
男が完全な悪人とは描かれておらず、共感できる部分も用意されている
のが要因かもしれないです。

また、中年にさしかかってみて読み返してみると、この物語の男の挫折は若い頃と違った感想を抱きます。
つげ義春先生の小学館から出された「紅い花」の糸井重里氏の解説の中にある、
「おまえが思っているほど、おまえはたいしたやつじゃない」の一節を、
身にしみて思い返してみたり。

世界は不透明であり不確定でパラレルワールドであるならば、
つげ義春先生の新作が読める世界を想像することも許されるでしょう。
実弟で4歳年下のつげ忠男先生は2015年に新刊「成り行き」を出されてサイン会を行い、
2016年の本年には同作の実写化も決まっていることをみると、お兄さんのも読みたい!と
飢餓感がつのります。


(担当:南)



「ある無名作家」収録のつげ作品は表紙をクリックして下さい。

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  1. 2016/01/23(土) 11:00:29|
  2. スタッフおすすめコミック

押切蓮介最重要作品


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この『暗い廊下とうしろの玄関』に収録されている「オバケなんていないさ」。
これが押切蓮介のルーツものとしてそうだったのかと驚かされます。
ちなみに一番最後にのっている方です。
単行本内では「オバケなんていないさ2」となっていますが、雑誌幽に収録されていた
方の同タイトルとの差別化でそうなっています。
この1作品だけ集英社の作品でわざわざ引っ張ってきたことに意味を感じます。

今は『ハイスコアガール』などゲームものでもヒット作をだしていますが押切蓮介といえばホラー。
ホラー(幽霊)に固執していた理由が作者本人のルーツにあったというのがこの読切
(正確にいうと新連載で描かれたが雑誌が創刊号で廃刊)にて描かれています。
その内容というのが、

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幽霊を信じていようといまいと、
真上の階で順番にしかも自分のところに近づいてくるのは気味悪いです。
で、実際に父親がいなくなる。
これ掲載されたのが2009年の雑誌「漫'sプレイボーイ」なのですが、
読んだときの衝撃はハンパなかったです。
え!?これって押切蓮介本人の話だったのかと、
このことは他に書かれてる人も多いですが、
雑誌「幽」にのっていた「赤い家」がすぐ連想させるからです。
「赤い家」が発表されたのは2006年でその同じところがこれ

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住人に次々に不幸が起こる赤い建物。
呪怨的な話でちょっと違和感のある漫画でしたが、読んでるときはまさかこれが
作者本人のはなしとは思いもしなかったです。
それがこの「オバケなんていないさ」でつながった。
オバケに父親を奪われたかもしれない…そんな不確かな怪異を憎しみつつ、恐れつつ、
オバケをぶん殴る漫画を描く。父親がいなくなったことが押切ホラーの原点であったこと
がここで描かれています。

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こういうちょっとした一致というのも怪異や恐れを増幅させるには十分。
自分にもこんな覚えがありますが、
そもそもは信じてはいないんだけどなんか妙な怖さやいやだなぁ~という感覚は残ります。

さっき触れた「赤い家」もこの単行本には収録されています。
短編集で一番はじめ「赤い家」からはじまり、最後は「オバケなんていないさ」になっている。
この順番には明らかに意図があるし、雑誌幽の短編を集めて「オバケなんていないさ」のみ集英社から
引っ張ったのもよくやってくれたと単行本でたときは小躍りしました。
ただそれだけではないんです。
あとがきや対談のところに後日談が語られています。
これも含めて押切ホラーの完結ということで読むことをオススメしますよ。


(竹下)




《 今回紹介の作品の通信販売はこちら 》

『暗い廊下とうしろの玄関』(メディアファクトリー・押切蓮介)



  1. 2015/12/27(日) 11:00:28|
  2. スタッフおすすめコミック

規格外の男の休日は終わらない「ザ・ファブル」

こんにちは。
本日担当の池尻流通センターの南と申します。
漫画家の漫画やエッセイ漫画が好きです。
あと週刊ヤングマガジン、週刊スピリッツ、ヤングアニマルを毎号買ってます。

今回は週刊ヤングマガジンの連載作である「ザ・ファブル」を紹介します。

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一風変わった殺し屋の話です。
南勝久先生の前作は走り屋たちの熱い物語「ナニワトモアレ」シリーズなので、
その次なる作品が殺し屋の話というのは“先生が描くものとして、ありそうなテーマだな”
と感じる気持ちは賛同していただけるのではないでしょうか。
どう変わっているのかというと、今作はアウトローの殺し屋が普通の日常を送る話なのです。

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ファブルと呼ばれる、凄腕の殺し屋(6年間で71人!)がボスの指令により一年間の休日を取ることになりました。
新居でインコを飼い、仕事を始め、緊張感のある日々から一転して平和で余裕のある暮らしに、
戸惑いながらも新鮮さを楽しみます。

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キャラクターも殺し屋の冷血なイメージではなく、大好きなお笑い芸人がいて大
笑いしたり、
猫舌だったりします。ちなみにファブルとは寓話という意味です。

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だが南勝久作品にバトルは避けられません。
かくまってもらうヤクザにはちょっかいを出され、
さらに若頭の弟分が出所し、何やら只ならぬ予感。

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そんな中にも守ってあげたい女性が登場し
人間らしい気持ちも芽生えてきたファブル。

殺し屋の漫画は数ありますが、アウトローの世界に精通した作家が描く
殺し屋の漫画のリアルさには圧倒されます。
その殺し屋が我々の生活に寄り添うように入ってきたとなると
いったんは拍子抜けしますが、しばらくして身構えないといけません。
変化球の多い作品ですが、忘れたころに直球がきます。
現代のファブル(寓話)とは、これなのか。

また、この作品は酒を飲むシーンがカーニバルな楽しい宴会として描かれるのも、みどころです。
最近の傾向だと飲酒を負のイメージで描く漫画が多いですが、
そこを笑いにするのは、作者のカラーが出ています。

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読むと実に飲みたくなります!

殺し屋の休み時間は終わらない、日曜日は終わらない。
ヤンマガ発売の月曜日が待ち遠しい!


(池尻流通センター/南)



[規格外の男の休日は終わらない「ザ・ファブル」]の続きを読む
  1. 2015/12/14(月) 11:00:07|
  2. スタッフおすすめコミック

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